「ロケ以上に困るのは編集作業。これまでは狭い編集室に5~6人が集まって、ああだこうだとやりながら作っていたけど、密の極致になる。なので、今は映像をネットで共有して、リモートで作業するようになった。ナレーションを入れるのもそのやり方だから、非常に難しいし時間がかかるけど」(制作プロダクション代表・50代)

 コロナ禍でテレビの制作現場でも「ニューノーマル」ができあがりつつあるようだ。しかし、コロナ禍の避けられない影響がある。彼らは「むしろそちらのほうが大問題」と言う。ロケがなくなったことで収入が大きく減少してしまったのだ。

「コロナ禍になってから番組編成が再放送やリユース映像ばかりになってしまっている。その結果、新たなロケの数が減って発注本数自体が減り、結果的に収入が減っている。会社はかなり苦しい様子です」(前出・制作プロダクション勤務)

◆経費削減のため現場には一人で

「制作費が抑えられるという事態はもう10年以上続いているけど、コロナがさらに追い打ちをかけた。CMが減って局の制作費もさらに削減されているから。持っていく機材を減らして、人を減らして対応している。現場にはディレクターが機材を持って一人で行き、音声・照明役もこなすマルチプレーヤー化して経費を減らすとか。それでも下請けは儲けが出にくい状況になった。今は、タレントさんのユーチューブチャンネルを作ったりして、なんとかしのいでいる」(前出・制作プロダクション代表)

 テレビプロデューサーで上智大学非常勤講師の鎮目博道氏は、逆風が吹き続けるドキュメンタリー制作現場は疲弊しきっていると言う。

「かなり前からドキュメンタリー枠は減っています。残っている番組も放送時間帯が悪くなっていて、ゴールデンやプライムタイムのドキュメンタリーはほとんどありません。それは歴史的に、ドキュメンタリーは視聴率が取れないとされ、スポンサーが付きにくいから。それで各局ともドキュメンタリー番組を隅に追いやり、制作費も下げられている。10年単位で見たらかつて1千万円だった制作費が500万円近くにまで下がっています。それなのに逆にコンプライアンスなどのチェックは厳しくなり、追撮(撮り直し)が増えて、さらに経費がかかるようになってしまった。だから民放ドキュメンタリーでは儲けはほとんど出ません。赤字覚悟で引き受ける制作会社もある。そこに追い打ちをかけたのがコロナだったというわけです」

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