「最終的に財務省理財局が引き取って答えていたが、国交省の慌てぶりから察するに、菅さんが根回しもせずにぶちあげたのではないかと思った」(野党議員)

 先の自民党幹部はこう解説する。

「菅氏が急に50カ所のホテル新設を国策のようにぶちあげた裏にはIRがあったのではないか。しかし、安倍首相はホテル誘致の詳細を知らされておらず、不愉快だとなった。秋元容疑者、下地議員と、検察は意図的に菅氏と近い人脈を狙い撃ちにしたように感じる。わかりやすく言うと、安倍周辺と菅さんの暗闘だよ」

 菅氏と親しい政治ジャーナリストはこう話す。

「確かに2人の関係は、微妙になってはいるようですね。官房長官を7年余も続けているうちに、いつの間にか菅さんの力が上がりすぎたんです。それに対して、嫉妬を抱く、安倍さんの周辺もいるわけです」

 長期政権で官邸の力学も変化してきたという。

「菅氏と共に官邸を牛耳ってきた首相秘書官の今井尚哉氏との関係も隙間風が吹いている。今井氏は今では首相補佐官も兼務し、格がぐーんと上がった。秘書官と補佐官を兼務することによって、職務権限も増え、官邸内で発言力も大きくなっている。安倍首相を守るために、予算編成後、『桜を見る会』、カジノ疑獄など一連のスキャンダルの責任を菅さんになすり付けようとする動きも官邸内にはある。カジノでは安倍首相の側近、閣僚の名も出ていますからね」(前出の自民党幹部)

 予算編成後、安倍首相は内閣改造に踏み切るとの観測も出ている。

「次の官房長官として名前が挙がっているのは、安倍さんの盟友・甘利明氏、出身派閥の側近・下村博文氏、加藤勝信厚生労働相ら。加藤氏は安倍首相の母・洋子さんが夫人の友人でもある加藤六月氏の娘婿。財務省出身でそつもない。加藤氏は安倍さんが唯一、育てた人材で、菅氏の後釜の有力候補です」(官邸関係者)

 しかし、角谷氏は菅外しは大きなリスクが伴うと警告する。

「大番頭の菅さんが辞めたら内閣は瓦解すると思いますよ。安倍、菅、二階(俊博・幹事長)、麻生の一角が崩れると、鉄板の関係が崩れる。そうなれば、安倍内閣の求心力がガクンと下がり、レームダック化する危険性がある」

 カジノ疑獄が拡大していけば、安倍政権の終わりの始まりとなるのだろうか。(今西憲之/本誌・上田耕司)

週刊朝日  2020年1月24日号

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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