川合さんは、疑似運転を体験できるドライブシミュレーターを用いた実験をしたことがある。結果は、高齢者は運転中に赤信号が連続すると、攻撃性(怒り)が高まるというものだった。

 ただ、川合さんは、「高齢者はキレやすい」と短絡的にみることには、根本的な疑問を感じているという。

 2017年版の犯罪白書によると、年齢層別の刑法犯検挙者数で最も多いのは65歳以上で約4万7千人。20年間で約3・7倍となっており、たしかに数は増えている。しかし、人口比でみると、逆に65歳以上の検挙者の割合は最も小さくなっている。

 川合さんは、

「高齢者は我慢が足らず、思いどおりにならないとすぐ暴力を振るうという論調には違和感を覚える。ことさら『老人は社会悪』といった表現で言うのは、今の世の中に高齢者をたたきたい気分があるからではないか。そうした風潮は、世代間の分断を強化することにつながる。豊かな社会ではない」

 と指摘する。

 中高年以上の人たちが、キレて暴走しないためにはどうすればよいのか。

 日本アンガーマネジメント協会代表理事で、日本のアンガーマネジメントの第一人者の安藤俊介さんに聞いた。

「怒ることは悪いことではありません。マイナスな怒りにならないように線を引けば良いのです。アンガーマネジメントでは怒ることは構わないと考えています。その上で、怒るときには、他人を傷つけない、自分を傷つけない、モノを壊さない、という三つのルールを守って怒れるようになろうと説いています」

 それでは、具体的にはどのような行動で怒りをコントロールすればいいのか。まずは、カッとなったり、イラッとしたりした瞬間は、どうすればいいか。

「頭にきたときに絶対にやってはいけないのが反射的な言動です。怒りに任せて発した言葉で人間関係に傷が入ることや、相手も売り言葉に買い言葉で応戦し、互いに怒りがエスカレートしてしまうことがあります」

 安藤さんはこう指摘した上で、

「怒りのピークは、怒りを感じてから長くても6秒程度といわれています。とはいえ、何もせずにただ6秒じっと待つのは簡単ではありません。アンガーマネジメントでは、6秒待つためにさまざまなテクニックがありますが、一番簡単な方法は深呼吸をすることです。目の前の怒りからいったん意識をそらし、冷静になるために6秒を使うことが大切です」

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「怒りの温度計」と「アンガーログ」が有効