このようにして怒りを抑えた後にも、やっておくべきことがある。一つは、「怒りの温度計」という。

「自分の怒りを数値化し、コントロールする方法です。怒りの数値を温度計のように、これは5度、10度などと『見える化』するのです。気温でも血圧でも数値がわかれば、その後の対策を立てることができます」

 怒りの段階を自分で測れるようになると、目の前の怒りに対処しやすくなるという。

 同様に、怒りを記録する「アンガーログ」も有効な方法として勧めている。

「自分は怒りっぽいと自覚している人でも、いつ何に怒りを感じたかを思い出そうとすると、覚えていないことが少なくありません。そこで役立つのが怒りを記録する『アンガーログ』です」

 アンガーログは、怒りを感じるたびにその場でノートやスマートフォンに記録すること。項目は、日時、場所、出来事、怒りの強さ──など。全部書けなくても、書けるところだけで構わない。書いている最中に分析や反省はしない。記録を続けることで、自分が何に対して怒りを感じやすいのかが見えてくるという。

 そもそも私たちはなぜ怒るのか。安藤さんは私たちが持つ、ある考え方に着目する。

「私たちを怒らせているものは、自分の中にある『べき』です。『べき』は自分の希望、願望、欲求を象徴する言葉です。私たちは自分の理想とする『べき』が目の前の現実で裏切られると、怒りの感情を持ちます。『ルールは守るべき』『会社はこうあるべき』など、私たちは多くの『べき』を持っています。私たちの行動のほとんどは、この『べき』に基づいており、そして、イラッとすることの裏には必ず『べき』が隠れています」

 安藤さんは、「『べき』の三重丸」を持つことが重要だという。

「自分の持つ『べき』とうまく付き合うために、イラッとするたびに心の中に三重丸を想像し、描いてみてください」

 三重丸の中心の円が、許せるゾーン(1)。ここは自分の思う「べき」に収まる範囲。そしてその周りにあるのが、まあ許せるゾーン(2)。自分とは少し違うが許容できる範囲。そして、一番外側にあるのが、許せないゾーン(3)となる。これはもう許容できないという範囲だ。

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怒りはマイナスだけではない