まずは、最高時速が270キロと遅い700系の引退。新ダイヤでは全ての列車を最高時速285キロのN700Aタイプで運行する。停車時間を短縮するため、車内清掃も見直した。例えば、洗面所の液体石けん補充など一部作業の頻度を、サービスレベルを落とさない範囲で減らし、12分だった清掃時間を10分に縮めたという。

「運輸系統、電気系統、車両系統、施設系統……。それぞれ、それこそ秒単位で縮めることで発車間隔を狭め、12本ダイヤを実現できました」(JR東海)

 そして7月1日には、次世代新幹線「N700S」がデビューする。Sは「Supreme(最高)」の頭文字だ。振動がより抑えられ、全席にコンセントを備えるなど、過去最高の快適さをうたう。JR東海によれば、20年度から22年度にかけ計40編成を投入する予定。これらにかかる工事費(車両製作費用、補修部品の費用等)は約2400億円という。

 今回のダイヤ改定は、東日本大震災の被災地が待ち望んだ明るい話題でもある。JR東が、9年ぶりに常磐線の全線運転を再開するのだ。

「待ち遠しくてうれしい。首都圏の人が町に来てくれたり、私たち町民にとっても首都圏に行きやすくなったりする」

 と喜びを語るのは、常磐線が通る福島県浪江町に住む女性(35)。常磐線は日暮里(東京都)と岩沼(宮城県)を結ぶ全長343.7キロ。だが、東日本大震災の東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、原発から10キロ圏内にある福島県下の富岡(福島県富岡町)─浪江(同県浪江町)の20.8キロが不通となっていた。

 JR東は16年3月に不通区間の本格除染に着手し、昨年12月18日から全線再開に向けた試運転を開始した。全線再開に合わせ、上野・品川と仙台を結ぶ直通特急「ひたち」も運行され、南北両方面から福島県沿岸部へのアクセスが大幅に改善する。

「常磐線の全線開通によって、東日本大震災で被災したJRの線区は全て復旧を果たします。今後は復興の第2ステージとして、被災地域のさらなる活性化に貢献したい」(JR東)

 新幹線から在来線まで──。日本全国、今年はますます鉄道の旅が楽しくなりそうだ。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年3月16日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら