(週刊朝日2021年12月10日号より)
(週刊朝日2021年12月10日号より)

 食事はガスで調理できたほか、非常食などを利用しながらなんとか対応したが、電気が復旧するまでの3日間は3食とも職員が5階までの上り下りを繰り返した。これらの教訓から、同施設では自家発電への取り組みを始めた。

 敷地内に、グループ内の他の事業所も活用できるような、自家消費型の大型太陽光発電設備を導入し、少なくとも3日程度は自家発電できるようにするという。

 一方、業者に依頼して倒れた樹木を調べると、ほとんどの木の中が腐っていた。再び倒木の恐れがあるとして、土地所有者と協議し、ケアハウスを取り囲むほとんどの枯れ木を伐採した。

 同市内の「ケアハウス城山台ソラール」も斜面地に位置しており、岩盤上の鉄筋コンクリート造り。この施設の入居者からは「台風や大雨でも建物が頑丈だから安心。何かあれば職員がすぐに対応してくれる」と信頼されている。大型台風の接近が予測された際に入居者の家族が「自身の避難目的」で宿泊した例があるという。

「リエゾン長崎」(同市)は、道路からやや高い位置にあり、降雨による被害は少ないと想定している。自家発電機もあるが、1時間程度しか持たないので、小型の発電機を購入し、ナースコールだけはつながるようにしている。

 半年に1回の消防訓練時に合わせての避難訓練や、認知症の人が多いところでは訓練時に近所の人に声をかけて、見守りをしてもらっているところもある。

(週刊朝日2021年12月10日号より)
(週刊朝日2021年12月10日号より)

 山口県岩国市の「ケアハウス秀東館」では、3年前の豪雨で近隣河川の堤防が決壊し、浸水被害にあった施設もあった。最近は、定期的に実施する火災想定の避難訓練時に、水害も含めた日中の避難場所への移動訓練も行っている。

 施設利用者には、夜間は土手より高い位置にある2~4階の各室にいるようお願いしている。備蓄品(3日分の食料品・介護用品など)や土嚢(どのう)の準備も完了しているという。

 秀東館の特養も、ケアハウスからそれほど遠くない場所にあり、同じ河川の近くにある。3年前の災害時には水位が上がってきて午前3時にサイレンが鳴り、特養からケアハウスに移って難を逃れた。

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