昨季最下位と低迷したチームを大きく前進させた。選手との距離感が近いことを発信し、ベンチでの雰囲気作りに努めた1年間だった。チームの一体感はこれまでにはなかったもので、クライマックスシリーズ・ファーストステージでの6点差逆転勝利など、チームは変わりつつある。
得点力がリーグ最下位でありながらも、ブルペン陣を整備した守りの野球は、この1年で形ができただろう。クローザー探しに奔走したものの、ベテランの藤川球児に託したのも心憎い采配だった。
一方、戦略の手堅さはもう少し改善したい。初回から判で押したように、走者が出れば必ず送りバントという攻め方は、一昔前の野球を展開しているように映った。若い選手が続々と台頭してきている。今こそ、攻撃的に打線が初回から振っていけるような戦い方を目指してもらいたい。
緒方孝市(広島) 評価:E
昨季の首位から4位に転落。4連覇を逃した。2年連続MVPの丸佳浩をFAで失った代償が大きかった上、ここ数年、1番打者としてチームの攻撃を形作ってきた田中広輔が不調に陥り、打線をうまく機能させられなかった。投手陣も、ここ数年の課題だったクローザーの不安定さから逆算した戦いが思うようにはできなかった。
優勝を逃したことは致し方ないにしても、自力でクライマックスシリーズ進出が決定できた中で、取り逃がしたのは痛かった。チームとしてのモチベーションを高められなかったのかもしれない。
もちろん、3連覇の功績と、今の広島に根付いた競争意識は緒方監督の手腕によるところも大きい。ファームの選手たちが1軍での活躍をイメージできる起用をしてきたことの功績と言えるだろう。
ただ、6月に起こした暴力事件は看過できない。監督と選手という上下の関係がくっきりしている中で、指導に暴力を用いることは指揮官の資質を示すもので、肯定できるものではない。
昨今は生徒への体罰が社会問題として取りざたされている。本来なら連盟がそれ相応の処分を下すべきだが、指揮官自身も問題が発覚してからも身を引くことをしなかった。
緒方監督の過去の功績は失われるものではないし、昨季までの手腕は否定されるものではない。ただ、この事件が野球界に負のイメージを与えたことは大きく、厳しい評価となった。