それでも医師になる 現役545人アンケートで見えた格差 (3/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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それでも医師になる 現役545人アンケートで見えた格差

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編集部・熊澤志保AERA#医療
医師だって人間だけど、普通のひとでは務まらない。命を左右する職業に私たちは、どうやって報いるべきなのだろうか(撮影/写真部・松永卓也)

医師だって人間だけど、普通のひとでは務まらない。命を左右する職業に私たちは、どうやって報いるべきなのだろうか(撮影/写真部・松永卓也)

医学の道は日進月歩。どんどん進化する薬や器具に、医師はついていかなければならない。生涯、学び続けなければならない過酷な職業だ(撮影/写真部・松永卓也)

医学の道は日進月歩。どんどん進化する薬や器具に、医師はついていかなければならない。生涯、学び続けなければならない過酷な職業だ(撮影/写真部・松永卓也)

年収、一日の勤務時間は?

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現役医師に聞いた「医師の本音」

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現役医師がみるこれから厳しくなる科、将来性のある科

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「年下の医師が離職しないよう大切に育成される一方で、自分のような中堅にしわ寄せが来ているとも思いました。円満に転籍できるよう、半年前から調整しました」(Eさん)

 民間病院に転籍すると、ワーク・ライフ・バランスは大幅に改善した。

「いまの病院は、9時5時の常勤で当番制。患者の急変時に病院に呼ばれるオンコールもなく、当直はすべて外勤の医師が行ってくれます」(同)

 しかも、年収は200万~300万円ほど上がったという。

 中村さんによると、Eさんのようなキャリア構成のルートは珍しくないという。

「開業しないなら、卒業後10年ほどを目安に、医局に残って教授を目指すか、条件のよい民間病院に転籍するかを決めることになる。女性のほうが早く決断する傾向にあるようです」

 最初から医局に頼らず、地方への赴任を選択した医師もいる。

 血液内科の森甚一医師(35)は、大学卒業後、出身大学の医局に入らず、当時学生間で人気だった都立病院で初期研修と後期研修を受けた。その後、自分で東京大学大学院を受験した。

 研究漬けの大学院生活の傍ら、知人に紹介された福島県いわき市へ外勤に通った。「人口あたりの勤務医数が少ない市町村のひとつで、80歳過ぎの医師が当直している現場もあった」(森医師)という。

 大学院を修了するとき、外勤先のときわ会常磐病院に誘われ、常勤医になった。着任以来、患者は引きも切らずやってきて、地方の専門医療の必要性を痛感した。

 いわき市で働く週5日は、帰宅すれば論文を書くなど、仕事漬けなのは東京勤務のころと変わらない。週末は東京の自宅で家族と過ごすが、子どもが寝付けば文献を読み、学会にも参加している。収入は以前の1.5倍程度になった。

「東京は医師が多く、若い医師も都市部に行きたがるから、自分の代わりはいくらでもいる。ところが、少し地方に行けば、どこも慢性的に人手不足で需要があり、医師の待遇を整えてくれる病院もある。今は、いわき市で新しい科の立ち上げに全力を尽くします。結局、働くことが好きなんでしょうね(笑)」(同)

●不安が増す外科医

 変わるのは、医師の意識だけではない。世界の中でも著しく進む少子高齢化が、患者の数や病気の内容といった外部環境を大きく変えることが予想される。いま経営が「安泰」の診療科がずっとそのまま、とは限らない。

 アンケートでは、今後経営が厳しくなると予想する診療科も尋ねた。

 ワースト1位は産婦人科だ。出生数減少によって、患者の絶対数が減ることや、医師1人当たりの訴訟件数が整形外科と並んでトップクラスという訴訟リスクを理由に挙げる医師が多かった。分娩は時間をコントロールしづらいため、時間外の呼び出しも多く、医師の負担自体も大きい。

「労働環境が医療界でも際立って過酷」(30代・男性・勤務医)

「不眠不休の科は敬遠されるでしょう」(40代・男性・開業医)

「言葉を選ばずにいえば、3K(きつい・汚い・危険)」(40代・女性・勤務医)

 ワースト2位は小児科。少子化に加え、モンスターペアレントを懸念する声が多かった。

「不況により、教育レベルに問題のある親も増えている」(40代・男性・勤務医)

「手間がかかるのにもうからない」「夜間対応が大変」といった声も寄せられた。

 ワースト3位は外科。かつては花形だったが、志望者が激減している診療科だ。

「諸外国に比べて、手技の対価が極端に安価」(40代・男性・開業医)、「患者が大病院に偏る」(60代・男性・勤務医)、「ロボット技術の発達により、仕事がなくなる」(40代・男性・勤務医)といった意見があがった。

 ワースト4位の内科は、医師数がもっとも多い診療科だ。総数は10万人を超える。各学会ごとの認定から「日本専門医機構」による認定へ移行が準備されている「新専門医制度」の影響を大きく受けると予想されることや、「団塊の世代がいなくなれば(医師が)余る」(60代・男性・勤務医)といった声が寄せられた。

 将来性に期待できる科はどこなのか。

●将来性ある科は「なし」

 アンケートでは「なし」が133人でまさかのトップで、2位の内科の3倍以上と、大きく引き離した。「人口減が進み医師数過剰の時代がくる」など、今後医療業界が厳しくなると考える医師が多いようだ。

 2位の内科は高齢化と、急増する地域での看取りのニーズが背景にある。「薬漬け、検査漬けでどんどん稼げる。心臓カテーテルを行う循環器内科は大変だと思うが、普通の内科はウハウハ」(50代・男性・勤務医)といった冗談とも本音ともつかぬ声も。

 続くのは整形外科、老齢医療で、現場の医師らが高齢社会を強く意識していることがわかる。

 国の医療費抑制政策などもあり、医師という職業に不透明な部分があるのは事実だ。

「金持ちになりたいなら、他の職業を勧める」(30代・男性・勤務医)、「昔ほどうまみのある職業ではない」(40代・男性・勤務医)と、シビアな視点の医師もいる一方で、医師を志望する若い世代に、こう助言する医師も多かった。

「人の命と人生を預かる仕事。覚悟を持ってきてほしい」(30代・男性・勤務医)

(編集部・熊澤志保)

AERA 2016年10月3日号


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