そして、同じ状況の人に会うたびに質問を繰り返しました。
驚くことに、全員が全員、似たような答えでした。
高校時代に演劇部にいた人や、大学時代に学生劇団で活動した人、演劇を見るのが大好きだけど実際にはやらなかった人など、演劇との関係は違っていましたが、30歳で初めてオーディションを受ける理由は同じでした。
彼女達は言いました。
「高校卒業の時に、俳優になりたくてオーディションを受けようと思ったけれど親に反対されて、大学に行った。大学卒業の時に、今度こそ俳優になりたくてオーディションを受けようと思ったけれど、親に反対されて、就職した。そのまま、働いてきたけれど、ずっと俳優になりたかった。会社をやめてオーディションを受けようと思ったけれど、親が反対するだろうと思ってできなかった。でも、30歳になったら、もう、親に反対されても自分のやりたいことをしてもいいと思った。だから、30歳で初めてオーディションを受けに来た」
みんな、同じ内容でした。まるで台本があるかのように、みんな同じことを話しました。30歳になったら、ようやく親に対して自分のやりたいことをしていいんだと、決意できたようでした。
でね、エイ助さん。僕はその言葉を聞きながら、内心、深い溜め息をつくのです。
オーディションでは、そうやって語る30歳の女性の横に、18歳や22歳の女性が並んでいます。
プロの音楽家とかプロのスポーツ選手になりたいと希望するケースで想像すると分かりやすいでしょう。
どんな楽器でもどんなスポーツでも、早く始めた人が有利なのは当たり前なのです。
18歳で俳優を目指して、ダンスレッスンをしたり、発声のトレーニングをするのと、30歳から始めるのでは、プロの俳優になれる可能性はうんと違います。
もちろん、どんなものにも、絶対ということはありません。30歳からスタートして、プロの俳優になれる人がいるかもしれません。でも、18歳や22歳から始めた人よりは、その可能性ははるかに低いだろうと思うのです。