(2)不安・焦燥感


 技術の進歩に追いつけない不安。経済的不安。寝たきりになるかもしれないという不安。こうした様々な不安があると、焦燥感にさいなまれキレやすくなる。

(3)孤独感・疎外感
 核家族化によって1人暮らしや夫婦2人暮らしが増え、孤独感にさいなまれやすい。高齢者の知恵を役立てる機会が減り、自分が必要とされている実感を持てなくなった。年金支給額が減額されるという報道ひとつ取ってみても、むしろ自分が社会にとって厄介者になっているように感じる。

(4)あきらめきれない高齢者の増加
 アンチエイジングや、高齢者のセックス特集など、いくつになっても大丈夫という世の中の風潮になっている。しかし現実はそう甘くない。70、80になっても現役同様という人は稀で、理想と現実のギャップを味わうことがほとんどだ。それでも、あきらめきれず、ジレンマにさいなまれる。

 高齢者が、不安や焦燥感が原因でキレることについて、片田さんは象徴的な事件を挙げる。

 9月29日、神戸市営地下鉄新長田駅構内で、78歳の男が駅員に対しひざ蹴りなどをしたとして公務執行妨害の疑いで逮捕された事件だ。男は改札機に敬老パスを入れてしまい、駆け付けた駅員が「改札機が壊れてしまう」と注意したところ逆ギレ。駅員の胸倉をつかみひざ蹴りし、さらに別の男性駅員にもひざ蹴りをしたという。

「この行動は、テクノロジーの進歩についていけないがゆえの不安・焦燥感によると考えられる。切符を買うこと一つを取ってみても、自分が時代についていけないことへの不安が焦りを生み、キレる行動につながっていく」(片田さん)

 前出の川合さんは、中高年がキレることを、車のアクセルとブレーキに例える。

「怒りの表出はアクセルとブレーキで例えられる。運転中イライラしたり、それこそあおり運転をしたりする人は、アクセルの踏み方が激しい人なのだろう。心も体もすぐアクセルを踏み込んでしまう。一方で、年齢を重ねるとブレーキの利きが鈍くなってくる。このアクセルとブレーキのバランスは、育ちや環境などさまざまな要因が絡む。特に高齢者はブレーキの利きが鈍るケースがほとんどだ」

次のページ
ルールを守って怒るアンガーマネージメントとは