Jリーグに続き「声援」が解禁になるためには(イラスト/サヲリブラウン)
Jリーグに続き「声援」が解禁になるためには(イラスト/サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 839日ぶりに、Jリーグで声出し声援が条件付きで許可されたニュースを見ました。Jリーグファンのみなさん、おめでとうございます。

 私の祝福を、軽率ではないかと訝しがる方も少なくないと思います。とは言え、声出し応援エリアを設け、観客の間にも十分と思われる距離を空け、データを取りながらの試験運転。東京都に関して言えば現時点での重症者数は少なく、解除を始めるに適切な時期と判断されるタイミングが来たのでしょう。

 こういう時、頼りになるのは野球やサッカーなどの国民的スポーツです。その他のスポーツや音楽ライブで声出しはまだご法度で、見切り発車をするわけにもいきません。Jリーグの声出し応援エリアで取られたデータは運営と政府で共有されるとのことで、市民の不安を煽らないためにも、やはり順を追って解禁していくのが妥当なのでしょう。合理的かどうかは、また別の問題ですが。

 情報を精査し、自分の意見をしっかり持つこと。いらぬ波風を立てぬよう、慎重になること。思考停止の末に、非合理的な判断を鵜呑みにするようなことがないこと。たとえ遠回りでも、丁寧に順を追っていくこと。社会という枠組みのなかで生きていくのに、どれも大切なことです。

 しかし、これら要素のバランス取りが難しい。人によってもかなり比率が異なります。分断や対立の一部は、このバランス比の違いによるものだと、新型コロナウイルスが教えてくれました。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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