■元気なうちに実家の片付けを

“実家をたたむ”タイミングというのは、多くの場合、突然やってくる。親が突然倒れるなどし、結果的に実家に戻ってこられないことになって、初めて実家じまいを考え始めるケースは少なくない。だが西崎さんのように、生前から親と実家じまいについて話せていれば、親の了承を得て手放す決意を持つことができるし、物の処分に親の意向を反映することもできる。

 賃貸住宅の場合、施設への入所や子どもと同居するために引っ越す場合は計画を立てられるが、入院して退院のめどが立たず、長期不在にしたり、不幸にも亡くなったりした場合などは、即退去になってしまう。こうしたとき、何も準備ができていないと、悲しみの中で退去のためのさまざまな手続きに追われ、大変な思いをすることがある。一方、一戸建ての持ち家は退去の期限がない分、いつかやろうと先延ばしにし、長い間空き家になりがちだ。

「そうならないためにも、できるだけ親が元気なうちに実家を片付け始めるのが理想的」と話すのは、実家片づけ整理協会の渡部亜矢さん。渡部さんは、親が60歳になったら、たとえ元気でも実家の片付けを行うことを推奨している。それは、親が亡くなった後に実家を片付ける遺品整理は、子どもにとって思った以上に心理的な負担になるからだ。生前はどうでも良いと思っていた品々が、親の死後は「大事な親の思い出」に変わってしまう。思い出が増幅し、捨てられなくなってしまう子どもも少なくないという。

「その結果、何年もほったらかしにしてしまうというのが、最近の空き家問題の一端にもなっていると思います」(渡部さん)

 急な病気や、認知症の発症などで、親が突然、病院介護施設に入る場合もある。そうしたときに慌てないためにも、早いうちから片付けに着手するに越したことはない。また実家の片付けは、いざというときに必要になる印鑑や通帳、不動産の権利書など、重要なものがどこにしまってあるのかを確認しておく機会にもなる。

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