夢は東京五輪の聖火ランナー!(撮影/伊ケ崎忍)
夢は東京五輪の聖火ランナー!(撮影/伊ケ崎忍)

 多摩川の土手を軽やかに走る中野陽子(81)さん。陸上競技の80~84歳のクラスで六つの世界記録を持つ。今年の東京マラソンで、4時間11分45秒を記録し、世界のトップに立った。世界マスターズ陸上でも1万メートルから800メートルまでの5部門で世界一。5千メートルの世界記録は先月、気温36度の中を走って達成した。

「東京オリンピックまでは記録を目指したい」

 陸上を始めたのは70歳のとき。それまでは毎年スキーを楽しんでいた。しかし、70歳になると仲間はゲレンデに行かなくなり、経済的負担も大きいのでやめることにした。

「でも、何か運動の趣味を続けたかった。時間や場所の制約がなく、一人でもできるランニングがいいかなと思いました」

 きっかけは義妹たちとのハワイ旅行の計画。ならば、ホノルルマラソンに出場しようという話になった。スポーツ用品店の講習会に参加すると、初心者が6カ月でフルマラソンを5時間以内で走るための練習が組まれていた。10分走って10分歩くという練習から始めた。

「練習は言われたとおりに。急に長い距離を速く走るから故障したり苦しくなったりする。苦しくない程度の練習を少しずつ積み重ねていきました」

 その成果あってホノルルマラソンは完走。半年後には「利尻島一周悠遊覧人G大会」で約55キロを走った。隣の礼文島に咲くレブンウスユキソウが見たくて一人旅を計画し、行くなら大会も、とエントリーした。

「歩いてもいいと気負わずに走ったらゴールできました。前夜祭、後夜祭も楽しく、全国から集まった仲間との出会いもありました」

 以来、この大会には8回出場している。

 そして、中野さんは75歳で、市民ランナーあこがれの「サロマ湖100kmウルトラマラソン」に挑戦した。早朝5時にスタートし、制限時間は13時間、一般の部は完走率60~70%と、フルよりも綿密な調整が必要なレースだ。

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