スローライフ志向とアーリーリタイア志向は、都会の忙しさから逃れて気ままにのんびり暮らしたいと考えている人。このタイプは、現実のしがらみからの逃避志向が強く、漠然とした「地方への憧れ」というイメージ先行で移住を捉えている傾向もある。地域や人とのつながりを軽視しがちのため、移住先になじめないリスクが大きいという。移住の長所と短所をしっかり把握してから移住を検討することを勧めたい。

 一方、移住候補として多くの自治体がターゲットにしているのが、教育移住志向だ。この層の目下の最重要課題は子育て。自然豊かな環境でコミュニティーの支えも得ながら子育てしたいと考えている。小学生以下の小さな子どもを持つ20~30代の女性に多く見られるという。

 地域コミュニティー創造志向の層は、地域に根差した活動への参加を望み、自分の手でコミュニティーをつくって地域を盛り上げたいと考えている。ミドル層の女性に多く見られるタイプだという。地域コミュニティーに溶け込めるかどうかは移住の成否を握る重要な鍵の一つだが、このタイプは濃いコミュニティーが大好きなため、人間関係の濃密な「田舎暮らし向き」ともいえる。

 起業家マインドが強いのがスタートアップ志向だ。自分のスキルを生かしてビジネスを起こしたい、といったチャレンジ志向が高い。20~40代の未婚男性に多く、フリーランスも目立つ。地域活性化への寄与が期待されるため自治体としては積極的に取り込みたい層だ。

 地域社会貢献志向は、移住先で積極的に社会貢献したいと考えているタイプ。自分の知識や能力を世の中に還元したい、社会的課題の解決のために行動したいという意識が強い。地域社会には課題も多いため、取り組みがいのあるテーマに出合える可能性も高そうだ。

 自分のタイプを知った後は、どうすればいいのか。

 兎洞副代表は「先輩移住者を訪ねる」ことを勧める。

「その際、自分と同じ志向の先輩移住者を訪ねることで、より有効な情報を得ることができます。自分のタイプを事前に認識できていれば、自治体や民間の相談窓口でもスムーズに同じタイプの先輩移住者を紹介してもらえるのではないでしょうか」(兎洞副代表)

(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年10月8日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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