かつては「下魚」と呼ばれ、蔑まれてきたサバだが、鯖を愛するサバニストらの「布教」の甲斐あって国民的青魚に。昨年には「ツナ缶」の生産量を「サバ缶」が完全に抜いた。全国各地でサバグルメが新たに誕生し、サバ関連イベントも大盛況。サバに魅せられ、熱く活動を続けるサバニストたちがいる。
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10月中旬の土曜日。東京・大手町のレストランでサバ料理を堪能する「鯖ナイト」が開かれた。5年前から数カ月に1度開かれているイベント。この日は10月27、28日に長崎県松浦市で開かれる「鯖サミット2018」に合わせ、松浦市のブランドサバ「旬(とき)さば」と、同市と佐世保市で生産する養殖サバ「長崎ハーブ鯖」を使った料理が並んだ。カルパッチョや鯖バーガー、ホイル焼き、チャーハンなど多彩な料理が10品出され、そのたびにカメラや携帯電話で熱心に写真を撮る人の輪が幾重にもできた。
サバ愛が高じて「サバフォトグラファー」を名乗る木村雅章さん(41、本業もフォトグラファー)は目を細めて言う。
「サバは照りもあるし、青みもあるし、インスタ映えするんでしょうね」
とろけるような表情で、「この血あいがたまらない」と口にしたのは、さいたま市の主婦、高橋悦子さん(49)だ。パートのシフトを替わってもらって鯖ナイトに初参加した。仙台出身で、小学校の頃から朝食にサバが出るとテンションが上がったという高橋さん。
「今は全国からサバをお取り寄せして楽しんでいます。サバの人気が上がったのはうれしいけど、健康のためにサバを食べるというのは何か違う。美味しいから食べるんじゃなきゃ」
以前は相模湾で釣って食べていたという東京都目黒区の藤きみよさん(60)は、
「10年ぐらい前までサバは魚好きの猫でさえ食べない『ねこまたぎ』とバカにされていたけど、やっと『サバが好き』って堂々と言えるようになったのよ」
と喜びをかみしめる。
参加者の熱い語りに引き込まれているうちに、「全日本さば連合会(略・全さば連)」の会長で「サバニスト」を名乗る小林崇亮さん(44、本業はクリエイター)がサバトークを始めた。スクリーンには日本地図が映し出され、「関さば」(大分市)や「金華さば」(宮城県石巻市)など各地のブランドサバがずらり。この数年で、三重県南伊勢町の「おかげ鯖」や脂のりがいい島根県浜田市のサバ、鹿児島県長島町の「むじょかさば」など新興勢力も出てきているという。