神奈川大は11%増。4月に国際日本学部の新設、2021年度にみなとみらいキャンパスの開設など、話題が絶えない。さらに小林さんは指摘する。

「横浜市、藤沢市、横須賀市など、地元の受験生が東京に行かず、神奈川大へ行く。首都圏の中での地元志向ですね」

 首都圏以外の地域に目を転じると、東海エリアでは、難関の南山大が昨年比10%減と苦戦したのに対し、名城大、中京大は堅調、愛知学院大は14%増となった。ここでも安全志向が表れたとみられる。

 関西の難関私大では、関関同立のうち、関西、関西学院、同志社の3大学は昨年比10%前後志願者が減った。一方で立命館大が人気を集めた。入学センター入試広報課の冨田耕平さんはこう言う。

「5教科型、7科目型のセンター利用方式の出願が増えていたので、安全志向から国公立の併願校として選ばれたと思います。また、今年から経済学部などで複数学科の併願受験をできるようにしたことも全体を押し上げました」

 新設学部が全体の志願者増に貢献した大学もある。前出の神奈川大の国際日本学部は3千人の志願者を集めた。武庫川女子大は食物栄養科学部など3学部を新設し、大学全体の志願者が昨年比18%増となった。前出の安田さんは次のように分析する。

「基本的には、新設学部は人気を集めていると思います。成蹊大は経済学部経済経営学科を経済学部(2学科)と新設の経営学部(1学科)にしました。全体の志願者数は減っていますが、経営学部には人気が集まっています。この新設がなかったら、全体ではもっと減っていたと思いますよ」

 新設学部・学科で重要なのは、時流に合っていること。安田さんは「近年は女子大の社会系学部が増えている」と指摘。例えば、18年には昭和女子大グローバルビジネス学部が会計ファイナンス学科を設置し、今年も共立女子大のビジネス学部や武庫川女子大の経営学部が新設される。小林さんは分析する。

「女性にとっての生き方、キャリアを見つけるという意味で、大学で学ぶことも文学や家政学などの教養から、実務的で、実社会に即したものにシフトする流れがあるのでしょう。そうしないと、共学に学生をとられるという女子大のロジックはあるかと思います」

 来年度は共通テスト初年度。安田さんは、安全志向が続くとみている。

「今年度のセンター試験は、文理とも総合型の平均点が20点前後下がりました。センターは平均6割をめどにつくるところ、共通テストは平均5割をめどと言われている。できる、できないで、学生の二極化が進むでしょう。安全志向の傾向が強まり、偏差値が高いところはますます狙い目になると思います」

 臆せず挑んだ受験生の努力が実を結びそうだ。(本誌・緒方麦)

週刊朝日  2020年3月6日号