高校3年時、自ら主将を務めた最後の夏。部内での暴力事件が明らかになり、チーム連帯責任として大阪府予選出場辞退を余儀なくされた。
「まぁ、そんなこともありましたね……」
このことについては多くを語らない。だが、今江の心に大きな傷として残っているのは容易に想像できる。なぜなら、その年のPL学園からは複数名のプロ選手が輩出され、「幻のPL最強世代」と呼ばれるほどの強豪チームだったからだ。
「自分の野球人生ですから。準備をしっかりしてその時を待つ。それだけは変わらない」
目を背けたくなるような激しい競争が日常の世界。その中で、俗に言われる「いい人」は、ある程度の選手で終わってしまうことも多々ある。
「僕はそんないい人ではないですよ」
いつも笑いながら同じ答えを返す。
明るい性格で笑顔を絶やさぬ男は「ゴリ」と呼ばれる。小さい頃から各チームで常にキャプテンを務めてきた。まさに誰もが認めるキャプテンシーを持つ人格者の完全復活がチームに与える影響は計り知れない。
元号が変わった直後のゴールデンウィーク、今江の一軍合流が決まった。(文・山岡則夫)
●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。