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円安で億ションを買いあさり、地価上昇支える外国人
マンション購入に熱心な「不動産肉食」は女性ばかりでない。外国人も旺盛だ。 円高が2割進むと、億ションなら2千万円もの「値引き効果」がある。 3月にあった国土交通省の公示地価の記者発表。アベノミクスを背景に地価が値上がりした地域について説明が続くと、記者たちの間に「あれあれ?」という空気が流れた。都区部の住宅地ナンバー1が、大地震の際には液状化も懸念される東京湾岸の豊洲4丁目だったからだ。 豊洲4丁目の住宅地の公示地価は前年比で2・8%上昇し、都区部の住宅地では最大の値上がり幅だった。 このエリアに建設中のタワーマンションに、思わぬ「バブル」が起きている。米国の大手不動産会社ジョーンズ ラング ラサールが2月、シンガポールで華僑系の富裕層に対して商談会を開催。大変な活況だったのだ。 ◆次々と「予約済み」 販売されたのは、超豪華仕様の億ション。専門スタッフによる高級ホテル並みの24時間ルームサービスや、リネン交換などのハウスキーピング、ディナークルーズやナイトヘリの手配など、富裕層の心をくすぐる仕様が満載だ。 会場には2日間で200人以上が訪れ、即決が相次いだ。一度に5戸を申し込む顧客もいたという。1億数千万円もする物件に次々と赤色の「RESERVED」(予約済み)のシールが貼られ、販売した65戸のうち30戸近くがその日に売れた。 シンガポールで同時期に売られた東京・六本木のタワーマンションも、半数以上が1億円を超すが好評だった。駐在するIT企業の現地法人幹部の妻は、 「シンガポールは国土が狭く、気の利いたマンションは数千万円する。それなら日本の価格とそう違わない。六本木はセレブな街として、ここでも有名です」 と、人気の背景を語った。 日本では崩壊した「不動産神話」が、海外の富裕層には健在だ。地価上昇を外国人が支えている構図が見える。後押しをするのが円安だ。 1億円のマンションなら、昨年までの1ドル=80円前後の為替レートでは125万ドルした。だが円安が進み、96円前後となった現在なら104万ドルと、2割も安く買える。シンガポールでの商談会でも、物件価格は円とシンガポールドルの両方で表示され、関心を誘っていた。 ◆中国から不動産ツアー 東京の現地モデルルームの来訪者にも、外国人の姿が目立つ。六本木近くにある欧州系証券会社の営業マンは、 「外資系社員がここまでアグレッシブになれるのは、為替という支援があるからです」 と明かす。中国や台湾では、日本への不動産投資を呼びかける団体旅行も開催され、新聞には「不動産ツアー」の広告があふれている。成田空港や羽田空港に近い立地も人気。昨年まで日本への投資が盛り上がらなかったのは、一般には「尖閣問題の影響」などとされたが、本音は円高が壁だったのだ。 外国人に人気の土地は、豊洲や六本木のほか、麻布、青山、赤坂を結ぶ「3Aゾーン」がある。高級賃貸マンションが林立し、周辺のレストランでは日本語ができない客にも店員が動じない。周辺は江戸時代は武家屋敷で、明治以降は大使館がひしめく高級住宅地となった。迎賓館や皇室の御用地もある。 このエリアの開発を担当した財閥系不動産の営業マンは言う。 「リーマン・ショック後、外資系企業が撤退し、高級賃貸の経営が苦しくなりましたが、分譲はそうでもありません」 それはなぜか? 『マンションは10年で買い替えなさい 人口減少時代の新・住宅すごろく』(朝日新書)を書いた不動産情報会社アトラクターズ・ラボの沖有人社長は、こう説明する。 「外国人が好む3Aゾーンは値下がりしにくく、住宅すごろくで10年で買い替えて損をしない代表的なエリアです」 ◆地域ごと「外資系」化 沖氏によると、分譲マンションは1坪当たり年間4万円程度ずつ資産価値が落ちていくパターンが多い。だが、高級物件が多いこの3Aゾーンは、値下がり率はかなり低くなる。人気はあるのに新規物件があまり供給されず、需要が旺盛なため「値下がりしにくい」という共通認識が広がっているそうだ。 外資系金融機関に勤める中年男性は、 「本国から来た上司は、外国人エグゼクティブの高級住宅がある3Aゾーン以外は『トウキョウではない』と言っていたが、リーマン・ショックでそこまで強気ではなくなった」 と話す。その結果、豊洲などにも外国人が目立ってきた。高層マンションに囲まれた豊洲北小学校では、親の出身地が中国、韓国、ロシア……と幅広く、「外資系」化が進んでいる。ある大型オフィスビルにも韓国勢が投資し、業界で注目された。 「大型ビルは秋葉原、豊洲、品川あたりを結ぶゾーンに数多くできている」 と沖氏。実際、新興住宅地と思われがちな豊洲だが、朝の東京メトロ豊洲駅では降りる客のほうが圧倒的に多く、むしろオフィス街化している。東京証券取引所グループと大阪証券取引所が統合してできた日本取引所グループは、主力コンピューターをこの地域に置いた。その結果、外資系証券会社などの情報拠点も集まり始めている。 主要都市の地価上昇率上位5地点を見ると、東京では大使館が数多く集まっている麻布エリアが4、5位に入った(表)。大阪では大阪市内の都心で地価上昇が目立つ。やはり、数千万円以上の億ションが増えたエリアだ。 (編集部 山下努) ◆主な都市の地価上昇率「上位5地点」 所在地 価格(円/平方メートル) 上昇率(%) ◎東京 <住宅地> 1 江東区豊洲4-11-30 44万1千 2.8 2 葛飾区東金町2-6-18 30万 1.7 3 北区赤羽南1-11-7 95万8千 1.1 4 港区南麻布1-27-33 119万 0.8 5 港区元麻布3-6-2 127万 0.8 <商業地> 1 台東区浅草1-1-2 181万 9.0 2 墨田区押上1-24-1 70万4千 6.5 3 足立区千住旭町40-22 80万 5.0 4 足立区千住2-57-3 162万 2.5 5 足立区千住旭町20-9 41万5千 2.0 ◎愛知 <住宅地> 1 名古屋市千種区清住町2-38-1 32万 6.7 2 刈谷市原崎町6-608 15万1千 5.6 3 安城市緑町1-12-5 14万 5.3 4 安城市三河安城本町1-17-3 14万2千 5.2 5 岡崎市宮地町郷西23-1 10万2千 5.2 <商業地> 1 名古屋市昭和区隼人町5-1 36万3千 5.2 2 一宮市栄3-7-18 23万3千 5.0 3 岡崎市羽根町東荒子79-1 17万2千 4.9 4 刈谷市桜町1-24 19万9千 4.7 5 刈谷市南桜町1-54-1 16万6千 4.4 ◎大阪 <住宅地> 1 大阪市中央区上町1-15-15 44万9千 2.0 2 大阪市北区紅梅町6-6 45万9千 1.8 3 大阪市阿倍野区文の里3-7-30 34万8千 1.8 4 大阪市阿倍野区桃ケ池町2-10-21 30万4千 1.7 5 大阪市中央区瓦屋町1-7-8 37万 1.6 <商業地> 1 大阪市北区梅田1-8-17 770万 4.1 2 大阪市北区中之島3-2-18 148万 2.8 3 大阪市北区角田町7-10 723万 2.6 4 大阪市中央区心斎橋筋2-8-5 487万 2.5 5 大阪市西区南堀江4-20-11 31万2千 2.3 ◎福岡 <住宅地> 1 福岡市早良区高取2-5-10 25万9千 10.7 2 福岡市早良区西新2-11-9 29万5千 10.1 3 福岡市早良区室見5-7-5 19万7千 7.1 4 福岡市早良区室見1-25-9 22万1千 6.8 5 福岡市早良区室見3-9-22 17万6千 6.7 <商業地> 1 福岡市早良区西新2-1-3 38万1千 8.9 2 福岡市早良区曙2-11-23 22万 6.3 3 福岡市博多区博多駅前3-2-1 246万 6.0 4 福岡市博多区博多駅前2-8-11 133万 5.6 5 福岡市早良区高取1-1-42 33万5千 5.3 ※所在地の表示は各都府県の発表に従った。東京は区部についてまとめた。
