翌24日も「他の料理人やパティシエの皆さまも『これ買ったらこれを使ったレシピ1個』とかやってくれたら面白い広がり方するのではないでしょうか」とツイートし、プロの協力を仰いだ。

 金沢市の焼き菓子専門店「BAKE SHOP bien Bake」のオーナーシェフ坂下寛志さん(40)は、すぐに反応した。「神谷さんに共感しレシピ公開しました。少しでも被災地への支援に協力できたらいいなと思います」と、リンゴを使った焼き菓子「タルト ポム クランブル」のレシピを無料で見られるようにした。坂下さんは言う。

「借金をして店を立ち上げたこともあり、生活の糧を失う怖さは理解しているつもりです。自然災害という人間の力ではどうしようもできないものによって、生活の糧である農園が壊滅的被害を受けたことに心を痛めました。神谷さんの提案は、自分にもできる支援だと思いました」

 兵庫県尼崎市の洋菓子店リビエールのオーナーパティシエ西剛紀さん(36)も、すぐに「おうちで作ったらおいしいと思うお菓子紹介させてもらいます!」と「リンゴのクラフティ」のレシピを公開した。

「農家の被害は神谷さんの発信で知りました。僕が続くことで賛同する人の輪が広がり、リンゴを買う人が少しでも増えればいいと思いました」(西さん)

 全国のシェフやパティシエらを巻き込んで日に日に動きは発展し、途中から「#被災地農家応援レシピ」というハッシュタグも付いた。リンゴだけでなく、千葉県特産の落花生、カブなどの根菜、ナシなどのレシピも加わった。神谷さんも「千葉の被災された農家から野菜を買って」と、落花生を使ったサラダや「ポトフ」などのレシピを公開した。

 神谷さんは11月、志を同じくするシェフら15人で「#Cook ForJapan」を結成した。関連する投稿のハッシュタグも「#被災地農家応援レシピ」から「#CookForJapan」になった。

「僕たちが美味しい料理を作れるのは、農家のみなさんあってこそ。ただでさえしんどい職業で、心が折れたら続けられないと思うので、レシピを作ったり、多くの人が楽しめるイベントを企画したりして、被災した農家を後押ししたい」(神谷さん)

(朝日新聞鹿島支局長・村山恵二)

※後編「被災地のリンゴ1.5トンが猛スピードで完売 背景にシェフたちの『素敵な動き』」へ続く

AERA 2020年1月27日号より抜粋