全国ネットのアンケートでは、子どもの不登校で約92%の家庭が「支出が増えた」と答えるなど、家計への負担が増えていることも明らかになった(photo gettyimages)
全国ネットのアンケートでは、子どもの不登校で約92%の家庭が「支出が増えた」と答えるなど、家計への負担が増えていることも明らかになった(photo gettyimages)

 不登校の子どもの数が24万人超と、過去最多になった。不登校の子を持つ親は、追い詰められてしまうことが多いという。AERA 2022年12月12日号から。

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 この子を産んでよかったの。

 関東地方に住む女性(40代)は長男が不登校になった時、自分を責めた。

 昨年9月、当時中学1年だった長男は心身のバランスを崩し、不登校になった。女性は長男に学校に行ってほしくて、車で送迎し、どうにか登校させていた。

 だが、やがて長男は車から出られなくなり、そうしたことを繰り返すうち、家の玄関からも出られなくなった。女性は長男を無理に登校させない選択をしたが、長男は壁に頭をぶつけるなど自傷行為を始めた。

「死にたい」「生まれてこなければよかった」「どうして俺を産んだんだよ!」

 毎日のように大声で叫び、女性に詰め寄った。2階のベランダから飛び降りようとしたこともあった。長男が苦しむ姿を見るうち、女性は自分を責めるようになった。

■追い詰められていた

 親になってよかったのか、この子を産まなければこの子は苦しまずに済んだのでは……。自問自答を繰り返した。

「当時の記憶がほとんどありません。それだけ、追い詰められていたのだと思います」

 文部科学省の調査で、2021年度に30日以上登校せず「不登校」とされた小中学生は前年度から2割以上増え、24万4940人と過去最多となった。新型コロナによる行動制限などで、人間関係や生活環境が変化したことが影響したと見られている。

 同時に、不登校の子を持つ親もまた、社会的に追い詰められ、孤独を感じている。

 NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク(全国ネット)」が10月、不登校の子を現在または過去に持つ保護者を対象に不登校に関するアンケートをネットで実施し、574人から回答を得た。

「不登校がきっかけで、保護者に変化があったか」の問いに、約65%が「自分を責めた」と回答。他にも、約54%が「子育てに自信がなくなった」、52%が「孤独感・孤立感を覚えた」、約45%が「落ち込んだ、消えてしまいたいと思った」など、不登校の子の親の心身の負担が大きいことがうかがえる。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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