交番に自首し、ほどなく逮捕された。

 小児性愛、のぞき、痴漢、盗撮、露出、強姦など、特定の性的な行動を過剰に繰り返してしまう症状は「性依存症」と呼ばれ、国際的な診断基準もある。

 性依存症を診る精神科医の福井裕輝氏によると、「自分がやめたいと思っても、それができなければ依存症と診断される」。

 原因は心の問題、とソーシャルワーカーの吉岡隆氏が言う。

「不安や寂しさ、怒りなど、その人が強く心に抱えるものがあると依存症になりやすい。依存には否定的な感情を鎮静、麻痺させる効果があるからだ。しかし、それを続けていると、その先には死が待っている」

 遺伝や脳機能障害の可能性も否定できない。「性犯罪の常習者には、扁桃体など脳の一部に血流低下が認められた」(福井氏)ケースもあるからだ。

 2015年の犯罪白書によると、強姦か強制わいせつの服役者で、以前にどちらかの罪を犯したケースは最大45%。痴漢や盗撮では、性犯罪の前科が64~85%まで跳ね上がる。

 性犯罪事件の裁判を手掛ける林大悟弁護士の元を訪れる加害者は、ほとんどが再犯者。前科10犯のケースもあった。

「本人はやめたいと思っても衝動を抑えられない。だから依存症には治療が必要なのです」

 性犯罪の常習者には、「痴漢をされると女性は喜ぶ」「盗撮は誰も傷つけていない」など特有の思い込みを持つ傾向がある。こうした考え方のゆがみに気づかせるのが認知行動療法だ。性欲を減退させる薬の抗アンドロゲンの投与を組み合わせれば、効果は増すという。

 加えて、多くの医師やカウンセラーが有効だと勧めるのが、性依存症の人たちを集めた自助グループの活用だ。米国で生まれたアルコール依存者が回復するためのプログラムを応用し、グループ形式で実践する。性を依存の対象としない「性的なしらふ」の状態に向け、仲間と支えあいながら自分を律していく。

AERA  2016年2月8日号より抜粋