ロンドン郊外の高速新線をハイスピードで疾駆する「ユーロスター」。撮影は跨線橋から。日本の新幹線より撮影自由度は高い■オリンパスOM-D E-M1・14~150ミリF4 ~ 5.6 II・絞りf8・AE・ISO800・JPEGスーパーファイン
ロンドン郊外の高速新線をハイスピードで疾駆する「ユーロスター」。撮影は跨線橋から。日本の新幹線より撮影自由度は高い■オリンパスOM-D E-M1・14~150ミリF4 ~ 5.6 II・絞りf8・AE・ISO800・JPEGスーパーファイン

 鉄道写真の楽しみ方には各国で違いがある。決められたルールも撮る側の守るべきマナーも、それぞれである。「アサヒカメラ」2月号では、世界各国の鉄道を撮影してきた櫻井寛さんに英国、スイス、タイの鉄道撮影事情を解説してもらった。ここでは英国での撮影事情を紹介する。

【マツコ・デラックスの番組でもおなじみ、鉄道写真家・櫻井寛のフォトギャラリーはこちら!】

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 2018年は、英国、スイス、タイなど、のべ17カ国を精力的に取材したが、初入国した国は南東欧のマケドニアで、訪問国は95カ国となった。100カ国まであと5カ国である。私を海外の鉄道に駆り立てるものは、好奇心以外の何ものでもない。そこには日本とはまるで違う鉄道が走っているからだ。

 英国は鉄道発祥の国である。ジェームズ・ワットによって蒸気機関が実用化され、リチャード・トレビシックが蒸気機関車を発明。そして、ジョージ・スチーブンソンによって1825年、世界初の「ストックトン&ダーリントン鉄道」が開業した。

■日本とは違う詳細な列車ダイヤ

 歴史と伝統を尊重する英国だけに、鉄道博物館は300館以上を数える。なかでも最大級がヨークの「国立鉄道博物館」だ。英国のみならず世界最大の鉄道博物館でもある。

 館内にはおよそ300両の歴史的鉄道車両が保存・展示されているが、うれしいことは、多くの車両が、いつでも走ることができるよう動態保存されていることにある。単なる展示物ではなく、生きている鉄道博物館というわけだ。

 博物館に隣接する機関庫で整備を受け、ピッカピカに磨き上げられた蒸気機関車は、ヨーク駅から特別仕立ての急行列車の先頭に立って、イングランド、スコットランド、ウェールズなど、英国各地に向け出発していくのである。

 驚くべきことは、詳細な列車ダイヤが公表されていることだ。日本にももちろん時刻表はあるが、それは実際に停車する駅の時刻のみである。ところが英国では全駅の通過時刻や、特急通過待ち、蒸気機関車の整備や給水などの運転停車時刻まで詳細にスマホの時刻表アプリで確認できるのである。おかげで誰しもが、特別列車の通過時刻を知ることができ、沿線で待ち構えることができるのだ。

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「紳士の国」を肝に銘じて