ときにヨーグルトの原料である牛乳は他の動物の乳とは組成が異なる。例えば、ヒトの乳に比べてたんぱく質濃度が3倍程度あり、よってヒトの新生児に牛乳を飲ませると新生児は下痢になる。
また、ヒトの母乳にはないβラクトグロブリンを含んでおり、これは牛乳アレルギーの原因になりうる。さらに、牛乳に含まれる乳糖を分解できない人が東アジアには多いため、牛乳を飲むと下痢をする(乳糖不耐)問題の原因となる。一方、牛乳は分岐鎖アミノ酸など多様なアミノ酸、たんぱく質を含んでいることと、カルシウムを多く含んでいる点から栄養学的には利点がある。
ノーベル医学生理学賞受賞者のメチニコフはブルガリアを旅行しているとき、かの地の人々がヨーグルト摂取量が多いことと高齢者が多いことから、ヨーグルトが長寿の原因ではないかという仮説を立てた。ブルガリア出身の元大関、琴欧洲がヨーグルトを宣伝していたこともあり、日本人的にはブルガリアといえばヨーグルトというイメージもあろう。
乳酸菌は乳酸を作る微生物の総称だとすでに述べた。乳酸菌による発酵食品を食べると健康によい、という見解もある。これをプロバイオティク(probiotic)という。抗生物質がアンチバイオティク(antibiotic)と呼ばれる菌を殺す物質なのに対し、プロバイオティクは腸内細菌を整えて健康に寄与する、という概念だ。
プロバイオティクスの多くは菌そのものも飲む。菌の入ったヨーグルトなども広義のプロバイオティクと呼ばれることがある。プロバイオティクスは下痢を起こすいろいろな病気の予防や治療に有用かも、ともいわれている。しかし、臨床試験によるはっきりとした効果を示すエビデンス(科学的根拠)はあまり多くない。
■トクホに指定されても健康になれるかはわからない
あるヨーグルトは女子学生に2週間食べさせて排便回数が増えた、という研究データを根拠に特定保健用食品に指定された。しかし、この程度のデータでは「人を健康する」と結論付ける訳にはいかない。