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「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第9回は「日本からミャンマーに譲渡された中古ディーゼル動車」について。
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歪み波打つミャンマーの線路を、日本から譲渡された中古ディーゼル動車が走っている。以前、JRなどでは「キハ」などとボディに書かれ、全国の鉄道路線を走っていた車両である。その後、日本は電化が進み、不要になった車両が海を渡ったわけだ。日本の鉄道ファンが撮影にでかけ、テレビの旅番組などでも紹介されている。
ミャンマーの全鉄道を乗りつぶす、という旅の企画で、何回もミャンマーに通った。そして数えきれないほどディーゼル動車に乗った。そのたびに悩んでいた。これは列車なのだろうか。なんだかバスに乗っている気分なのだ。実際、ミャンマー国鉄もRBE、つまりレイルバスエンジンと呼んでいる。
この旅は1冊にまとまったが、乗り残した路線があった。今年の7月、残った2路線に乗るためにミャンマーに向かった。
まず乗ったのは、モンユワとボディタタウンの間を、1時間ほどで結ぶ列車だった。1日1往復だけのローカル線である。モンユワを発車するのは朝の7時すぎ。駅へ行くと、駅長さんが切符をつくってくれた。運賃は100チャット、約7円。申し訳ないほど安い。