■愛知の私立文系は南山が人気、九州は西南のほか、APUも

 愛知の私立文系では南山が人気だ。愛知の有名私大グループ愛愛名中(愛知、愛知学院、名城、中京)とのダブル合格を見ると、強さがわかる。外国語学部や国際教養学部が人気を集めているほか、学部を問わず全学生が英語で学べる授業を受講できるなど、国際教育を受けたい学生のニーズに応えている。

「志願のきっかけは高校教員や家族・親戚からの薦めという人が多い。国公立大志向が強い愛知で、併願校になっている」(入試課担当者)

 これに食らいつこうとしているのが、愛知だ。12年に名古屋駅近くに新キャンパスを開設。経済学部や経営学部など主な学部を移転させ、教育改革に取り組む。大学関係者はこう語る。

「名古屋駅ではリニアの開発も進み、社会の動きを肌で感じられる。経済・経営学部で南山との差はないと考えている」

 最近は予備校関係者から、「愛知学院の人気が低下した」という指摘もある。ダブル合格を見ると、愛知学院を選ぶ受験生は少なく、偏差値も少し低い。その結果、南山と愛知学院を入れ替えた「南愛名中」というグループも出てきて、大学の序列に変化が見られる。

 九州の私大では西南学院が人気を集める。国際性を重視した教育を進めており、国際交流協定校は33カ国102大学。就職に定評があり、約半数が大企業に就職する。

 この中でひそかに人気を高めるのは大分の立命館アジア太平洋(APU)だ。00年に創設された国際系の大学で、教員と学生の半数が外国籍だ。卒業生もアップルやアクセンチュアなど有名企業に多数就職している。

 長崎市の高校に通っていた安永萌恵さんはAPUだけを受験し、国際経営学部に今年入学。選んだ理由についてこう語る。

「英語と経営を学びたく志望した。コロナ禍でリモート授業になったが、中国や韓国の学生とディスカッションしたり、デモに参加したというアメリカ人とも意見交換ができたりして、価値観を広げることができている」

 九州の大手予備校でもAPUを積極的に薦める動きが出ている。九州でも一波乱起きそうだ。(本誌・吉崎洋夫、松岡瑛理)

週刊朝日  2020年10月9日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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