モノ、コト、なんでもスピード化されているいま、とてつもない長い距離を各駅停車で走る長距離鈍行がある。JRグループの最長距離鈍行(各駅停車)は、JR東日本の熱海発黒磯行き1644Eおよび黒磯発熱海行き1545Eで、上野東京ライン(東海道・東北本線)で268.1キロメートルを4時間46分(1644E)かけて結ぶ。では、私鉄はどうなのだろうか? 調査してみたところ、真冬の車窓が楽しめる路線が勢ぞろい! 営業キロでランキングしてみたが、あえて、4時間超えの旅も上等!で、乗ってみる?
* * *
■第1位 三陸鉄道 盛~久慈間:163.0キロ
三陸鉄道は国鉄3路線、鉄道公団の建設線を引き継いだ、転換第三セクター鉄道の第1号として、1984年4月1日に南リアス線盛(さかり)~釜石間、北リアス線宮古(みやこ)~久慈(くじ)間が開業。当時は空前絶後の三陸鉄道ブームが沸き起こり、連日多くの観光客が押し寄せた。
釜石~宮古間は国鉄(現・JR東日本)山田線に挟まれており、それぞれの終着駅で乗り換えなければならなかったが、1987年3月22日から相互直通運転がスタート。このときに盛~久慈間の長距離鈍行が誕生した。
その後、2011年の東日本大震災の影響もあり、山田線釜石~宮古間が三陸鉄道として復旧することが決まった。2019年3月23日にリアス線として再出発。盛~久慈間の列車は下り2本、上り3本が設定された(いずれも途中駅で列車番号が変わる)。所要時間は4時間21~38分。
日中の列車は恋し浜で2~3分停車するので、ホームに設置された「幸せの鐘」を鳴らす客も多い。また、待合室にはホタテの貝殻とマジックが置かれ、貝殻を絵馬に見立てて復興への願いを記すこともできる。
絶景車窓では徐行運転し、朝ドラ『あまちゃん』のロケ地として袖が浜駅の舞台となった堀内にも停車する。現在、台風19号の影響で一部区間が不通となっており、2020年春に完全復旧の予定である。