コロナ禍で部屋に置ける「お墓」に注目集まる。お墓の形は変わっても、供養の気持ちをかなえられるという声も上がっている。AERA 2021年3月15日号から。
* * *
部屋に置ける小さな「お墓」も、コロナ禍で注目される葬祭サービスだ。コロナ禍で墓参りを敬遠する動きがある中、「自宅墓」「家墓(かぼ)」などとして石材店が売り出している。
部屋に置けるお墓の先駆けが「たくぼ(宅墓)」。滋賀県豊郷町にある創業約140年の老舗の石材店「浦部石材工業」4代目社長の浦部弘紀(ひろき)さん(49)が、5年前に考案した。
「5年くらい前から先祖代々の墓を閉じて『墓じまい』をする人が増えてきて、亡くなった人を拝むところがなくなる状態になりました。しかし、せめて手元に置いて拝むところを残せたらという思いがありました」
故人の遺骨や遺灰をそばに置いて供養する「手元供養」は00年ごろから広まった。「たくぼ」も手元供養の一種だが、室内に置ける「墓」はそれまでなかったという。
■1人用や夫婦2人用も
1人用から夫婦で入れる2人用まで全4種類、色は黒、白、赤、ピンクなど全5色。価格は1人用が7万円で、2人用は14万円。サイズは1人用の「たくぼ台座小」が幅17×奥行き23×高さ17.2センチ。
自宅に墓を置いていいのか心配になるが、墓地埋葬法では自宅の庭に遺骨を埋葬することはできないが保管して安置するのは問題ない。
たくぼの注文は月に1、2基だったが、昨年末に新聞やテレビで紹介されると、コロナ禍もあり一気に広まった。今や全国から注文が入り、月平均40基の注文がある。
「こんなのがほしかった」
という声とともに、お礼の手紙も届くという。浦部さんは言う。
「お墓の形は変わっても、亡くなった人を偲ぶ気持ちに変わりありません。墓参りに行きたくても、体調が悪かったり遠くて行けなかったりする人もいます。そういう人たちにとって、自宅に墓を置いて先祖を祭るのが新しい形になるといいですね」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年3月15日号より抜粋