解任後に開かれた異例ともいえる記者会見でも、JFAと前監督のコミュニケーション不足は露見した。解任理由を濁せば、厳格な外国人監督が納得するはずもないことを、なぜJFAは理解できなかったのか。また、前監督は最後まで本心を内に秘める日本人の心を理解することができなかったのだろう。

 早くもロシアW杯後の監督には、日本人を推す声が聞こえてくる。しかし、コミュニケーション不足を国籍や言葉だけの問題にするのはいささか安易だ。大切なのは、一国の代表チームを率いるリーダーとして、国籍にかかわらず、その国の選手の特徴や特性、国民性を理解しているかどうかではないか。長年Jリーグで指揮を執っている監督なら、外国人でも日本の常識を心得ているだろう。日本人監督で障害になるのは、海外でプレーする選手が増えているのに対し、国際経験をしている指導者がほとんどいない点である。

 そんななか日本人で将来の代表監督として面白そうなのは、ジュビロ磐田の名波浩監督(45)だ。現役時代に磐田で数々のタイトルを獲得し、日本代表のエースナンバー10を背負って1998年フランスW杯に出場。イタリア・セリエAのベネチアでプレーした経験もある。指揮官としても低迷期にあった古豪を再建し、J2からJ1に導くなど抜群の求心力でチームをまとめ上げている。かつてのテレビ解説での鋭い戦術分析も武器。時に見せる日本代表への厳しい指摘も深い愛情が感じられる。

 過去の実績や世界的な名声だけで代表監督を選んでも決して好結果は出ない。それよりも、肝心なのは相性。それはどんな組織のリーダーにも当てはまる。今回の教訓を次にどう生かすか。W杯の行方とともに、ロシア後の監督選びが注目される。(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2018年5月21日号