下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
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アナンダ・ビハール駅もかなり大きい。プラットホームは7本もあった
アナンダ・ビハール駅もかなり大きい。プラットホームは7本もあった

 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第61回はインドのアナンダ・ビハール駅から。

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 デリーの鉄道駅といえば、ニューデリー駅という感覚が強かった。これまでも何回か、デリーから列車に乗ったが、いつもニューデリー駅だった記憶がある。いや、オールドデリー駅に着いたことが1回あるか……。

 今年(2018年)の6月、デリーからガヤーに向かった。ブッダガヤに行くつもりだった。ニューデリー駅には外国人専用オフィスがある。そこでまず、翌日のチケットをみてもらった。12時発の列車は満席。確保できるのは朝の6時30分発の列車だった。

 朝は早いが、それほど問題はなかった。ニューデリー駅前に安宿が集まっていることは知っていた。どうせそのなかの1軒に泊まる。駅から歩いて10分もかからないだろう。

 インドの旅は相変わらずつらく、デリーにもわけのわからないインド人がいっぱいいる。しかし唯一、旅行者はありがたいと思うのは、安宿街がニューデリー駅前のメインバザールロード周辺に広がっていることだ。東京駅前に安宿街があるようなものだ。

 もっともいまでは、このメインバザールロード以外のエリアにも安い宿が広がっているのだろうが、列車で到着して、翌日にまた列車で出発するようなときには駅前安宿はありがたい存在なのだ。

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職員に告げられた駅名とは…