リスナーが気軽に参加できるのもラジオの魅力だ。川村さんは、インターネットには誹謗中傷も多く、信ぴょう性が怪しい情報も多く流れているとみる。一方、ラジオ局は公共の電波の割り当てを受ける免許制で、流している情報に信ぴょう性があると話す。

 北郷さんも「ラジオは寄り添いのメディア」という。ラジオの音楽番組で、リスナーが匿名でリクエストすることがあるが、本名を明かさないだけで、ラジオ番組にはリアルな世界があるとみる。一方、ネットはどこまでもバーチャルな世界だとも。さらに、テレビでは「お茶の間のみなさん」と呼びかけ、ラジオでは「ラジオの前のあなた」となり、「距離感が違い、メディアの特性が違う」と北郷さんは指摘する。

■災害時の重要な情報源になる

「ラジオはパーソナリティーなどの話す側にとっても、個人に話しかける感覚に近いのではないか。タレントも楽屋でしゃべるように、ラジオでなら話せることがある。ある種の本音が語れる」

 こう話す北郷さんは、語り手と音楽だけの魅力があるとみている。

 ラジオ番組ではリスナーのリクエストを受け付け、ハガキなどの投稿を紹介するなど、番組に参加しやすいのが特徴だ。さらに、ラジオのコミュニティー放送が全国に339局あり、北郷さんは「敷居が低く、参加したいと言うと受け入れてくれる緩さがある」と話す。

 コミュニティー放送は地域の人たちと情報を共有するのが狙い。北郷さんは「市民が集うようなところがあり、親しみやすい」とみている。ちょっと見学させてほしいとか、サークルの情報を紹介してほしいと頼めば、「それではスタジオに来てください」となる可能性があるのだという。

 ラジオのもう一つの魅力として、災害時の重要な情報源という役割がある。北郷さんは「災害時に情報が途切れるのが怖い」と指摘する。インターネットの情報は災害時に、コンテンツを提供するコンピューターのサーバーなどがダウンする可能性がある。一方、「電波はダウンしない」(北郷さん)。

 防災ラジオ番組も担当する清水さんも、災害時のラジオ番組の重要性を強調する。清水さんは「音声だけで災害の情報が得られる。手を動かすだけでいい。災害時にはネットが使えるとは限らない」と話す。防災のため、ラジオを常備しておくことは大切になる。

「ラジオは最近、郷愁とともに語られることが多い」と清水さんは話す。川村さんは「ラジオは脳を活性化するといわれる。そして人生の友達」という。ラジオのぜいたくなアナログ音源で、音楽やパーソナリティーの話に耳を傾け、想像を豊かにめぐらし、未知の曲やアーティストとの出会いを楽しんでみてはいかがか。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年9月23・30日合併号