しかし、食事は家族や友人など、何人かで一緒に食べることも多いですよね。料理を目の前にして、周りの人たちが好きなだけ食べているのを見ながら、自分は食べすぎないように我慢することは、大変な忍耐を要します。

 我慢の持続には限界があります。

 意識があるあいだはなんとか我慢できていても、無意識になってしまうとダメです。ごはんを我慢している人は、やはりお腹がすいてしまいます。そうすると、ふっと気が抜けた瞬間に、自分でも意識しないで食べてしまう「ながら食」のようなことが起きます。食事記録法はこの無意識の食事を自覚できますが、やはり持続は難しいようです。

 食欲というのはとても強い欲望なので、短期的には効果的な方法であっても、持続させることは困難なのが実情です。

 多くのダイエットは、短期間に体重が減ることを売りにしています。

 しかし、急激な変化というのは、体に不必要な負荷を強いることになります。人間の体には恒常性の維持という働きがあり、急激な変化が起きるともとの状態に戻ろうとするのです。これが「リバウンド」の仕組みです。

 そもそも、「ダイエットによって急激かつ一時的に体重が減った」ということは、体に蓄えていた糖を分解したときに放出される「水が減っただけ」ともいえる状態なのです。

 やはり、かんたんな方法で「急激に体重が減る」なんてことは、幻想でしかないのとお考え下さい。

 ここまで、既存のダイエット法がなぜ失敗するのかを述べてきました。

 拙著『オックスフォード式 最高のやせ方』のなかでは、古今東西の学術論文を読みあさり、最新の方法も取り入れて私が外来で実践している、無理のない運動・食事の方法を紹介いたしました。ぜひこの機会に参考にしていただければ幸いです。

下村健寿(しもむら・けんじゅ)/福島県立医科大学医学部病態制御薬理医学講座主任教授。先端医科学ウェルネスアカデミー(AMWA)代表理事。医学博士・医師。元・英国オックスフォード大学生理学・解剖学・遺伝学講座/遺伝子機能センター シニア研究員。05年と10年にはオックスフォード大学よりメリット・アワードを授与。主なメディア出演にNHKBSプレミアム「美と若さの新常識」など。