高齢者だけでなく、一人暮らしでペットを飼う人も「もしも」に陥ることを想定しておいたほうがいい。前出の香取さんは30代、40代で急逝した飼い主を何人も見てきたという。
例えば、自宅のマンションで猫2匹と暮らしていた40代のA子さん。がんを患い、猫たちの身を案じつつ、みるみる体力を奪われ、そのまま急逝。猫好きの知人のB子さんがしばらくA子さんのマンションに通い、猫の世話をしていたが、ある日A子さんの兄がやってきてこう言い放った。
「妹のマンションを売ることになった。この2匹は保健所に持っていくから」
幸いこのケースでは里親が見つかったものの、悲しいかな、残されたペットの世話は、家族や親族の善意・厚意をあてにできないのが現実のようだ。
「本当にペットのことを思うのならば、後を引き受けてくれる人を見つけ、法律的に有効な書面で、ある程度のお金を残さなければいけません」(香取さん)
では、残されたペットにどのくらいのお金が必要なのか。ペットの保険を手がけるアニコム損害保険の調査によると、1年間に犬にかかる費用は平均44万円、猫は20万円。高齢化にともない、さらに高額な医療費が必要になる場合もある。
必要なのはお金だけではない。そのお金がペットに使われるように、誰かに託したり、管理してもらったりする必要がある。
「ちよだニャンとなる会」の監事を務める川合会計事務所の公認会計士・川合忠信さんによると、ペットに確実にお金を残すためには、大きく以下の三つの方法があるという。
【1】負担付遺贈 つまり遺言。日本の法律ではペットに遺言を残すことができないため、残されたペットを相手への「負担」として、それを引き受けることを条件にお金を残す旨を遺言書に書く。信頼できる人に意思を伝え、「もしものときに、この子をお願いね」と承諾を取ること、自筆ではなく、公証人が作成する「公正証書遺言」にすることが大切だ。
費用は公証人への手数料が数万円ほど。一人暮らしで猫を飼っている前出の香取さんはこの方法を選び、信頼できる友人を受取人にし、公正証書遺言を作ったという。