与田剛(中日) 評価:C

 順位は昨季と同じ5位のままだが、数字は大きく改善している。借金が一桁台に収まり、防御率が改善。打率もリーグトップ。勝ちきれないところはあったが、与田剛監督の就任1年目の数字としては、今後に生かされるシーズンと言えるかも知れない。

 投手陣は、大野雄大が復活し、3年目の柳裕也を軸として、若い世代に可能性を見出した。小笠原慎之介らケガのあった若い投手陣は、まだまだこれからだが、ブルペンの整備は進んでいる。負担がかからないようなマネジメントも、現役時代に登板過多で苦しんだ指揮官らしい配慮が感じられた。

 課題はチーム打率が1位ながら得点はリーグ5位という点をどう改善できるか。長打力に起因しているとも言えるが、攻撃的なスタイルへの転換を「守って勝つチーム」が伝統である中で、どう進めていけるかが来季の課題だろう。

小川淳司(ヤクルト) 評価:E

 昨季の2位からまた最下位に転落した。小川監督の長所は思い切った采配だ。再建途中にあって、勝敗を恐れずに若手を積極的に起用していくことで、チームをいい方向に導き出すのはうまい。一次政権の時も、絶望的な状態にあったチームを救った。

 一方、今季がそうであるように、一度、勢いを削がれて悪い方向に進むと、それを止めることができない。今季は順調なスタートを切りながら、16連敗を喫し、低空飛行を続けた。

 故障者が続出したのが大きな原因だ。昨季は71試合に登板して35セーブをあげた石山泰稚の離脱は大きかっただろう。ただ、厳しい言い方をすれば、リスク管理ができる指揮官ではないのかもしれない。

 一方、投手では高橋奎二を一本立ちさせ、野手では2年目の村上宗隆を球界屈指のスラッガーに育て上げた。最後に置き土産を残していくところは、もともとはシニアディレクターを務めた人物としての能力かも知れない。(文・氏原英明)

●プロフィール
氏原英明
1977年、サンパウロ生まれ奈良育ち。地方新聞社勤務を経て、03年からフリーライター。夏の甲子園は03年から大会をすべて観戦取材するなど、アマチュア野球に精通。現在のプロ野球選手のアマチュア時代を知る強さを生かし、プロの現場でも成長ぶりを追いかける。一方、最近では個性がどう生かされているかをプロアマを問わず観戦の主眼に置いている。近著には「甲子園という病」 (新潮新書)がある。

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