「高校生には、大学生のように『所属する研究室のテーマに合わせないといけない』といった制約がないので、純粋に自分の興味を追求しています。弓道部の生徒がなぜ矢が安定しないのかを科学的に検証するなど、ユニークなものも多く『世界初』の研究になっていることも少なくありません」(同校の小川慎二郎教諭)

 第2外国語についても、同校ではドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語のいずれかを必修とし3年間みっちり学ぶ。受験を気にせずに済む付属校だからこそ、大学に入る段階でそれだけの「貯金」ができるのだ。

 一方、「多文化共生」を軸としたリベラルアーツ教育に力を入れるのは、青山学院高等部。東ティモールでのフィールドワークを通して、経済格差やフェアトレードについて学んだり、青山学院大学への留学生と移民やLGBTなどについて議論するなど多彩なプログラムがある。その集大成として高2後半から高3にかけて「共生」をテーマに論文も書く。

 通常の授業の英語も、世界を知り、コミュニケーションするためのツールという位置づけで、穴埋め式のドリルや英文和訳などに割く時間は一切ない。高2で“Discussion in Heaven”と題して、ケネディ大統領やマザー・テレサ、坂本龍馬など著名人の中で誰か一人を蘇らせるとしたら誰にするかを議論したり、高3では、アメリカのノンフィクション作品を半年かけて読み込み、最終的に「赦しとは」「生きるとは」「結婚とは」「年を重ねるとは」といったテーマで30分のプレゼンをしたりする。

「一貫教育という環境の中で、一歩先の学問、面白い勉強に出合ってもらいたい」

 同校の藤井徹也教諭は、カリキュラムの狙いをそう話す。

 大学入試が目指す脱ペーパーテスト、高大接続に付属校は先んじて取り組んできたが、その徹底具合は、当然のことながら、一律ではない。『大学付属校という選択』の著者、おおたとしまささんはこう指摘する。

「大学受験に縛られない本質的な学び、と言いながら難関大学進学コースを作ったり、外部の模試を受けさせたりする学校もある。そうであれば進学校と大差はなくなってしまう」

●ミス恐れずチャレンジ

 その観点でおおたさんが注目するのは、内部推薦の審査基準だ。公表していない学校が多い中、例えば立教池袋高校は「定期試験や提出物など成績の比重は55%、高2、3年で取り組む卒業論文は20%、25%は自己推薦」と明確にしている。自己推薦は部活や生徒会活動、趣味やボランティア等の課外活動など七つの項目の中で最大三つを選んで、自分が頑張ってきたことをアピールするものだ。

 おおたさんは言う。

「親御さんには、楽して大学に行けて、世間に通用する学歴を手に入れるといった理由で付属校を選択するのはお勧めしません。付属校の本来の価値はそんなせこいものではないはず。受験がないからこそミスを恐れず、様々なことにチャレンジできる体制になっているか。その結果としてのいろいろな個性をきちんと評価しているか。そこに注目してほしい」

※学校によって「付属校」ではなく「附属校」「系属校」「一貫教育校」などとしている場合もありますが、本稿は個別校名以外は「付属校」としています。

(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年3月27日号