佐賀県大町町の順天堂病院は水につかって孤立した
佐賀県大町町の順天堂病院は水につかって孤立した

 毎年のように水害に見舞われる日本。近年は気候変動の影響などで、降雨量が過去の記録を上回るケースも相次いでおり、土砂災害などによる大きな被害も出ている。介護福祉士でもあるライター・栗原道子さんが、水害に強いケアハウスを紹介する。

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(週刊朝日2021年12月10日号より)
(週刊朝日2021年12月10日号より)

 2019年10月の台風19号は、100人を超す死者・行方不明者を出した。多くの河川で堤防が決壊し、3万戸超が全半壊した。昨年も九州地方を中心に、9月の台風の影響で大きな被害が出ている。

 そして今年も、西日本(近畿、中国、四国、九州北部・南部)を中心に、台風や大雨による被害が多数出た。

 気象庁によると、西日本の8月の降水量は平年の3.31倍で、1946年の統計開始以降、同月として過去最多だった。関東甲信地方などでも同月の最多を更新。同月14日には、佐賀県嬉野市で24時間降水量が555.5ミリを観測し、観測史上1位の値を更新するなど記録的な大雨となった。

 水害による高齢者施設の被害では、16年9月に、岩手県岩泉町で小本(おもと)川が氾濫(はんらん)し、近くに立っていた高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の施設内に土砂が流れ込み、入所者9人が犠牲となった。当時、避難計画が作られていないことが指摘された。

 昨年7月に西日本を襲った豪雨では、大分県日田市の高齢者福祉施設「安寿苑」の裏山が崩れ、施設3棟が全壊・床上浸水した。入所者や職員は避難しており、無事だった。

 今年の8月の大雨では、厚生労働省の発表によると、長野、広島、福岡、佐賀各県の有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)といった施設で、床上浸水などの被害が確認された。では、高齢者施設では、どんな備えをしているのか。いくつかのケアハウスに尋ねてみた。

 まずは、傾斜地が多く、斜面に住宅や施設が立ち並び、過去に大規模な水害や台風被害も起きている長崎市の例から。

 同市のケアハウス「さくらの里」は、昨年9月の台風10号で、施設を取り囲む木々が倒れて断線し、その後3日間の停電。飲料水やトイレの水は、地下水をモーターでくみ上げる仕組みのため、停電に伴いストップしてしまった。そのため、トイレの洗浄用に、風呂にためてある水をペットボトルなどに詰め、1~5階の約50部屋に職員が階段で運んだ。

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