「70年代半ばごろにはトラック輸送に押され貨物の仕事が減ってきました。半面、勤務時間内の作業手待ち時間が増えてきたので、国労の職員たちが何を始めたかというと、チンチロリンとかマージャン。お金はもちろん賭けていた」

 国鉄で在来線の運転士をしていたJR職員(50代)も、勤務時間中に飲酒をしていた運転士を目撃している。たがが外れ、現場に悪慣行がはびこっていた。この点について、現在も約1万人の組合員を抱える国労はこうコメントを寄せた。

「中には『好ましからざる行為』を行っていた職員もいたことは事実です。しかし、一部国鉄職員の行為があたかも国鉄職員全体の行為であるかのように恣意的にゆがめられ、悪意に満ちた喧伝や報道が行われたことが異常でした」(国労本部書記長の唐澤武臣さん)

●クビ切りは組合で選ぶ

 そこに国鉄の不祥事が追い打ちをかけた。ヤミ手当の受給に、機関士の酒気帯び運転……。マスコミは国鉄の批判キャンペーンを展開。分割民営化に世論もなびいた。一方、国鉄では毎年1兆円の赤字が出て、出血が止まらない。こうして国鉄はついに解体されることになった。

 誰を国鉄に残し、誰に転職を促すか──。国鉄内で「選別」が始まり、水面下で「リスト」作りが行われた。

 民営化前、関西で列車乗務の仕事をしていた男性は、「50歳以上は会社を辞めてほしい」と圧力をかけられた、と振り返る。彼は辞め、残った同僚もすぐにJRを去った。最近、その理由を教えてくれたという。

「乗務が終わって職場に戻ったら、上司になった後輩から『ぼちぼち辞めたらどうや』と毎日言われる。みじめやった、と振り返っていました」

 国鉄の内部事情に詳しい国鉄OB(60代)はこう証言した。

「社員を選別する際、その一つにどの労働組合に所属しているかが重要な要素だった」

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