右肩上がりの薬剤費を抑える三つの秘策 (3/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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右肩上がりの薬剤費を抑える三つの秘策

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塚崎朝子AERA#健康
高齢の両親のおくすり手帳を見て、処方されている種類と量に驚く人は多い。「残薬」による無駄の温床とも指摘されている(撮影/写真部・岸本絢)

高齢の両親のおくすり手帳を見て、処方されている種類と量に驚く人は多い。「残薬」による無駄の温床とも指摘されている(撮影/写真部・岸本絢)

医師から出される処方薬の効能の進化や改善は、価格とのバランスも考え合わせなければならない段階に入っている(撮影/写真部・岸本絢)

医師から出される処方薬の効能の進化や改善は、価格とのバランスも考え合わせなければならない段階に入っている(撮影/写真部・岸本絢)

薬代を含む診療費は、高額になればなるほど自己負担を上回る公費が投入されており、保険医療の窮迫は見えないところで進んでいる(撮影/写真部・岸本絢)

薬代を含む診療費は、高額になればなるほど自己負担を上回る公費が投入されており、保険医療の窮迫は見えないところで進んでいる(撮影/写真部・岸本絢)

●実績積み重ねる英国

 NICEの基準は、「1QALY(健康で活動的に1年生きている状態)当たりの費用が、2万~3万ポンド(約250万~380万円)以下であれば費用対効果として良好。それ以上であれば税金の賢い使い方とは言えない」。単なる総医療費の削減ではなく、定められた財源の中で、より効率的な治療を提供することをめざす。

 NICEが肯定的な提言をした場合、すべての地域の医療機関はその決定に基づいた治療を3カ月以内に提供することが義務付けられる。逆に否定的な提言に強制力はないが、「費用対効果に見合ったものではない」とされると、その薬の使用は事実上難しくなる。

 NICEは最近、高額の抗がん薬を中心に評価し、約半数について「費用対効果の点から非推奨」とした。

 国際医療福祉大学薬学部の池田俊也教授は、「例えば、延命効果が数週間の抗がん剤があるとすると、患者にとって数週間はとても重要だが、そこにかけるコストも考慮せざるを得ない」と語る。

 日本でもこれまで、2年に1度の診療報酬改定に合わせて、すべての薬剤について薬価を見直してきたが、その基準は市場価格の動向だった。費用対効果評価専門部会の参考人でもある池田氏は、「日本では、患者や社会にとってどれぐらい価値があるのかという視点で薬価が定められていなかった。現場でも、例えば生活習慣病の薬に複数の選択肢がある中で、効き目が同等ならより安価な物をといったコンセンサスがなかった」と指摘する。18年からは、高額な薬剤や医療機器などについて費用対効果指標に基づいて、薬価の見直しが行われる予定だ。

●後発医薬品なら4割安

 医療経済にも、個人の財布にとっても「救世主」と期待されるのが、後発医薬品(ジェネリック)だ。

 新薬が市場に出るまでには10年以上もの年月と数百億円規模の研究開発費がかかるため、先発品の公定価格(薬価)はそのコストを回収できるよう、高めに設定される。さらに、特許申請から20~25年間は、先発品メーカーにその薬を独占的に販売できる権利があるが、特許期間切れを迎えた薬は、他の製薬会社が効能・効果、用法・用量などが同じ医薬品を製造・販売できるようになる。これがジェネリックで、先発品に比べて開発費用がかからないため、価格も先発品の6割以下に抑えられることが多い。

 政府は、18年度から20年度末までのなるべく早い時期に、後発品があって代替可能な薬剤のうち、後発品のシェアを数量ベースで80%にし、国民医療費を年間で約1兆3千億円削減することをめざす。

 後発品シェアはすでに56%に達している。ジェネリックが普及した理由の一つが、10年前から始まった処方箋(せん)の様式の変更と、処方する医師や調剤する薬局への診療報酬上の加算だ。

 以前の方式では、医師は処方箋に薬の「商品名」を書き、患者はその通りの薬しか受け取れなかった。しかし06年からは、先発品の商品名で処方された場合も、医師が処方箋に「後発品への変更可」のチェックをすれば、薬局で後発品に変更できるようになった。


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