小説、エッセー、詩集から翻訳本まで自分では気づけなかった良書を選んでくれた。岩田徹さんは「本を読んで、自分と同じことを考えている人(登場人物)が見つかることが大事」と話す(撮影/写真部・加藤夏子)
小説、エッセー、詩集から翻訳本まで自分では気づけなかった良書を選んでくれた。岩田徹さんは「本を読んで、自分と同じことを考えている人(登場人物)が見つかることが大事」と話す(撮影/写真部・加藤夏子)
記者が「選書」してもらった11冊の本(撮影/写真部・加藤夏子)
記者が「選書」してもらった11冊の本(撮影/写真部・加藤夏子)

 何かにつけて「イノベーション」が求められる現代。会社でも常に「アウトプット」を求められ、疲弊しているビジネスマンも少なくないのでは。そんな時は、自分にぴったりの“選書”が助けになってくれるかもしれない。

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 外部からの助言や刺激があればすぐ、アイデアが無尽蔵に湧いてくるわけではない。そのために情報を集め、自己啓発に励み、インプットに精を出す。だが、「すぐに役立つ知識は、すぐに役に立たなくなる。何冊ものビジネス書より、10年後に『読んでよかった』と思える本を一冊でも読む方がずっといい」。

 こう語るのは、北海道砂川市にある「いわた書店」の店主・岩田徹さん(66)。読書歴などを郵送すると岩田さんがオススメの本を選んでくれる「一万円選書」は、「自分では気づけなかった本が見つかる」と話題となり、全国から申し込みが相次ぐ。今年4月にNHKの番組で取り上げられるとさらに注目され、現在は約7700人待ちだという。

 一万円選書に申し込む人は、面白い本に出合いたいという人だけでなく、人生における行き詰まりの突破口を見つけたい、生きることに不安な心を本で支えてほしいと願う人が多いという。岩田さんは読書歴や家族構成、人生観などが書かれた「カルテ」だけを頼りに、その人が何を思い、どこに悩みがありそうなのかを想像し、本を選ぶ。岩田さんがその人の年代に体験したこと、その時に読んだ本なども思い出しながら「ピンときた本」を探す。だからこそ、ネット通販の「レコメンド機能」ではまず出てこない、自分では見つけられない本が選ばれる。

「カルテを書くと、人生で何を大切にしたいのか自然とわかってきます。立ち止まりつつ、違った視点で人生を考え始めようとする人に、僕は参考になりそうな本を提示するだけです」

 実際に記者も選書してもらった。「カルテ」はA4で3枚。まずは「これまで読んだ本で印象に残っている本BEST20」を書く読書歴。いざ、20冊を挙げるとなると、これが予想以上に大変で骨が折れる。他に年齢や家族構成、仕事内容などを書く欄があり、「10 年後にはどんな大人になっていますか」「これだけはしないと心に決めていること」「あなたにとって幸福とは何ですか」などの質問が並ぶ。シンプルな質問ゆえ、深く考えないと欄を埋められない。図らずも、幼少期のこと、家族や仕事のこと、結婚生活などを振り返らざるを得ない。つまり、人生を振り返ることになる。

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