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20代でアパート3棟の家主…イマドキ女子がお金に執着する理由
20代でアパート3棟の家主…イマドキ女子がお金に執着する理由
づんさんがインスタグラムで日々公開する家計簿  男も会社もあてにせず、信じているのはお金だけ――月々の手取りから食費まで家計簿をSNSでつまびらかにし、仲間と励まし合いながら節約に励む。そんな「円貯め(エンタメ)」世代女子とは……?  インスタグラムで公開していた家計簿が話題を呼んで書籍にもなった、島根県在住の主婦“づん”さん(30歳・既婚・5人暮らし)も、SNSを使うと節約効果が高まると感じている。2年前から始めた家計簿の投稿が口コミで広がり、フォロワー数が急増。現在5.7万人に上るフォロワーを持つ人気アカウントにまで成長した。10月24日に3冊目となる著書『毎日が幸せになる「づんの家計簿」書けば貯まるお金ノート』が発売される。  もともと貯金が苦手で、家計簿をつけ始めても挫折の連続だったというづんさん。長男を出産し、学資保険に加入する際、生活費を把握できていない自分に危機感を持ち、自分なりのスタイルで家計簿をつけ始めたのが最初だ。友人からのリクエストを機に、「#家計簿」のタグを付けて投稿し始めると、半年足らずで1万人ほどフォロワーが増加。「もっと書き方を知りたい」というコメントが集まり、具体的な書き方や集計の仕方など、細かい点まで投稿し始めると、さらにフォロワー数が膨れ上がった。づんさんの投稿が、「励みになる」という声も多い。 「家計簿を投稿し始めてから、人に見られているという意識も働き、“報告できるようにお金を使おう”という気持ちが強くなりました。それを2年間続けるうちに、気づけば家計の把握は習慣に。今では歯磨きと同じくらい、やらないと気持ち悪いんです(笑)」  節約アドバイザーの和田由貴さんは、今の20~30代の節約についてこう分析する。 「お金に対して現実的で、お金について学びたいという欲求も強い。賢い使い方を研究している分、使うべきところはしっかり使うし、締めるところは締める。メリハリのあるお金の使い方をするのが上手です」  だが、そもそもイマドキ女子たちは、なぜこうもお金に執着するのか──。  背景には、将来に対する漠然とした不安が共通して存在するようなのだ。実は、「富女子」たちの本当の目的は「1千万円の貯蓄」ではない。それを原資に不動産などに投資し、給与だけでなく不労所得を得るのが目的だ。  社会人1年目からの5年間で1千万円を貯めた坂田香さん(仮名・30歳・既婚・2人暮らし)は、営業職のマネジャーを務めるキャリアウーマンでありながら、アパート3棟のオーナーでもある。1棟目は20歳のときに家族で購入した共同資産(4分の1が自分名義)。2棟目は27歳のとき、3棟目は29歳のときに、富女子会に通って貯めた資金を元手に自分で購入した。アパートの大家なら、ローリスク・ミドルリターンで、“身の丈に合った投資”だと考えたのが理由だ。  初めて自分で購入した2棟目のアパートは、社会人1年目から5年で貯めた1千万円を元手に、4千万円で購入。残り3千万円は、“不動産賃貸業”の創業支援として、日本政策金融公庫から借りたものだ。東急東横線沿線の横浜市内の駅から徒歩10分の場所にある、全4部屋のアパートは満室。月々16万円のローンを返済する一方で、24万円の家賃収入を得ている。  3棟目に手に入れた物件は、都心の京王線沿線の駅から徒歩10分という好立地。店舗用1部屋、居住用4部屋の5室で構成される物件だ。貯金750万円を頭金に、6750万円で購入した。残り6千万円は、1棟目を担保に、銀行から借りた。月々25万円のローンを返すが、こちらも全部屋満室。月40万円の家賃収入を得て、黒字状態が続いている。 「アパート100室を持つのが目標。これから子どもは2人欲しいし、子どもには我慢をさせず、好きなことをさせてあげたい。夫と私の老後資金も入れて冷静に計算すると、不動産投資で月々200万円は得られるように動いていきたい」  6年かけて1千万円の貯蓄に成功した保育士の木村幸枝さん(仮名・28歳・独身・一人暮らし)も結婚するまでに、首都圏で不動産を1棟持つことを目指している。  不動産投資に興味のある若い女性は年々増加傾向にある。会員数が8万人を超える不動産投資サイト「楽待」(ファーストロジック)では、5年前に比べ、主婦の登録が約7倍に増加。インヴァランス(東京・渋谷)の調査では20~39歳で不動産投資に関心のある社会人の女性の半数以上が「老後の生活費のため」、約30%が「子どもの教育費のため」と回答している。 「このまま結婚しなかったら……」「今の会社もいつどうなるか……」「子どもの教育費にいくらかかるか……」「年金もあてにできないし……」──。  富女子たちに、貯蓄や投資の理由を聞けば、こんな声が次々と上がってくる。高価なブランド品を買ったり、豪邸に住んだりと、きらびやかな生活に憧れているわけでは決してない。手に入れたいのは、そこそこの生活水準と、路頭に迷わない将来。視点はあくまで、等身大の若い女性だ。 「自分の身は自分で守らなければ、という意識が特に強い世代」  世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは、20~30代の特徴についてこう分析する。終身雇用や年功序列が崩れ、会社にも社会にも頼れないことを肌身で感じてきた世代で、不況の時代しか知らない。 「いつどうなるかわからないという不安感が強い分、貯められるときにはしっかり貯めなければという感覚が強い。節約はもはや当たり前で、クーポンやポイントを駆使し、いかにお得に賢く節約できるかをゲーム感覚で楽しんでいる世代でもあります」  結婚相手に「養ってほしい」と考えていないことも、昨今の女子たちの特徴だ。富女子会に集まる女子たちも一様に、結婚相手は「自分より年収が低くても構わない」と発言する。 「普通に働いていてさえくれれば、相手の収入にはこだわりません。相手に頼らなくてもいいように、自分でお金のスキルを磨けばいい。そのためにも、お金について真剣に話せる仲間の存在は不可欠なんです」(木村さん)  お金で少しでも安心感を得たい──。先行きが不透明な今の時代、就職しても結婚しても、さらには貯蓄が1千万円を超えても、女子らの不安を拭える“確かなもの”はなかなか見当たらない。不安から女子は団結し、互いを鼓舞し、見えないゴールに向かってひたすら走る。その生き方に共感できるかどうかは別として、節約アイデアは役に立つ。イマドキの円貯め女子から学べることは大きそうだ。(本誌・松岡かすみ) ※週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋
週刊朝日 2017/10/31 11:30
SNSで家計簿公開! 5年で1000万円貯める“円貯め”女子
SNSで家計簿公開! 5年で1000万円貯める“円貯め”女子
給料40万円/手取り34万円前後の富女子の家計の例(独身、都内で一人暮らし)(週刊朝日 2017年11月3日号より)  イマドキ20~30代の女子たちの関心は、ブランド品やきらびやかな生活よりも貯蓄。月々の手取りから食費まで家計簿をSNSでつまびらかにし、仲間と励まし合いながら節約に励む。その姿に悲愴感はなく、どこか楽しそうだ。そんな「円貯め(エンタメ)」世代の実態に迫った。 「目標を立てて、それを達成するために動くことが好き。貯金も楽しみながら続けています」  都内で働く会社員、坂田香さん(仮名・30歳・既婚・2人暮らし)は、社会人1年目からの5年間で1千万円を貯めた。貯蓄を始めた当時の手取りは、月25万円前後。その中から、月々10万~15万円とボーナスを貯金に回し、コツコツと貯めた。  坂田さんが23歳のころから足しげく通うのが、ワイズアカデミー(東京・渋谷)が運営する、お金の貯め方や投資について勉強する「富女子会」。会の目標はズバリ、預金残高を5年で1千万円にすること。現在の会員数は約250人。入会金1万円、年会費1万円で、東京、大阪、山口を拠点に、20代後半~30代の女性が集まる。職業は会社員や公務員、フリーランスなどさまざまで、多くは年収が500万円以下だ。  入会すると、まず、現在の預金残高を元に、1千万円達成のための貯蓄計画を作成。勤務先から年収、月々の生活費の内訳、現在の貯蓄額、人生設計など経済状況を全てオープンにすることが求められる。さらに、5年の貯蓄計画は、会の参加者全員にコピーして配られ、講師や先輩らが厳しくチェックする。 「交際費を使いすぎじゃない?」「ボーナス月はもっと貯められるでしょ」  計画表に“甘え”が見られたり、曖昧な点があれば、同世代の“先輩”が即ツッコミ。生半可な姿勢では、“普通の女子”が5年で1千万円貯めるなんて夢のまた夢だから、参加者全員が一緒になって意見を言い合い、それぞれの具体的な貯蓄法を考える。 「そりゃ、最初はさすがに引きましたよ」  都内でウェブデザイナーとして働く山本美加さん(仮名/34歳・独身・一人暮らし)は、今年1月の入会時を振り返りながらこう笑う。  山本さんは、会で同世代の参加者らと、お互いの経済状況について話すうちに、勤務時間や内容に対して、自分の年収が低いことを痛感。「このままでは良くない」と一念発起して転職を決め、年収アップを実現させたばかりだ。転職前は月々5万円だった貯蓄額は、10万円へと倍増した。  着実に貯蓄を殖やしている山本さんだが、入会するまで給料のほとんどは、服や化粧品、雑貨などで消えていた。 「お金の教育なんて学校で受けていないし、恥ずかしくて周囲の人とも話せない。だから賢いお金の使い方って何だろうとずっと思っていました」  富女子会に入会してからは、5年で1千万円という目標達成のために家計簿をつけ、お金の流れを把握することからスタート。毎月のように買っていた服も、入会してからは一切買っていない。食費も極力抑えるため、月1万5千円の予算で自炊するよう心がけるという徹底ぶりだ。 「買う前に、本当に自分に必要かどうかを考え抜くようになって、これまで“欲しいもの”と“必要なもの”を混同していたことに気づきました。無駄遣いとはこういうことかと目からウロコ。お金について、とことんぶっちゃけて話せる場があったからこそ、転職もできたし、貯蓄もしっかりできるようになった。今ではなくてはならない、大切な場所です」  会に入会して7年目という木村幸枝さん(仮名・28歳・独身・一人暮らし)は、6年かけて1千万円の貯蓄に成功した。職業は保育士。月々の給料は手取り20万円前後で、その中から5万円を、“ないもの”と考えてボーナスと合わせて貯金してきた。だが、それでは目標達成が不可能だとわかると、勤務後から終電までの時間、キャバクラで働いて、月30万円を稼いで貯金に回したという。 「貯金途中の同世代と、励まし合いながら貯金できる。みんながいるから貯められるんだと思います」  収入が多くはない若いうちに1千万円を貯めると聞くと、爪に火をともすような節約生活を想像するが、不思議と悲愴感は皆無。富女子たちに共通するのは、節約スキルを共有して、楽しみながら貯金する「円貯め(エンタメ)」精神だ。その精神は、この会の入会者にとどまらない。お金について意見交換する場は、インターネット上にも広がっている。  ここ1~2年でじわじわと増えているのが、SNSでの自分の家計簿の投稿。経済状況が克明に記された家計簿の写真をSNSのインスタグラムで公開し、他人の意見を募る。インスタグラムならば実名や属性を明かさずに他人と交流できることも魅力の一つだ。  1年前に“貯蓄用”アカウントを開設した野村理恵さん(仮名・31歳・既婚・4人暮らし)も、その一人。実名のアカウントとは別に、貯蓄を殖やすための一手段として、家計簿を投稿するための匿名アカウントを作った。現在のフォロワー数は9400人に上る。実際の投稿の中から、節約技の一例を挙げてみよう。 「今月の家計、集計しました! 携帯を格安スマホに変えたら、何と8分の1の1200円に。通信状態も安定で、全くのノーストレスです。夫と私で、いきなり月1万5千円の節約になりました」  節約アドバイザーの和田由貴さんいわく、節約の最大のポイントは、「思い込みで使っているお金をいかに洗い出せるか」。  固定費ほど何も考えずに払いがちだが、なくても困らないものが潜んでいるケースがよく見られるという。 「なくてもいいものが当たり前になっているケースは、身の回りに意外と潜んでいるものです。面倒がらずに一度見直してみると、大幅な節約につながる可能性も少なくありません」  野村さんの通信費もこのケースといえそうだ。これに対するコメントは1日半で62件。 「格安スマホ、どこを選びましたか? 私も変えてみようかな」「格安スマホ、気になってましたが、ノーストレスでそこまでの節約になるなんて!」  さらに、以下のようなアイデア満載の節約情報がどしどし寄せられた。 「ニンテンドーDSの家計簿ソフト、年間のカード使用額を過去5年分のデータと比較できて便利ですよ☆」 「うちは毎月の貯蓄額を、手取り月収の25%って決めてます。毎月定額を給与振込口座から、金利が高めのネット専業銀行に移すのがオススメ!」 「生活費、住宅ローン、カードの引き落とし……と用途ごとに銀行口座を分けておくと、お金の流れが見えやすいですよ」  こうしたコメントには野村さんは丁寧に返信するように心がけている。 「フォロワーさんとのコメントを通した交流の中には、やりくりのノウハウが詰まっています。自分一人で家計簿とにらめっこしていたころより、2~3割は貯蓄額がアップしました」(本誌・松岡かすみ) ※週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋
週刊朝日 2017/10/31 11:30
ネットの高校「N高校」は教育界を変えるか
ネットの高校「N高校」は教育界を変えるか
N高校とは/学校法人角川ドワンゴ学園が運営。全国から入学可能でネットコースと通学コースがある。通学キャンパスは東京と大阪にあり、来年には名古屋や大宮などでも開校。各クラスに担任がおり、チャットツール「Slack」上で毎日ホームルームも行われる。部活はビデオゲーム「ウイニングイレブン」で戦うサッカー部や将棋部、美術部など。サッカー部の特別顧問は元サッカー日本代表の秋田豊さん。文化祭として10万人以上を動員するニコニコ超会議にブースを出す。写真は今年の入学式。東京・六本木の会場で生徒はヘッドマウントディスプレーを装着。沖縄本校の校長式辞などを仮想現実の中で体感した(写真:N高校提供) 昨年の音楽祭。さいたまスーパーアリーナで校歌「代数Nの方程式」を歌った。校歌はカラオケでも配信(写真:N高校提供) オンラインでの生授業では「なるほど!」の表示や挙手、質問もできる(写真:N高校提供) 「ネットの高校」として昨年開校したN高等学校。将来の夢につながる学びができるカリキュラムに惹かれ、異才が集結し始めている。日本の教育に風穴を開けられるか。  10月半ばの日曜日。東京・築地の高層ビルの一室から発声練習が聞こえてきた。声の主はN高等学校(N高)の男女30人。11月3日の音楽祭に向けた練習だ。音楽祭といえばクラス対抗の合唱を想像してしまうが、通信制の同校生徒は1、2期生あわせて全国に約4300人。当然「対抗」は無理なので、有志で校歌を歌う。会場はなんと「さいたまスーパーアリーナ」。動画配信サイトのニコニコ動画(ニコ動)のユーザーが歌や踊りを披露する「ニコニコ超パーティー」のステージに立つのだ。 「1万5千人の観客を前に歌うなんて、普通の学校じゃありえないでしょう」  大阪から日帰りで駆けつけた女子生徒はそう声を弾ませた。 「ネットの高校」というキャッチフレーズから、仮想の高校と誤解されることもあるが、N高は学校教育法第1条に定められたれっきとした「高等学校」だ。ニコ動を擁するドワンゴと出版大手のKADOKAWAが経営統合してできた「カドカワ」が、インターネット時代の新しい通信制高校として昨春開校した。  同校の最大の特徴は、高卒資格向けの勉強以外の“空き時間のカリキュラム”にある。 ●偏差値40台から70台も  高卒資格は、パソコンやスマホで映像授業を視聴して「確認テスト」を受け毎月ネットでリポートを提出。年5日程度、教室での対面授業を受ければ取れる。一方で空き時間には、プログラミングや語学、物語や音楽、ゲームの創作などの授業から好きなものを選べる。大学受験講座や中学の復習講座だってある。しかも教えるのはその道のプロたちだ。多くの授業はライブの双方向。もちろん挙手や質問もできる。  どんな生徒がいるのか。同校によると、通信制なので不登校経験者が半数以上だが、中学時代に生徒会や部活のリーダーだった子や、プログラミングコンテストで入賞し、IT企業でインターンとして働いている子など多士済々。学力も偏差値40近くから70超まで。通信制高校に10年以上勤めた経験があるN高校の奥平博一校長も驚いた。 「従来の通信制には『選ばざるを得なかったから来た』子が多かったですが、N高で目立つのは『自分からここを選んだ』という子です」 ●「評価軸も急速に変化」  多様性を絵に描いたような学校だが、さらに選択肢が広まった。通学希望の声を受け、今春からは通学コースを新設したのだ。すると既存の枠に収まりきらない「異才」や「異端児」たちが新たに仲間に加わった。  その一人、大野尚子さんは東大合格者数で全国の女子校トップに君臨する中高一貫の桜蔭に通っていた。大野さんによると、体調不良から通学がつらくなったのは中学2年の頃。ある時、医師に「受験一色になりがちな空気が合わなかったのでは」と言われ、息苦しさの理由がわかった気がした。  大野さんには、医師になる夢がある。両親はともに医師。日ごろから医療について話しているだけに、「精神疾患の診断には、脳波などの科学的データを取り入れるべき」「大好きな音楽を治療に役立てる方法を科学的に研究したい」など、見つめているのは医師になった先だ。そんな大野さんが欲しかったのは、進学のためだけではない学びだった。  桜蔭高校に進まないことには両親も反対し、自身も最後まで迷ったが、N高の存在を知り「これだ」と確信した。今では必修授業のほか、アクティブラーニング型授業を複数選択。作曲の授業も受け、校外の作曲教室にも通う。そんな日々に「N校に来たからこそです」と大野さんも満足げだ。  まだいる。同じく桜蔭出身、小林優子さんの目標は「声優」という。放送部の活動で制作したオリジナルドラマで、声で演じる面白さに目覚めた。  アニメやゲームなどにのめり込み、中学では勉強がおろそかになったが、勉強自体は嫌いではない。「自分のペースで学びたい」とN高に入り、半年で高1の範囲のリポートをすべて終わらせた。N高で「ゲーム・アニメ・声優」授業の選択も考えたが、いまは大学受験を第一に考えている。志望校は「どうせなら東大かな」。大学生になったら声優養成所に通う計画だ。  個人と組織の関係性が変わる中、どこの組織に属するかよりも、個人が何をやりたいか、どんな才能を磨いてきたかが問われる時代だ。「学校で学ぶべきことや評価軸も急速に変化している」と奥平校長。それゆえN高は、個々人が強みを見つけ、伸ばせるよう徹底してサポートする体制となっている。  取材中に授業ものぞいてみた。ディスカッションで一番発言していたのは田邉快哉(かいや)さん。実はつらい中学時代を過ごしていた。生徒を「クズ」や「ゴミ」呼ばわりする男性教師が怖くて登校が苦痛に。学校全体を覆う同調圧力にも違和感を覚え、別室登校となり勉強も遅れてしまった。  自信を失う中で支えとなったのは趣味の動画編集。高校進学時に親が望んだ先は公立高だったが、N高なら中学の復習授業がある、大好きな映像の勉強もできると知って、両親を説得した。田邉さんは「僕ははっきり言って学校の勉強は苦手。だからこそもっと職業に直接つながる勉強がしたかった」と話す。  いま、田邉さんが授業で学ぶのは映像制作やプログラミングだ。学外では「フリーランス映像ディレクター」の名刺を手に、仕事の請負も始めた。「いまは毎日『楽しい』が更新されている」という。 ●慶應藤沢や灘高と渡米  一方で、友達も増えた。N高の生徒は多種多様。同調圧力もない。趣味が同じ遠隔地の仲間とも校内コミュニケーションツールであるSlackを通じてつながる。「学校の教室の中だけで、気の合う仲間を見つけるのは大変だけど、ネットを使えば必ず仲間は見つかります」(田邉さん) “教室”はネットや校舎だけでなく世界にも広がる。将来を考えるには、様々な出会いや刺激も必要だ。宮下空唯(くう)さんが志望校を神奈川県立の上位校からN高に変更した最大の理由は、「スタンフォードプログラムに絶対行きたかったから」。  これはN高が提携する米スタンフォード大学が毎年夏の2週間、世界の14~17歳の高校生を対象に実施しているプログラム。宮下さんは前出の大野さんとともに英語の面接を突破。慶應義塾湘南藤沢高等部、灘高、早稲田実業学校高等部から来たメンバーと共に、カリフォルニアのキャンパスに足を踏み入れた。宮下さんは言う。 「見るものすべてスケールが大きくて驚きました。授業では仮想の国を作り上げるグループワークが特に面白くて、チリやインド、香港などから来た子たちとどういう経済や政治、軍事の仕組みや文化がいいか、語り合った。2回は無理だけど、来年も行きたいくらい楽しかった」 「未来の夢につながる学び」を掲げるN高には、チームでモノやサービスを作り上げるプロジェクト型授業もある。1年を通じて取り組み、最終成果はカドカワの川上量生社長、ドワンゴの夏野剛取締役、実業家の堀江貴文氏ら選考委員の前で発表。企業が手がける学校ならでは、優秀なプロジェクトには事業展開の資金1千万円を提供し、起業も支援するのだ。これに惹かれてN高を志望する生徒もいる。  その中間プレゼンで20チーム中、トップに立ったのが大平ひかりさんと延原琴乃さんのチーム。開発しているのは、発達障害で親や教師とのコミュニケーションに苦しむ子どものための連絡帳だという。 ●校歌は代数Nの方程式  大平さん自身、発達障害の特性で、わかっていても字を書けなかったり書くスピードが極端に遅くなってしまう。延原さんは極端な人見知りで話すのが苦手。「困った状況を周囲に言えなかった苦しみ」が発想の原点となった。  市販の連絡帳には罫線があるだけで、翌日の時間割や持ち物などを書き込む形式が多いが、2人が考える連絡帳は、字を極力書かずに済むようあらかじめ科目名が印刷してあり、◯をつけるだけ。夜、家でゆっくり自分が困っていることや伝えたいことを日記のように書くページも作った。大平さんは「発達障害の子って得意なことと不得意なことがすごく極端。私もそうです。でもN高では得意なことを伸ばせるし、勉強もパソコンとネットでできるので、字が書けないハンディがまったく気にならなくなりました」と話す。  人前でうまく話せなかったはずの延原さんも、プロジェクトのプレゼンでは堂々と発表。N高の校歌「代数Nの方程式」の最後はこんな歌詞だ。 「運命は自分で変えられるのさ 代数Nに自由な夢描こう」 (編集部・石臥薫子) ※AERA 2017年11月6日号
AERA 2017/10/30 16:00
竹内智香「競技者だから優先待遇というわけではない」
竹内智香 竹内智香
竹内智香「競技者だから優先待遇というわけではない」
竹内智香(たけうち・ともか)/1983年12月生まれ。スノーボードアルペン種目選手。ソルトレーク、トリノ、バンクーバーと冬季五輪に続けて出場し、2012年12月にはワールドカップで初優勝。ソチ五輪では日本人女性スノーボード選手で初のメダルとなる銀メダルを獲得。5度目の五輪となる平昌では自身の集大成として金メダルを目指す アメリカでお世話になっている日本人家族とともに。実家の旅館がある旭岳を案内した(写真/本人提供)  ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。 *  *  *  先週から、約1カ月間の予定でアメリカ合宿に来ています。夏の合宿地だったニュージーランドはここ数年行き始めた土地ですが、アメリカは16歳の時から継続して合宿地として訪れています。コロラド州のデンバーにある山は、まだ雪が少ない時期。そのため、10月上旬から人工雪を降らせ、20日ごろに積もっている状態に仕上がります。  スキーやスノーボード選手なら、どこでも優先的に良い環境を提供してもらえるわけではありません。特にいろいろな国や地域で合宿をするとなると、その土地の人々との関係性がすごく大切になってきます。ニュージーランド合宿の時も地元の人々に支えられたという話を以前に紹介しましたが、今回のアメリカも同じです。ここにもお世話になっている日本人家族がいて、毎年来る私の荷物をずっと保管してくれています。それはかなりの量で、日用品から自炊で使うキッチン用具までいろいろ。米国でも「帰ってくる」みたいな感覚になりますね。  さらに、今回の合宿に先立ち、スキー場の関係者が6月に来日していたので、20年来毎年素晴らしい練習環境を提供していただいたお礼として、2週間観光案内をしました。鎌倉など各地に連れていき、スポーツが好きだということだったのでJリーグの試合や東京ドームでの野球観戦にも行きました。その結果、今回の合宿に向けてさらに最高の環境を提供してもらえることになりました。1カ月の間、毎日常に二つのコースを滑れるようにしてくれて、休日の急な対応も臨機応変にしてくれるなど、普段の彼らのルールよりもかなり柔軟に使わせていただけることになりました。  こういう環境も競技者だから当たり前の待遇だという考えは一切ありません。良い環境を得るためには、普段の自分の行動や努力が必要なのは意識していますし、感謝の気持ちを大切にし、マナーを守ることも重要。そうして母国ではない国でもこういった環境を得ることができるのはとてもありがたいことです。  アメリカ合宿もニュージーランド合宿と同様に、気を使わずに練習に集中できるメンバーで日々を過ごしています。ここから約1カ月間、滑りに磨きをかけた後は、12月からいよいよW杯の試合が始まります。そしてそれは来年の平昌五輪に向けたスタートでもある。頭も体も、徐々に本番モードに切り替わっていく段階に入っていきます。(構成・西川結城) ※AERA 2017年10月30日号
竹内智香
AERA 2017/10/30 16:00
南果歩・独占初告白「人生で一番の試練のときだった」 夫と乳がん治療を語る
南果歩・独占初告白「人生で一番の試練のときだった」 夫と乳がん治療を語る
(撮影/写真部・松永卓也) (撮影/写真部・松永卓也)  いくつになっても笑顔が素敵な南果歩さんが、好評発売中の週刊朝日増刊Reライフマガジン「ゆとりら秋冬号」の表紙に登場。50代を迎え、乳がんを患い、最近はプライベートでも大激震があった。それでもいつでも前向きな南さんに、いまの心境をじっくりと聞いた。 *  *  * ――撮影スタジオに現れた南果歩さんは、いろんな話題にケラケラと声を立てて笑う。まわりを明るくする笑顔が印象的だ。  今年の7月9日からNHKBSプレミアムで8回にわたって放送されたドラマ「定年女子」では、南さんが主演を務め、大手商社の部長職にある深山麻子、53歳を演じた。ある日突然、部長職を解かれて「役職定年」し、人生の岐路に立たされる。同世代の主人公を演じて、南さんは何を思ったのだろうか。 南さん:仕事一筋で必死に生きてきた女性が、その仕事がなくなって立ち止まらざるを得なくなったところからドラマはスタートします。無職になり、女手ひとつで育てた一人娘をお嫁に出して新しい生活が始まる。  私自身も結婚や子育てで仕事をセーブしていた時期がありますから、いったん立ち止まった後に、人生がリスタートしていく感覚は、理解できるし、重なるところもありました。  50代って、各世代やいろいろな立場の人をつなぐ要の世代だとも思うんです。だから人間関係は豊かになるけれども、一方では予測のできないことが起きて方向転換を余儀なくされるときでもある。そうした経験を経て、自分の人生の最終目標を定めるタイミングでもあるのかなと、演じながら思いましたね。  私自身、40代までは、20代の延長に30代があり、30代の延長に40代があると当たり前のように思っていましたが、50代に入ったとき、ここからはそういう捉え方はできないなと思ったんです。特に根拠があったわけではありませんが、いつまでもこんなに元気ではいられないだろうと思ったし、いろんなことが今までどおりには、きっといかないんだろうなと、そんなことを感じました。そうしたらやはり、乳がんになったり、プライベートでも予期せぬことが起きたりと、自分の身にいろいろ降りかかってきました。 ――昨年から今年にかけて、南さんには試練が続いた。まず昨年2月、たまたま受けた人間ドックで右胸に6ミリの悪性腫瘍が見つかりステージ1と診断され、病巣を乳房温存手術で取り除いた。手術は無事に済んだが、その後の投薬や抗がん剤での治療で体の不調が続いた。  そして、ようやく1年になろうかというころ、今度は週刊誌に夫である渡辺謙さんの不倫が報じられたのだ。南さんはどん底まで打ちのめされたという。 南さん:そのときの気持ちをなんといえばよいか……。一言でいうと、人が信じられなくなった、それに尽きると思います。自分が立っていた地面が突然地割れして崩れてなくなったような感じ、とでもいったらいいでしょうか。どこに立てばいいのか、どこに行けばいいのか、もう本当にわからなくなってしまった。居場所がなくなった感じでした。  乳がんのときも、心身ともに大きなダメージを受けましたが、それでもそのときは「体が治ればもう一度頑張れるんだ」と思えました。でも、こちらの精神的ダメージを受けた後の状態はそれよりもはるかにつらく、一時は完全に思考回路も感情も止まってしまいました。言葉を発することができなくて、喜怒哀楽もない。もちろん笑顔もなくなり、涙さえも出ませんでした。これまでの人生で、一番の試練のときだったと思います。 「定年女子」の2カ月間の撮影も、とてもやり遂げられる自信がなかったので、悩みに悩んだ末、一度は出演をお断りしました。ところが、脚本家の田渕久美子先生やスタッフの方が、熱心に説得してくださって……。ある日、プロデューサーの方もメールをくださって、その熱い思いに触れたら心が初めて溶けました。それまでは喜怒哀楽がなくなっている状態だったのですが、そのときに騒動以来、初めて涙が出ました。  そしてそのプロデューサーにお会いしたときに思ったんです。「今話しているこの目の前の相手を信じられないとしたら、私はもう一生人を信じられない人間で終わる」と。ギリギリまでクランクインも延ばしてくださるとまで言っていただき、「あ、今の気持ちに従いこの人を信じて、見切り発車してみよう」と決断しました。  始まってみたら、スタッフもキャストの皆さんも一丸となって「私たちが守る!」という気持ちで接してくださった。そのやさしさが染みました。仕事場というのは、本当にありがたいものだなと痛感しながら、一枚一枚心の薄皮を剥ぐように、一歩ずつ前に進むことができた、そんな現場でした。 ――あれから数カ月。しかし、どん底まで落ちたという南さんは、今はハツラツとした、はじけるような笑顔で私たちの前に帰ってきた。何かすべてをそぎ落としたような軽やかさがその姿からは感じられる。どうしてこんなふうにいられるのだろうか。 南さん:それはきっと、自分の人生を見つめ直すチャンスをもらっているからだと思います。たぶんはたから見ると、気の毒だとか可哀想だとか思われているかもしれないけれど、でも私の気持ちとしてはそうではなくて、こういう局面だからこそ、今まで考えないで済ませていたことを見つめ直そうというエネルギーが湧いてきている。なので、このチャンスを生かさなかったらもったいないと思うんですね。  女友達の支えも大きかったです。本当にダメージを受けていたとき、弱っている私を助けてくれたのは、女友達でした。彼女たちのお陰でまた人生が豊かになった。これには感謝ですね。  病気をして、命はバトンリレーだということも痛感しました。それは親から子へとつなぐ血縁のリレーという意味だけでなく、今までの乳がん患者の方々の治療やデータが、今の私たちの治療につながっている。そして私の症例がどなたかの役に立って命をつなぐこともあるかもしれないという、その意味でのリレーでもあります。ですから、自分が知っている人間、近しい人間との関わりだけではなく、広い世の中との関わりにも目が開かれるようになりました。私の病気への向かい方はお手本にはならないけれども、一つの症例としてお役に立つかもしれない。ならばできるだけ自分の闘病体験も明かしていこうと思っています。 みなみ・かほ/1964年生まれ。84年に映画「伽倻子のために」の主役でデビュー。映画、テレビ、舞台などで活躍。2015年には映画「マスタレス」で全米デビュー。最近ではドラマ「定年女子」で主演。待機作に映画「Oh Lucy! 」(2018年公開予定) (文/志賀佳織) ※「ゆとりら秋冬号」から一部抜粋
がん健康朝日新聞出版の本病気
dot. 2017/10/30 11:30
aiko×岡村隆史「ボーイフレンド」デュエット披露!
aiko×岡村隆史「ボーイフレンド」デュエット披露!
aiko×岡村隆史「ボーイフレンド」デュエット披露!  aikoが、10月29日に横浜アリーナで行われた【オールナイトニッポン50周年 岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭in横浜アリーナ2017】に出演した。 aiko×岡村隆史ライブ写真  全国ライブハウスツアー【Love Like Rock Vol.8】9月7日最終公演直後の『岡村隆史のオールナイトニッポン』にaikoが生出演し、今回のイベントへの出演が発表された。迎えた当日、イベントも中盤に差し掛かり、岡村隆史より、「次のアーティストでは皆さん、キングブレードを青色にかえてください!」と、番組内でのaikoの代名詞“オーバーオール”にちなんだ青色を会場へ呼びかけると大歓声が巻き起こる。番組でおなじみのハガキ職人によるaikoの“ネタ葉書”が読み上げられると、キーボードのソロパートから「あたしの向こう」のイントロへと流れ込み、aikoのライブがスタート。  「初めて私のライブを見る方は、これからどんどん巻き込んで行きたいと思いますので、皆さんステージへ声を届けて下さい!」と呼びかけた二曲目「キラキラ」では、円形になったキャットウォークを駆け回り、客席の直ぐ側まで近づきハイタッチをするなど観客と触れ合った。  3曲目となる「ボーイフレンド」では、岡村隆史が登場しデュエットを披露。岡村がラジオ出演時に「やってみたい」と話していたaikoのライブ恒例のコールアンドレスポンス、「男子?! 女子?! そうでない人?!」を岡村へ伝授する一幕も見られた。最後のサビでは「岡村歌謡祭!! 万歳 ヘビーリスナー最高 ハガキ職人天才!」とaiko直筆で描かれた金テープも飛び出し会場を沸かせた。その直後のMCで岡村がaikoのパフォーマンスを賞賛すると、aikoは「私も緊張するんですけど、岡村さんのラジオのヘビーリスナーの方達なら大丈夫だと思って、裸で飛び込んで行きました」とヘビーリスナーを自認する番組への愛を語った。  さらに、「本当にラジオが好きなんですよ。音楽界のヘビーリスナー代表として今日はこの場所に立たせてもらっていると思います。もうずっと夜中1人の時間をラジオの番組で心を埋めてきました。これからもずっとラジオを聞いて、寂しい時間と心細い時間を埋めていきたいと思います。この曲をこの会場で歌えるのは本当にうれしいです」と話し、ピアノの伴奏に合わせたイントロから始まる「ラジオ」を披露。aiko自身のラジオへの想いのつまった印象的な歌詞が画面に映しだされ観客をさらに引き込んでいった。  最後には11月29日に、37枚目のシングル『予告』の発売を報告。さらに今週11月2日のニッポン放送『岡村隆史のオールナイトニッポン』(深夜1時~3時)にて初オンエアされることも発表された。ヒット曲を織り交ぜた全4曲でaikoの『岡村隆史のオールナイトニッポン』愛あふれるライブを締めくくった。 ◎aiko セットリスト 【オールナイトニッポン50周年 岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭in横浜アリーナ2017】 1.あたしの向こう 2.キラキラ 3.ボーイフレンド 4.ラジオ ◎リリース情報 シングル『予告』 2017/11/29 RELEASE <CD> PCCA.15037 1,200円(tax out.) http://aiko.com
billboardnews 2017/10/30 00:00
℃-ute元リーダー矢島舞美 初主演舞台で男役にも初挑戦! 演じるのは「ビートルズを呼んだ日本人」
℃-ute元リーダー矢島舞美 初主演舞台で男役にも初挑戦! 演じるのは「ビートルズを呼んだ日本人」
℃-ute元リーダー矢島舞美 初主演舞台で男役にも初挑戦! 演じるのは「ビートルズを呼んだ日本人」  解散した℃-uteの元リーダー矢島舞美の初主演舞台【演劇女子部『一枚のチケット~ビートルズがやって来る~】が、2017年11月27日から紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演される。  2017年6月12日、ハロー!プロジェクトの卒業及び、アイドルグループ・℃-uteを解散した矢島舞美。今回の初主演舞台では、男役にも初挑戦。実在の人物であり、のちに「ビートルズを呼んだ日本人」として歴史に名を残すプロモーター・永島達司(ナガシマタツジ)を演じる。  今やコンサートが当たり前に開催されている日本武道館だが、昭和41年までは神聖な武道の場所とされ、歌手はおろか外国人アーティストに貸し出す事はなかった。それを打ち破ったのが、エリザベス2世女王陛下からMBE勲章を授与され、音楽使節としてイギリスからきたビートルズ。女子高生たちは、日本に大旋風を起こし、色々な日本の歴史を塗り替える社会現象にもなったビートルズの公演を待ち望む。しかし、親や教師たちはロックを不良のものとして公演に行く事自体を禁止。その上、警備を担当する警察官僚たちもビートルズが来ることを拒んでいた。  そんな中、様々な人の交錯する想いを一身に引き受けたプロモーターこそ永島達司だった。舞台は当時の世相を描いた感動の物語となる。 ◎矢島舞美-コメント <今回の永島達司氏を演じる事に際して> 今回は、1966年にビートルズの日本公演を実現させた、永島達司さんの役をやらせていただきます。 今でこそ、日本武道館はミュージシャンやアーティストの聖地として多くの人が憧れるステージとなり、私自身も℃-ute時代に「いつか、あの場所に立ちたい!」と、夢に掲げ実現した思い出深い場所です。 もともと、日本武道振興の為に造られた日本の伝統的格闘技の殿堂が、このようにミュージシャンやアーティストの憧れのステージになったのは、ビートルズの存在があったから、、、。 「日本武道館はライブをやるべき場所ではない!! そんな行為は日本武道館への冒涜だ!」という、世間の反対もあった中、ビートルズの来日、そして武道館でのライブを実現して下さった、永島達司さんはじめ多くの関係者の皆様の頑張りが、今でもずーっと、たくさんの人に夢を与え続けて下さっているのだと思います。 私が生まれる前の出来事が題材ですが、私たちも人生の中で忘れられない時間をあの場所で刻む事ができた事、永島達司さんに敬意を込めて、感謝の気持ちで演じさせていただきたいと思います。 <初の男役に挑戦する事について> 男兄弟の中で育ったので、小さい頃から男勝りだったし、性格も男性っぽいと言われるんですが、 本格的に演劇で男性役に挑戦するのは今回が初めてなので、楽しみが半分、ドキドキが半分です! 元宝塚歌劇団の汐月しゅうさんや、劇団毛皮族の江本純子さんをはじめ、共演者の方々の仕草や姿勢、表情、発声など、たくさん研究をして役作りをしていきたいです。 皆さんに、劇場に足を運んでいただけるように頑張ります。 ◎公演情報 【演劇女子部『一枚のチケット~ビートルズがやって来る~】 2017年 11月27日(月)~ 12月3日(日) 場所:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 出演:矢島舞美 / 清水佐紀 / 高瀬くるみ / 石井杏奈 / 小野田暖優 / 清野桃々姫 // 汐月しゅう // 西川美咲 武者真由 / 喜屋武ちあき / 上野なつひ / 福永マリカ // 江本純子 料金:全席指定8,000円(tax in.) (3歳以下入場不可・6歳以上チケット必要) チケット発売日:10月28日(土)各プレイガイドにて <スタッフ> 脚本:清水有生 演出:星田良子 音楽:和田俊輔 プロデューサー:丹羽多聞アンドリウ(BS-TBS) 主催/企画/制作:BS-TBS/オデッセー
billboardnews 2017/10/30 00:00
「周りはみんな敵」リポーター阿部祐二を助けた“鬼嫁”の存在
中村千晶 中村千晶
「周りはみんな敵」リポーター阿部祐二を助けた“鬼嫁”の存在
阿部祐二(あべ・ゆうじ)(左)/1958年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。83年にドラマデビューし俳優として活躍。94年、リポーターに転身。「ルックルックこんにちは」「ザ!情報通」など数々の番組でリポーターを務める。2007年から「スッキリ」に出演中。著書に『超ハードでも疲れない仕事術』(PHP)がある。阿部まさ子(阿部・まさこ)(右)/1960年、千葉県生まれ。15歳からゴルフのアマチュア大会に参加し、79年からプロゴルファーとして活動。80年から日本女子プロゴルフ協会に所属。現在はティーチングプロフェッショナルとしてゴルフ指導を行っている。23歳の長女・桃子さんはファッションモデル、タレントとして活動中。2017年ミス・ユニバース日本代表に選出された。(撮影/倉田貴志)  リポーターの阿部祐二さんと当時“美人プロゴルファー”として話題だったまさ子さんの出会いは、祐二さんが俳優だったころ。結婚後、兼業していた家庭教師として成功したときにリポーターの仕事が舞い込んできた。夫は大学時代から記者志望でもあった。やりたかった仕事をする千載一遇のチャンス。だがリポーターと家庭教師の両立は難しい。 ※「リポーター阿部祐二は“格差婚” 妻は美人プロゴルファー」よりつづく *  *  * 夫:「リポーターっていくらもらえるの?」って聞かれて、「いや、僕もやってみないとわからない」って。 妻:私は出産で仕事を休まなければいけないし、家のローンもある。どうしよう? 大丈夫?と思ったけれど、彼が「どうしてもやりたい」と言うから、「じゃあ、やってみてください」と心を決めたんです。でも最初の事件リポートはひどかったよね(笑)。 夫:1994年の「つくば母子殺人事件」の中継でした。その家には飼い犬のレトリバーが2頭いて、置き去りになっていたんです。僕は現場で何もコメントが言えなくて、ひたすら「ゴールデンレトリバーが歩いています!」「ゴールデンレトリバーが庭を横切りました!」と十数回も連呼した。プロデューサーに「阿部ちゃん、ゴールデンレトリバーはもういいから……」ってダメ出しされて。 妻:私も帰ってきた彼に「ゴールデンレトリバー、さすがに多かったわよ」。 夫:「やばい! このままでは干される!」と思った。そこから猛勉強し、鬼のような生活が始まるわけです。 ――阪神・淡路大震災、オウム事件──相次いで大事件が起こり、夫は全国を飛び回るようになる。妻は出産後、トーナメントプロを引退し、ティーチングプロに転向。子育てもほとんど妻に任せっきりだった。 夫:リポーターを始めたばかりのころ、夜の付き合いも重要だと思って無理して朝まで飲み歩いていたんです。でも明け方、家に帰ると彼女が怒って家に入れてくれない。 妻:ドアチェーンの隙間から情けない声で「入れてくださ~い」って。 夫:グデングデンの状態で家に入ると、まだ幼かった娘が顔に乗ってくる。2人からの制裁が待ってるわけです。そのとき「あなたは一体、何をしてるの」と彼女に聞かれた。「輪の中に入るための努力をしてるんだ」と言うと、「あなたはそんなこと好きじゃないでしょ?」と。これにはハッとしました。そう、僕はもともと外で楽しく飲めるようなタイプじゃないんです。 ――飲みに行くときは1週間前に申告する、全国どこにいても基本外泊はせず家に帰る──妻が決めたルールはなかなか厳しい。ゆえに“恐妻家”と言われることも多いが、目の前の二人の関係はとてもおだやかだ。 夫:結局、僕もそれで自己管理ができましたしね。それに僕は友達もいないし、外でのことを全部家に持ち込むタイプ。話し相手も彼女しかいないんですよ。 妻:世間では“鬼嫁”のイメージがあるみたいですけど、違うんですよ(笑)。 夫:彼女はイエス・ノーがハッキリしているんです。いやなことはいや、できないことはできない、とキッパリ言う。 妻:でも娘もこの性格を引き継いじゃって、人間関係で苦労しているみたい。 夫:いまの世の中は“無難”が主流だけど、ウチの2人は違うんですよ。僕にはそれはできない。処世術と人を蹴落とす戦いばかりの世界で働いて、家に帰って彼女のような純粋な人間がいてくれるとホッとするんです。仕事の愚痴も散々、聞いてもらってきました。 妻:それまでの番組が終わって、次に「ルックルックこんにちは」に抜擢(ばってき)されたのはいいけれど、すでに先輩リポーターが30人くらいいて、なかなか這い上がれない、とかね。 夫:実績も人脈もないから、声がかからないんですよ。 妻:「悔しい」「悔しい」って言って。そんなの外では言えないから、全て私が引き受けた。彼は英語力を生かしたがっていたけれど、それも「自分でアピールしてはダメ。周りが気づくまで辛抱して」って。 ――そんな妻の内助の功が夫の運勢を開いた。 妻:97年だったかな、私が仕事先で、彼の先輩で第一線で活躍していたリポーターさんに偶然会ったんです。思わず駆け寄って「阿部祐二の妻です。うちの人、あなたをすごく尊敬しています!」とあいさつした。 夫:そこからガラッと状況が変わりました。リポーターの世界で居場所ができたというか、いやすくなったんです。なぜかスクープを取ることも多かった。まあそれでもこの世界は、周りはみんな敵。その後もさんざん中傷や批判をされましたけどね。 妻:あの台風リポートへの批判はすごかったね。「暴風で立っていられなかったのに、カメラが止まった瞬間、スタスタ歩き出した」と批判された。たまたま突風がやんだだけなのに。 夫:「うそつき」「やらせ」「誇張」とたたかれた。 妻:でも07年、「スッキリ」に出演したころから、ようやく見通しが明るくなってきたよね。 夫:僕もやっと自分に自信がついてきたんです。特に6年前からは完全に開きなおりました。 ――11年3月11日の東日本大震災発生の13時間前、夫は交通事故にあった。 夫:明け方、タクシーで自宅に帰ってきて、家のすぐそばで真横から車にぶつかられたんです。 妻:私が駆けつけると車の中は血の海でした。電柱が曲がるくらいの衝撃で、第二頸椎骨折と診断された。 夫:その13時間後くらいに東日本大震災が起きた。意識がもうろうとしているのに揺れに驚いてベッドから飛び降りようとして、周囲に押さえられたらしいです。 ――取材に行くこともできず、1カ月以上の入院とリハビリの日々。復帰できたのは2カ月半後だ。しかし、焦りはなかったという。 夫:「悔しい」とは全然思わなかった。いい機会に恵まれたと思えました。これはもう神様が「休みなさい」と言ってるんだよと。 妻:入院中は毎晩、病院に食事を運んで娘と一緒に過ごしたんです。そんな時間、それまでの22年間、一度もなかった。 夫:僕はあれから本当に人生観が変わりました。一日一日ご褒美をもらっているようで、そのありがたみを感じるようになった。 妻:「生かしてもらった」と感謝しています。もう少しずれていたら下半身不随になっていたかもしれない。 ――いまの夫婦の最大の関心事は娘・桃子さんのこと。ミス・ユニバース世界大会に出場する。 夫:11月、現地について行きます。結果はどうあれ、ここまで来たことがすごいことだから。 妻:その後はまた二人でのんびり旅行に行きたいね。(聞き手・中村千晶) ※週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋
週刊朝日 2017/10/27 11:30
リポーター阿部祐二は“格差婚” 妻は美人プロゴルファー
中村千晶 中村千晶
リポーター阿部祐二は“格差婚” 妻は美人プロゴルファー
阿部祐二(あべ・ゆうじ)(左)/1958年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。83年にドラマデビューし俳優として活躍。94年、リポーターに転身。「ルックルックこんにちは」「ザ!情報通」など数々の番組でリポーターを務める。2007年から「スッキリ」に出演中。著書に『超ハードでも疲れない仕事術』(PHP)がある。阿部まさ子(阿部・まさこ)(右)/1960年、千葉県生まれ。15歳からゴルフのアマチュア大会に参加し、79年からプロゴルファーとして活動。80年から日本女子プロゴルフ協会に所属。現在はティーチングプロフェッショナルとしてゴルフ指導を行っている。23歳の長女・桃子さんはファッションモデル、タレントとして活動中。2017年ミス・ユニバース日本代表に選出された。(撮影/倉田貴志)  夫は数々の事件現場を取材してきた名物リポーター・阿部祐二さん。妻はゴルフのティーチングプロ・阿部まさ子さん。娘の桃子さんが2017年ミス・ユニバース日本代表に選ばれたことでも話題だ。そんな二人のなれそめは──事件です! *  *  * 夫:出会いは1987年、スポーツジムです。僕は当時、俳優としてドラマ「特捜最前線」に出ていて、1時間でも空き時間があるとジムに行っていた。 妻:私はトーナメントプロとしてシーズンオフにジムに通っていたんです。 夫:初めて見かけたとき彼女は黙々と、ひたむきに脇目も振らずにトレーニングをしていた。僕はそういう人が好きなんですよ。それで彼女に興味を持った。 妻:トレーナーから「こちら阿部さん」と紹介されたんですけど、テレビをあまり見ないので、彼のことは知らなかった。 ――夫も妻が人気の“美人プロゴルファー”だとは知らなかった。 妻:私が日焼けをしていたので「どこで焼いたんですか」と聞かれた。「(遠征先の)ハワイです」と答えたら「僕もハワイ行ってきたんですよ。仲間内のゴルフ大会で優勝したんです」と自慢された(笑)。 夫:だってプロゴルファーとは知らなかったから。 妻:私もとぼけて「ゴルフやられるんですね」。そしたら「今度、教えてあげるよ」ですって。なんだかカッコつけてて、いやな感じだなあと思ったんです。 ――夫は身長185センチ。彫りの深い顔立ちで大学時代から雑誌「POPEYE」などでモデルを務め、俳優に転向した。 夫:でも僕のほうは一目ぼれみたいなものだったから、数日後に彼女がプロゴルファーだと聞かされて「こりゃまずい!」と再び近づいた。そうしたら「今度、試合を見に来ますか」と言われたんです。 妻:どうせ来ないだろうと思ったんです。でも来てくれた。あの日、大勢のギャラリーのなかに彼の姿を見つけたとき、不思議に彼だけがスッと浮き出て見えたんです。そのときに、ちょっと運命を感じたかな。 夫:ははは。 妻:私の父も彼を気に入って、その年の10月に結納とトントン拍子でした。俳優さんと結婚するとは思ってもいなかったし不安も少しあったけど、彼は俳優と同時に家庭教師もしていたんです。「あ、意外と真面目なんだな」と思った。 夫:僕は最初から一点の曇りもない、心のきれいな人だなと思った。 妻:うれしいですねえ、そんなこと言ってくれて。 ――だが当時、夫と妻の“格差”は歴然だった。 夫:収入もだけど、社会的な格差ですよ。当時、僕は俳優業はあまりうまくいっていなかった。スポーツ紙に「美人プロゴルファー、結婚!」とでかでかと載ったけど、「お相手は俳優」と載った僕の写真は3センチ。 妻:あはは。 夫:周囲は僕のことをヒモ的に見るわけです。さすがにプライドがすごく傷ついた。でも反骨心だけはあるから「なんとか軌道修正してやる!」と。いまでも忘れられないんだけど、ある朝、彼女が新聞の折り込みチラシを見ながら「市場で朝から2時間勤務、時給650円だって。これ、できるんじゃない?」と言ったんです。 妻:発破をかけるつもりでね。そのとき彼は役者の仕事も途切れていて、家庭教師先も2軒だけ。月に10万円も稼げない状態だったから、もうちょっとがんばってもらわないと、って。 夫:僕はそれで発奮したんです。家庭教師センターを立ち上げて、講師も雇った。それが大当たりした。 妻:彼は教えるのがうまいんです。ちゃんと有名大学に合格させるし、お医者さんになった教え子もいるのよね。 夫:役者よりもそっちのほうがメインになってきた。 妻:自宅も購入できたしね。子どもがほしくなって、93年にようやく妊娠したら、そこでわが家の一大事が起こったんです! 夫:そう。僕にリポーターの仕事をやらないか、と話がきた。(聞き手・中村千晶) ※「『周りはみんな敵』リポーター阿部祐二を助けた“鬼嫁”の存在」」へつづく ※週刊朝日 2017年11月3日号より抜粋
週刊朝日 2017/10/27 11:30
与党圧勝再び3分の2の中、安倍一強にNOを突きつけた北海道で民主主義が機能した理由とは?
与党圧勝再び3分の2の中、安倍一強にNOを突きつけた北海道で民主主義が機能した理由とは?
当選を夫の石川知裕元衆院議員(右)と喜ぶ石川香織氏=北海道帯広市(C)朝日新聞社  北海道が「安倍1強」を揺さぶる「野党共闘」と「リベラル勢力結集」の震源地に――。  衆院選の北海道内全12小選挙区の結果は、自民党6議席、公明党1議席、立憲民主党5議席となり、前回14年衆院選の自民9勝対民主党3勝と比べて、民主出身者が多く集結した立憲民主が健闘。立憲民主は3区と11区で自民から議席を奪い返し、5勝3敗となった。また、比例代表北海道ブロック(定数8)は自民3、立憲民主3、公明1、希望の党1議席だった。 「北海道の仲間は全員当選を」  立憲民主の枝野幸男代表は13日に札幌市中央区で行った応援演説で、そう意気込みを訴えた。小選挙区だけで言えばその高い目標達成とまではいかなかったが、接戦区も多く、比例復活を含めると、急きょ比例単独で擁立した山崎摩耶氏以外は達成。小池劇場の混乱と失速によって与党を利する構図となっていた中で、与党圧勝の流れに一定のくさびを打つ北海道での結果だった。  1983年からの横路孝弘知事時代が象徴的な革新道政の歴史的経緯があり、アベノミクスによる景気回復を実感しにくい地方の北海道で、「安倍1強」政治にノーを突きつける民意が根強かったと考えられる。  原動力となったのは「野党共闘」効果だ。憲法改正と安保法制への同調傾向の強い希望に対して共産が「協調できない」との姿勢を崩さず、全国的には野党統一候補擁立の規模が縮小。だが、北海道では立憲民主、共産、社民の共闘が全12小選挙区で実現し(立憲民主に入党した上で8区に無所属で出馬した逢坂誠二氏を含む)、8選挙区で自民(10区は公明)対立憲民主の「与野党一騎打ち型」の構図に持ち込んだ。  民進出身者の多くは立憲民主に集結し、希望合流組は3人だけ。希望はもう1人と合わせた4選挙区での立候補にとどまり、そこに共産が対立候補をぶつける形となった。  ただし、共産が希望の結成以前から求めていた「札幌市内が主な1、2、3区のいずれかを含む3選挙区を共産に」の条件が、希望合流組の2、9、12区に充てることで満たされた“棚ぼた”共闘の側面はあった。  野党共闘の効果がどれほどかは、前回の2014年衆院選のデータでうかがい知ることができる。このとき自民が9勝、民主(2区は当時維新)3勝だったが、民主票に共産票を単純に足すと勝敗は逆転し、自民3勝、民主9勝という計算になる。政権批判票を集めた場合の選挙結果が180度変わり得ることを示している。  ともに聖心女子大出身の「代議士の妻」対決となった11区は、14年衆院選で民主票と共産票を足し合わせても自民に勝てていなかった3選挙区の1つだ。だが、故・中川昭一氏の妻で前職の中川郁子氏(自民)は15年に同僚男性議員との不適切な交友関係が報じられて、一時は候補者差し替えさえささやかれ、イメージ払しょくに最後まで苦しめられた。  一方、陸山会事件で有罪判決を受けて公民権停止中の石川知裕元衆院議員の妻で元アナウンサーの石川香織氏(立憲民主)は33歳という若さと現役の子育て世代であることを武器に安倍政権批判の選択肢としての意義を強調。1万6000票差を付けて一騎打ちに勝利した。 小選挙区制の枠内で野党が勝利するための不可避の戦略とも言える「野党共闘」。  その原点は、15年の安保法制強行採決に反対する市民旋風が吹く中、昨年4月の北海道5区補選で実現した全国に先駆けた試みにある。このとき野党統一候補として池田真紀氏を擁立し、民主、共産、社民、生活が推薦した。池田氏は敗北したものの、自衛隊基地のある千歳、恵庭両市を含む保守有利の同選挙区で、元外務大臣の町村信孝氏の娘婿である自民の和田義明氏に予想を覆して1万2000票差まで詰め寄ったのだった(同じ対決となった今回も選挙区では敗北したものの、票差は9000票弱に縮め、比例で復活当選を果たした)。  この経験を経て、今回も共闘の実現には苦渋の決断があったが、最終的にはなし遂げられた。8選挙区で候補者を取り下げた共産の痛み。希望に合流した民進出身の3人を共闘から外す譲歩をした立憲民主の決断。上田文雄前札幌市長らの市民団体がくじけそうになる両者の尻をたたき続け、最後は5区補選時から築き上げてきた信頼関係醸成の歩みそのものが後押しとなった。  その象徴は、社民を含む4者が一枚の協定書に名を連ねたことだ。枝野代表のメディアでの発言によれば、全国レベルでは市民と立憲民主、市民と共産が協定を結ぶという間接的な形式で共闘が成立。だが、北海道ではすべてのプレーヤーが同じテーブルの上で握手を交わした。 「共産のプライドを尊重するこの形が重要だった」  民進党道連のある幹部は、こう振り返った。  北海道での野党共闘について、枝野代表も「これまで積み上げてきた中心になっているのが北海道の皆さん。大事な我々の原点の一つだと思っている」との見解を示した。  5区補選に端を発する北海道での一連の動きは「野党共闘」の先行事例であり、立憲民主を軸とするリベラル勢力が拡大する震源地ともなり得ると予感させる動きとなった。  13日の札幌市内で筆者が「ファーストネームが“憲政の神”と呼ばれた尾崎行雄に由来するとのこと。同じような一歩を踏み出したのでは?」と問いかけると、枝野代表は「そうなっちゃいましたね」と笑みを浮かべた。   「中長期的にみて、下からの政治、立憲主義の政権の起点ともなり得る立憲民主の動きだと思うが、その意気込みは?」との質問を加えてぶつけると、その答えはこうだった。 「最近で言うと、私が初当選した1993年の日本新党での最初の衆院選が、政治が次のステージに移ったポイントだった。今年の選挙が後々から振り返って、あそこから新しい流れが始まった、と言っていただけるような選挙にしたいし、そういう立憲民主党にしていきたいと思います」  リベラル勢力の旗手に躍り出た党の代表が冬の足音が聞こえ始めた北の地で語った言葉は、与党で3分の2を超えるという安倍圧勝の裏で起こり得るさまざまな動きを想起させるものとなった。(ライター・高野祐太)
2017解散総選挙
dot. 2017/10/23 00:00
女子高生も「エダノン」と叫ぶ 立憲民主・枝野幸男の変わらない政治の原点
女子高生も「エダノン」と叫ぶ 立憲民主・枝野幸男の変わらない政治の原点
東京・秋葉原駅前に集まった聴衆に「右でも左でもなく、前へ」「下から、草の根の民主主義を取り戻す」と枝野氏は呼びかけた(撮影/西岡千史) 枝野氏の趣味はカラオケ。福地氏は司法修習時代を振り返り「カラオケボックスにはよく行った。枝野が歌うのは演歌ばかり。歌う前後に一礼して、とにかく声が大きかった」(撮影/西岡千史) 枝野幸男氏の歩み(AERA 2017年10月30日号より)  女子高生までもが「エダノン」と叫んだ。市民目線の立憲民主党を率いる枝野幸男氏。彼の政治家人生をたどると、今につながるブレない芯が見えてきた。 *  *  *  民主党から政権を奪還した験担ぎで自民党の“聖地”となった東京・秋葉原。投開票日まであと3日と迫った10月19日、「枝野」「エダノン」と叫ぶ約3千人(主催者発表)の傘の花が咲いた。  3カ月前の東京都議選では、聴衆の一部から「安倍やめろ」コールが起こり、自民惨敗の引き金を引いた場所でもある。聴衆を指さし、「こんな人たちには皆さん、私は負けるわけにはいかない」と発言した安倍晋三首相を意識したのか。マイクを握った立憲民主党の枝野幸男代表は演説終盤で聴衆を指さし、 「立憲民主党をつくったのは枝野幸男ではありません。私の背中を押して『枝野立て』と言ってくださったあなたがつくった政党、それが立憲民主党です」  選挙戦終盤で台風の目となったのは立憲民主党だった。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の調査(10月12~15日)では、立憲は公示前勢力から大幅に議席を増やし、野党第1党に迫る勢いを見せている。「排除発言」で失速した希望の党の小池百合子代表が色あせる一方、安保法制廃止など民進党時代の主張を貫き、反自民の受け皿となって選挙戦の主役となった枝野氏。彼はどんな人物なのか。 ■損得なしに動く人  弁護士の福地直樹氏は1989年7月から1年4カ月にわたる司法修習時代を、枝野氏とともに仙台で過ごした。民進党が希望の党に合流するニュースに耳を疑ったと福地氏は言う。 「枝野が小池百合子さんと一緒にやるとは思えなかった。小池さんには、弱者に寄りそうような姿勢が見えない。だけど、枝野は損得なしに動く人だ」  枝野氏は東京オリンピックがあった64年、宇都宮市のサラリーマン家庭に生まれた。祖父は政治に関心が強く、「憲政の神様」と呼ばれた尾崎行雄を尊敬していた。名字に合わせ画数の良いものをと、宇都宮の二荒山神社で同じ読みの「幸男」と命名された。  小学校で児童会長、中学では生徒会長。宇都宮高校時代は校内弁論大会で「日教組問題」などをテーマに3年連続で優勝した。その一方で、中学、高校時代は合唱部に所属し、中学校ではNHK全国学校音楽コンクールで2年連続優勝している。  東北大学卒業後は24歳で司法試験に合格し、弁護士に。政界デビューは29歳のとき。日本新党の候補者公募に立候補し、地元ではなく、埼玉県大宮市(当時)を中心とする旧埼玉5区で初当選を果たした。都市部を選んだ理由を「地縁血縁などに頼らず、政策を主張して、それを支持してくれる人たちに投票してもらい、当選したいと考えた」(枝野氏の著書『それでも政治は変えられる』から)。  初めての選挙戦を手伝った枝野氏の小、中学校の後輩の鵜山雄一氏はこう振り返った。 「お金もなく、すべてボランティアスタッフでの選挙戦だった。弁護士らしく公職選挙法を厳密に守り、当選直後に業界団体などが続々とお酒などを差し入れにきたが、それもすべて断っていました」  前出の福地氏が政治家になった枝野氏に連絡をとったのは95年の1月。福地氏は血液製剤が原因でHIVに感染した血友病患者らが国と製薬会社を訴えた「薬害エイズ裁判」の原告側弁護団の一人だった。 「あらゆるパイプを使って国会議員に接触したが、動いてくれたのは彼だけだった」  国はあるはずの行政側の過ちを裏付ける資料の提出を滞らせ、10カ月後に和解勧告が出るも厚生省(当時)の無責任な姿勢は変わらない。枝野氏は国会で森井忠良厚生相に「和解勧告を尊重するか否か」とただし、「謙虚に検討したい」と述べた厚生相の官僚答弁に強く反発した。 「役人のつくった答弁を棒読みするのだったら、政治家が大臣をする必要はない」 ■民進参院議員が反論  当時、さきがけの与党議員だった枝野氏が大臣を追及する前代未聞の事態は、与党内に波紋を広げた。さきがけ、民主党時代を枝野氏と共にした元衆院議員で、昭和音楽大学学長の簗瀬進氏はこう振り返る。 「検察ばりに尋問のように追及する姿から、『枝野検事』などと呼ばれていた。信念を曲げない激しさを持っている」  枝野氏の動きをキッカケに橋本龍太郎内閣で菅直人氏が厚生相に就任。被害者への謝罪に至ったことは周知の通りだ。福地氏は枝野氏にエールを送る。 「街頭演説では、民主主義イコール多数決ではない、少数意見を採り入れ、議論して前に進める政治が必要と訴えている。彼の信念は変わっていない。ただ、問われるのはこれから。党の代表として演説で話したことを実際に実現してほしい」 (AERA編集部・澤田晃宏) ※AERA 2017年10月30日号
2017解散総選挙
AERA 2017/10/21 11:30
「ニッポン、マジで大丈夫かって」衆院選を前にした若者たちの政治意識
島沢優子 島沢優子
「ニッポン、マジで大丈夫かって」衆院選を前にした若者たちの政治意識
東京都の18歳投票率は参院選で6割強だったが、知事選5割、都議選4割と下降気味。「主権者教育は高校以降も必要」の声は多い(撮影/写真部・大野洋介)  都内の私立大学2年生の男子学生(19)は「ニッポン、マジで大丈夫かって感じっす」と話す。政治で一番注目しているのは北朝鮮との外交。ミサイル発射の映像は見るたびに恐怖だ。 「それなのに、安倍サンは『対話ではなく圧力』とか言う。おい、しゃしゃって(いきがって)る場合かよって。日本に圧力かける戦力とかないのに。徴兵制が現実になればオレらが戦争行くんですよ。マジでたまらない」  都内在住で1浪中の竹内莞太(かんた)さん(18)も「戦争だけはしないでほしい」と願う。大和など昔の戦艦が大好きだ。一方で、 「戦艦にこんな武器があるとか威力を知ってしまうと、本当に戦争は怖いと感じる」  2人に共通するのは「好戦的ではない人に政権を任せたい」という思い。そして、「でも、誰に投票したらいいのかわかりません」という迷いだ。  昨年6月、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられ、政権選択を迫られる初の衆院選を前に、若者たちは戸惑っている。  埼玉県の私立大学1年生の男子学生(18)は投票に行くかを決めかねている。 「消費税とか憲法とか、争点っていうんですか? そこがハッキリしない」  消費税は上がっても「たった2%じゃん」と思う。原発は「場所が遠くて実感がない」。憲法のことも「自分、理系なんで」。誰かと話したいが、政治の話をしたのは高校で模擬投票をした授業の時だけ。最近、サークルの先輩たちが「今は経済が安定していて就職できる。このままでいいんじゃね」と話すのを聞いた。投票率が低ければ現政権続行の確率が高まるらしい。  だから投票しないかも。 「正直面倒くさい。勉強にサークル、バイトで忙しい」  神奈川県の公立大学2年生の男子学生(19)は、同じゼミの大学院生が「大学入学時は就職難だったのに、今年の就活は楽だった」と話すのを聞いた。両親からは「東京五輪後は不況になるから、絶対留年するな」とクギを刺されている。高校3年生の弟は授業で「君たちの学年は就職難になる」と言われ、ビビりまくっている。 「ほんの何学年か違うだけで人生が変わる。政権交代で社会が不安定になったら、経済状況が悪くなるのかも」と恐れる。  厚生労働省の「就職状況調査(2016年度)」によると、民主党政権時の10年10月時点で57.6%だった大卒内定率は16年10月に71.2%。最終的な就職内定率は97.6%で調査開始以来最高だった。  都内の高校で選挙啓発イベントなどを行う嘉悦大学経営経済学部教授の和泉徹彦さんは「今の売り手市場がアベノミクスのおかげと考えている学生が多い。加えて、教育の無償化など若い人に届きやすい政策が語られているので、現政権でいいと考えるのでしょう」と分析する。  若者たちは想像以上に、政治への当事者意識が強いようだ。では、彼らの投票行動に最も影響を与えているのは誰か。話を聞いた若者の多くが、「お母さんが安倍さんじゃダメだって」「立憲民主党の政策とか母からLINEで来る」と、「母親」を挙げた。  一方、東北大学法学部で学ぶ女子学生(18)は昨年の参院選前、「どうせ行っても同じ」と漏らす母親(51)に「国民の義務だよ」と投票を促したという。 「国会を軽視するような態度や強行採決する政治を、仕方ないとあきらめたら終わり」  そう。政治家より彼らの人生のほうが長いのだ。 『中高生からの選挙入門』を著した谷隆一さんは、昨年の参院選の際に女子学生から「(任期は6年だから)6年後の自分のために仕事をしてくれる人を選ぶから慎重になる」と言われたという。長いスパンで未来を考えている若者たちは、悩みつつ義務を果たそうともがいている。(ライター・島沢優子) ※AERA 2017年10月23日号
2017解散総選挙
AERA 2017/10/19 07:00
羽生結弦がいきなり登場! グランプリシリーズの見どころは?
羽生結弦がいきなり登場! グランプリシリーズの見どころは?
 10月8日、東京都内で10月20日に開幕するフィギュアスケート・グランプリシリーズ(テレビ朝日系列にて放送)の記者会見が行われた。宇野昌磨や宮原知子らシリーズに参戦する選手8人が参加し、今シーズンの意気込みを語った。記者会見での選手たちのコメントをまじえながら、今季シリーズの見どころを紹介しよう。 ■初戦で羽生結弦が五輪のライバル候補と激突  男子シングルは、初戦のロシア大会(現地時間で10月20日~22日。以下全て現地時間)から見逃せない戦いになる。GPファイナル5連覇を目指す羽生結弦と、急成長中のネイサン・チェン(アメリカ)がいきなり登場。チェンは5種類の4回転を跳ぶことができる伸び盛りの18歳で、平昌(ピョンチャン)五輪でも強力なライバルになってくるだろう。  さらに昨シーズン大きく飛躍した田中刑事も参戦する。今季の抱負は「一つひとつ壁を打ち破ってパーソナルベストを更新する」と力強く語る田中が、羽生とチェンの戦いにどこまでついていくのかに期待したい。  2戦目のカナダ大会(10月27日~29日)は、宇野と無良崇人の初戦だ。宇野は記者会見前日のジャパンオープン2017でミスを連発。「今はとにかく悔しさでいっぱい」だが、だからこそ「闘う気持ちを得ることができた」と気合を入れ直す。今シーズンの抱負は昨年同様に「攻める!!!」。シリーズ初戦に向け、苦しい練習を重ねてさらに自分を追い込んでいく決意だ。  一方、無良は会見で「カナダ大会からショートを去年のものに戻す」ことを発表。オリンピック初出場を目指し、ショート・フリーともに滑り込んだプログラムで「自分のやりたいことをアピールする」。  カナダ大会以降も、4戦目の日本大会(HNK杯、11月10日~12日)では羽生VSパトリック・チャン(カナダ)、5戦目のフランス大会(11月17日~19日)では宇野VSハビエル・フェルナンデス(スペイン)と、平昌でのメダルの行方を占う戦いが続く。 ■女子は五輪2枠をめぐるゆずれない戦い  一方、女子は7人がGPシリーズに参戦。樋口新葉と坂本花織がロシア大会、本郷理華と本田真凜がカナダ大会、三原舞依が中国大会(11月3日~5日)、宮原と白岩優奈が日本大会でそれぞれ初戦を迎える。  女子はオリンピックの出場枠が男子よりも一つ少ない2枠。会見でも「目標は高く持つ」(本郷)、「一つひとつの試合で大きなミスしないようにする」(樋口)、「わくわくしているので勢いをいいように出したい」(本田)など、コメントからも選手たちの気合いが感じられた。  樋口、三原、本田、坂本ら十代の選手たちは9月、10月の大会ですでに自己ベストを連発している。GPシリーズでも大いに活躍してくれそうだ。  勢いに乗る若手たちに対し、ケガ明けの全日本女王・宮原は11月の日本大会(NHK杯)が実戦復帰になる。会見の日は明るい表情が印象的で、「今シーズンのプログラムはすごく気に入っている」「通しの練習もしっかりできている」など前向きな発言が続いた。今季の抱負には「初志貫徹」を選び、「最初に決めていた目標をしっかり目指したい」と、五輪出場に向けて着実に前進しているようだ。  今季は、最終戦のGPファイナル(12月7日~10日)が4年ぶりに日本開催。シリーズの男女上位6人が名古屋に集結する。オリンピック直前に行われる最後の世界大会であり、日本人選手にとってはオリンピック代表選考にかかわる重要な試合でもある。  シリーズを勝ち抜き、ファイナル出場を果たすのは誰だろうか。熱い戦いに期待だ。 【会見での各選手コメント抜粋】 宇野昌磨「(ジャパンオープンでの演技を踏まえて)今、僕にとって必要なものは練習と安定感かなと思います。自分のやらないといけないことが明確になりました。今日の自分は、昨日よりもいい状態です」 田中刑事「試合で力が出せないことが一番悔しいので、まずその壁を打ち破りたいです。グランプリシリーズで今ある限界を突破していきたい」 無良崇人「今年のテーマは『結』。ソチから平昌に向けての4年間をひた走るという気持ちでやってきて、それの締めのシーズンだと思っています。この年齢だから出せる雰囲気を存分に出していきたい」 宮原知子「(今季テーマは)『初志貫徹』。(ケガで大変な思いもしたが)自分の最初に決めた目標は絶対に最後まで貫き通すっていうことで、この言葉にしました。(五輪代表が決まる)全日本選手権で自分のいい演技をするのが目標です」 樋口新葉「『自国開催のファイナルに出るために一つひとつの試合でミスをしないようにする。あとは思い切り楽しく!!』。グランプリシリーズでは2戦とも表彰台に上がって、ファイナルでメダルを取ることが今の目標です。今シーズンの目標は、やはりオリンピックに出ることです」 三原舞依「『感謝』です。昨シーズンはシニアデビューの年で、スケートができる喜びとか、試合に出られる楽しさとかを感じることができました。たくさんの人に支えていただいたので、今シーズンは感謝の気持ちでショートもフリーも演じていけたらいいなと思っています」 本郷理華「『名古屋でグランプリファイナルが開催されるのでそれに出られるように頑張る!』。目標は高く持って一つひとつの試合でいい演技ができるように頑張りたいです」 本田真凜「『不撓不屈(ふとうふくつ)』。私にとってはオリンピックシーズンというより今年はシニアデビューの方が大きくて、わくわくしているので勢いをいいように出したい。(シニアで2試合戦ってみて)足りないところがたくさんあるなと思いました。久しぶりに悔しい気持ちがあるので、大切にしたい」 (取材/『フィギュアスケート2017-2018』編集部)
フィギュアスケート朝日新聞出版の本羽生結弦読書
dot. 2017/10/18 11:30
フィギュア世界女王・メドベージェワ 撮影で言い残した日本語のひとこと
フィギュア世界女王・メドベージェワ 撮影で言い残した日本語のひとこと
AERA 2017年10月16日売り表紙にエフゲニア・メドベージェワさんが登場  フィギュアスケート世界女王であるエフゲニア・メドベージェワがAERAの表紙を飾った。撮影で見せたその素顔とは。 *  *  * 「どんな感情を持てばいい?」  表紙撮影では、自分をどう見せるかにこだわった。目をどの程度開くか、歯を見せたほうがいいのか、手の角度は……。そして心の状態までも、撮影者の意図を聞き出そうとした。 「コーチのエテリさんに『女性は必ず髪も化粧もきれいにしないといけない』と言われ、11歳の頃からまつ毛をつけ、マニキュアやメイクをしてきた」  メイク時間10分でホテルを出てきたというが、その完成度の高さは編集部が用意したメイク担当者が驚くほど。リンクではそのしぐさと表情、滑りの緩急で物語を演じ、観客を引き込んでいく。回転が速いジャンプと正確な技術も得点源だ。  平昌五輪の女子フィギュアで最も金メダルに近い選手だが、五輪の目標を口にすることを嫌う。10月7日にさいたま市であったジャパンオープン後の記者会見でも、「五輪の質問に答えるつもりはない」。ロシアには、「願いごとを人に話すと叶わなくなる」という言い伝えがあるという。答えないのは、強い思いの表れなのかもしれない。  宮崎駿アニメを見てのめり込み、自らを「アニメオタク」と称する。撮影日には、「美少女戦士セーラームーン」のキャラクターをあしらった私服とカバンで登場。撮影中は、「大きな趣味」という韓流アイドル、EXOや東方神起の曲をかけてテンションを上げた。  オフの楽しみは、友人とスパに行くこと。写真やメッセージを交換して世界の友人たちとも交流する。 「日本人だけじゃなく、フィリピン、中国、カナダ、フランス、いろんな国の友達と連絡を取り合っている」  氷を降りれば、多趣味で人なつっこく、何にでも興味を抱く多感な17歳。日本語で「私はおなかがすいています」と言い残し、スタジオを後にした。(朝日新聞スポーツ部・後藤太輔) ※AERA 2017年10月23日号
AERA 2017/10/17 07:00
9歳、10歳が抱える“2大ストレス” プレ思春期に親はどう対処する?
9歳、10歳が抱える“2大ストレス” プレ思春期に親はどう対処する?
 プレ思春期とよばれる9歳、10歳は、子どもの体も心も大きく変化を迎える時期です。いつもイライラしていたり、なんとなくだるそうに見えるのも、脳の中でさまざまなホルモンなどが活発に分泌されるているため。心も体もとても不安定な状態なのです。  また、この頃になると自我もしっかりと確立されてきます。ですから、それまでは気にならなかった、ほかの人との違いや差もわかるようになるのです。  そんな多感なプレ思春期の子どもたちが、より大きくストレスを感じるのが「友だち」と「塾」。親には見えにくい部分でもあり、子どもたちもなかなか本音を言いづらい部分でもあります。『AERA with Kids 秋号』では、子どもの本音に寄り添う親の対応を、専門家に聞きました。 *  *  * 【ストレス1:友だち】 「小学校では、2年ごとにクラス替えが行うところが多いのです。すると、1年生の次は3年生。このクラスが4年生になって友だちが固定化すると、グループが生まれやすくなるんです。とくに、女子はその傾向が顕著ですね」と話すのは、教員生活を経て、現在は風路教育研究所を主宰する風路京輝さんです。  友だちグループは、プレ思春期の子どもたちの大きな悩みの種にもなるのです。 ■グループに入れない  中には、まだどこの友だちグループにも入れていない子どももいます。入りたいのに、入れない焦りと寂しさは、大きなストレスに。風路さんは「自己肯定感が高く、自分に自信がある子どもは、グループに属さなくても平気なのです。逆に、自信がない子どもは、いつも誰かと一緒でないと不安で、友だちと固まる傾向があります」と話します。 「もし、子どもがこんな悩みを持っていることがわかったら、担任の先生にこの状況を知らせておくのがベターでしょう。高学年になると、修学旅行などの行事もあります。グループに関しては、先生が配慮してくれるはずです」 ■グループをかわりたい 「今のグループには意地悪な子がいるから、ほかのグループに入りたい。でも、ほかはどこもしっかり固まっているから……」とひそかに悩んでいる子どももいます。風路さんは「日ごろ、学校での人間関係やその子の性格を把握しているのは、が担任の先生です。現状を相談してみましょう。ほかのグループに声をかけてくれるなど、力を貸してくれますよ」と話します。  友だち関係で悩む子どもを前に、親はつい「じゃあ、◯◯ちゃんにいれて、って言えば?」などと言いたくなってしまうところ。しかし、ベストは、子どもの様子を観察して、気になることは担任の先生に相談しておくこと。状態を共有しておくことなのです。 「子どもの友だちストレスを軽減させるには、子どもの得意なことを見つけて、自信を持たせてあげることも有効です。また、親も保護者会やPTA活動に参加するなど、学校とかかわりをもっておくこともおすすめです。クラスの雰囲気も自分の目で確かめられるし、わが子の学校での様子も耳に入ってきますよ」  もうこのくらいの年齢だから、そこまで関わらなくても大丈夫かな、と親は思いがち。でも、この時期こそ、手はかけずにそっと見守る姿勢が大切なのです。 【ストレス2:塾】  中学受験に向けて、塾に通い始めるのも、プレ思春期のころがもっとも多く見られます。しかし「塾では、勉強以外の葛藤もたくさん経験するのです」と話すのは、有名中学受験塾で10年以上算数の講師を務める田村真紀さん(仮名)です。 ■成績マウンティング  塾で行われるテストの成績で、クラスやコースが分けられるところも多くあります。そんなとき、友だちから「おまえ、コースが落ちたー!」とからかわれてしまうと、からかわれた当人は悔しいやら悲しいやら……。 「テストの成績は、塾の子どもたちにとって格好の話題です。それをマウンティングされたら、子どもは落ち込んでしまうのです。そんなとき、親が『こんな成績とって、もうあとがないのよ!』なんて追い打ちをかけるような言葉を浴びせたのでは、子どもは傷ついてしまいます。もうじゅうぶん自覚しているのだから、しっかりと子どもの話を聞いて、気持ちをポジティブに変換させてあげましょう」 ■塾の費用が気になる  実は「高いお金を払ってくれているから、頑張らなきゃ……」と塾の費用を気にしている子どもも多く見られるそう。これが、子どもへのプレッシャーとなります。「子どもに対して、お金の話はNGです。ただでさえ成績のプレッシャーと戦っているのに、さらに親に負担をかけているという負い目を感じさせては気の毒です」と田村さんは話します。 ■親の態度が変わった  田村さんにぐちをこぼす子どもたちの声には「最近、お父さんもお母さんも勉強の話しかしてくれない」「『あと1年しかないのよ』ってママが口ぐせみたいに言うの」といった、親にまつわることが多く聞かれるそう。 「塾や学校で勉強漬けで、家庭でも勉強の話ばかりでは、息がつまってしまいます。せめて食事時くらいでも、家族で会話を楽しみましょう。そして、子どもの話をよく聞いてあげてほしいと感じます。また、『あと1年』『どうしてこれくらいの量ができないの』といった、大人の感覚で期間や量をいわれても、子どもは困惑するだけです。その量がわかるのは、経験がある大人の発想。子どもにとっては、想像もつかないものなのです」  田村先生が子どもたちを見ていて感じることは、親子関係が良好である子どもは、勉強もうまくいく傾向にあるということ。 「『親に愛されている』『認められている』と感じている子どもは、少々叱られても平気ですし、前に進めるんです。そんな家庭は、親も成績に一喜一憂せず、子どもを信頼して応援してあげているんですね。うまくいっている家庭は、そこがしっかりしています」 *  *  *  親が気づかないところで、プレ思春期の子どもたちは悩み、ストレスを感じているもの。さりげなく、親は気を配ってあげたいところです。『AERA with Kids 秋号』では、このほかにも「いつもイライラしている」「ダラダラしてやる気がなさそう」……といった9歳、10歳の子どもによく見られるケースをピックアップ。プレ思春期の子どもたちに対する親の対応を、さまざまな場面から考えています。
朝日新聞出版の本読書
dot. 2017/10/13 11:30
テレクラは“まじめ”なものだった? 意外な誕生秘話
テレクラは“まじめ”なものだった? 意外な誕生秘話
今も街に見られるテレクラ。赤と黄色が目立つ(店の名前は消してあります)=(伊藤裕作さん提供) テレクラの中は一般的にこんな感じだった=(伊藤裕作さん提供)  社会風俗・民俗、放浪芸に造詣が深い、朝日新聞編集委員の小泉信一が、正統な歴史書に出てこない昭和史を大衆の視点からひもとく。今回は「テレクラ」。昭和51(1976)年に内山田洋とクール・ファイブがヒットさせた「東京砂漠」。人間関係が希薄な都会生活を憂えつつも、愛にすがって生きざるを得ない女性をうたった歌である。風俗の世界で働く女性たちの中にも、同じようにやるせない思いをする人がいる。 *  *  *  前回に続き、昭和56年12月、新宿にオープンしたのぞき劇場「アトリエ・キーホール」から始めたい。実はかなりまじめな(?)店だったらしい。  店のオーナーは考えた。劇場で働く女性の中には、親元から遠く離れ、アパートで独り寂しく暮らしている人もいるにちがいない。寂しさのあまり、ホストクラブなどで遊び回り、せっかく稼いだお金を湯水のごとく使ってしまった女性もいるかもしれない。まさに「東京砂漠」ではないか。 「困ったことがあったらいつでも電話しなさい」。女性従業員にそんな言葉をかけ、劇場の電話を開放した。男性スタッフたちがかかってきた電話に応対した。いわば「人生相談電話」である。  あにはからんや、仕事を終えて自宅に帰ったはずの女性たちから早速あれこれ電話がかかってきた。中には寂しさをまぎらわすだけの電話もあったという。  問題は、女性からの相談に丁寧に応じるはずの男性スタッフだった。いつしか面倒くさくなり、店にいる男性客に「少しの間、頼むよ」と電話番を任せるようになった。男性客にしてみたらもうけもの。うら若い女性と懇(ねんご)ろに話ができるのだから。「すごい、すごい」。評判が評判を呼び、雑誌にも取り上げられた。  ここまでだったらよかった。ところが、雑誌は電話番号まで掲載してしまった。だから、店と関係のない女性からも電話がかかり、一日中、鳴りっぱなしになった。話し相手を求める女性は想像以上に多かったのである。  うわさは瞬く間に業界を駆けめぐる。新風営法が施行されてから4カ月後の昭和60年6月。渋谷駅の南口近くに、のちにテレクラと呼ばれる「テレフォン・ナンパ・ステーション」という店ができた。当の「アトリエ・キーホール」も「クロス・ポイント」というテレクラに転業。男女がクロスする(出会う)という意味らしい。課金の仕組みの説明は省くが、6秒10円という目玉が飛び出るようなテレクラもあったらしい。なかなか大きなビジネスである。 「アア~ン、ウフーン」「イク、イク」「来て、来て」。声だけでつながるエッチな関係。すっきり昇天するとハイ、おしまい。何よりも顔が見えないことが最大の魅力だった。文字に書けないような大胆な言葉も発したにちがいない。  あのころ、テレクラ業者は駅前でせっせとティッシュを配っていた。そこに電話番号が記してあった。ティッシュを受け取った女性が興味をもって店に電話をする。男性が待機する店内には椅子と電話機がポツンと置いてある。テレビもあった。そして、ここでもティッシュペーパーのボックスが置いてあった。  テレクラの愛好家だったという男性(68)は言う。「受話器をとると、たしかに女性の声。お互いに自己紹介をしているうち相手の素性や生活環境などがわかってくるんです。そのうち『ねえ、一緒に遊ばない?』などとお誘いの言葉を投げかけてくるんです」  シロートの女性も多かった。興味本位だったのか、本当に欲求不満だったのか。悩殺ボイスで攻めまくる女性もいたそうである。  先の68歳の男性によると、待ち合わせた喫茶店に現れたのは20歳くらいの女性。「ごめんなさい。やっぱりできません」と謝って去っていったそうだ。何も律義に陳謝することもなかろうにと思うが、まじめな子だったのだろう。いやいや、会ってみてあまりに年齢が離れているのでびっくりしたのかもしれない。  さて、風俗ライターの伊藤裕作さん(67)によると、昭和61(1986)年には東京に400店、大阪に100店、全国には1千店のテレクラができたという。料金は入会金が2千~3千円。個室使用料は1時間3千円が相場。社会現象になり、一般紙でもテレクラが取り上げられるようになる。  朝日新聞社のデータベースを調べると、東京の多摩地方では昭和63年、小学校の東門から約20メートルの通学路にテレクラが開店。反対運動を起こしたPTAが市議会に環境浄化を求める文書を提出した。地元警察は「風俗営業ではないので正攻法の規制は難しい」との立場。PR用の立て看板や貼り紙が道交法違反などにあたると判断し、撤去を指導したが、それ以上の手は出せなかった。全国各地で似たような問題が同時多発していたにちがいない。  電話ボックス内のピンクチラシも問題になった。横浜の歓楽街にあったテレクラのキャッチコピーはこんな感じ。<あなたですもの、恋もデートもお手のもの……。ブルーな毎日 マンネリな生活からの脱出法! 思い切って>。なかなかの美文、散文調だ。<恋のフィーリングがいいって友達がいうもんですから 今、テレクラはドラマチックな言葉のスポーツ>なんてコピーもあった。スポーツって言われても……。  工場や労働者の多い隣の川崎(筆者のふるさとだが)に行くと、直截的な表現が目立った。<貴方との出逢いを求めて 人妻、OL、学生などHOTなTELが沢山!! 男性なら一度は経験するべきです!>。いやはや、するべきとは……。 「テレクラは、さまざまな人が入り乱れるシロート参加型の風俗の元祖だった」。風俗ライターの伊藤さんは言う。「援助交際」という不思議な言葉が生まれたのは平成に入ってからだが、売春に比べると罪の意識も薄かったのだろう。消費社会の中で、ゲーム感覚で自分の都合のいいときにのみ電話をして交際をし、別れる。愛情に飢えていた女子高生もいただろう。おじさんはバブルの絶頂と崩壊という社会の潮流にもまれ、生きる目標を失っていたのだろうか。  ツーショットダイヤル、伝言ダイヤル、出会い系サイト、そしてLINEへと男女をつなぐツールは進化した。原点は昭和のあのころにあったと言っていい。 ※週刊朝日 2017年10月13日号
週刊朝日 2017/10/10 16:00
初心者に自動で最適な資産運用をしてくれるロボアドって?
初心者に自動で最適な資産運用をしてくれるロボアドって?
「きんゆう女子。」は今春ロボアドの勉強会も開催。代表の鈴木万梨子さんは「お金を通じて、それぞれがやりたいことをできるようになれば」と話す(撮影/今村拓馬) ウェルスナビの1992年からの資産運用シミュレーション例(AERA 2017年10月9日号より)  老後資金や子どもの教育資金――。お金の悩みは尽きない。マイナス金利の今、貯金だけじゃダメだと分かっているけど……。金融商品に下手に手を出して金融機関の言いなりになって損をすることも。こんな時代だからこそ、本当の投資を教えます。AERA 10月9日号では「資産運用」を大特集した。  投資信託の組み合わせを提案し、運用してくれるロボアドバイザー(ロボアド)が話題だ。投資初心者にとって強い味方になりそうだ。 *  *  *  ITベンチャー企業勤務の佐藤菜摘さん(30)は知人から勧められたことをきっかけに、昨年12月からウェブサービスの「THEO(テオ)」で資産運用を始めた。テオは最適な資産運用をプログラムが提示するロボアドだ。最大で30種類を超える海外のETF(上場投資信託)から、プログラムが自動的に組み合わせて国際分散投資をしてくれる。  佐藤さんはまず50万円を入金し、2月に追加で5万円、6月からは毎月2万円ずつ積み立て投資をしている。  24歳で編集者の夫と結婚。当初は結婚式などのために2人で貯蓄をしていたが、その後は「お金のことはお互いに無法地帯。私が前の会社を辞め一時期専業主婦になったとき、資産運用を考えようと銀行へ国債や投資信託の話を聞きに行きましたが、運用までは踏み込めませんでした」と話す。 ●半数近く投資経験なし  テオを始めたのは2歳の息子の将来のためだ。それまでは保育園の保育料を入金する郵便貯金口座に多めの額を入れて積み立てていたが、その分をテオに移している。息子が大学生になるまでは解約しないつもりだ。 「投資の知識がなくても、こつこつと資産形成ができているのがいい」(佐藤さん)  使い方は簡単だ。パソコンやスマホのアプリを使う。画面の指示に従って年齢や年収、毎月の貯蓄額などを入力すると、自分に合った運用方針を提案してくれる。そのままネットから契約の手続きをすれば、テオのアルゴリズムが自動的に海外ETFの組み合わせを購入して「おまかせ運用」をしてくれる。運用は1万円から利用でき、手数料は3千万円までは運用資産残高の1%だ。  預金から投資へと資産の在り方が変わりつつある時代。投資初心者向けに、テオのように、プログラムで自動的に運用してくれるロボアドのサービスが急増している。ベンチャー企業を始めとする19社が提供。低額から始められるうえ、スマホのアプリなどの使い勝手がよく、“若者フレンドリー”なサービスが多いのも特徴だ。  実際、テオの利用者の半数以上は20~30歳代。全体の半数近くがこれまでに投資経験がない投資初心者だ。 「資産運用はこわい、という人も多いですが、まずはやってみることです。テオを始めてから『金融の知識が増えた』『お金のことを考えるようになった』という声は多い。投資のハードルを下げるために、今年8月からは1万円から始められるようにしました」  と、テオを運用する金融ベンチャーの「お金のデザイン」(東京都港区)取締役COOの北澤直さんは説明する。 ●経験者にも人気  調査会社の矢野経済研究所(東京都中野区)は、ロボアド市場は2021年度には、ベンチャー企業だけで16年度と比較して2倍程度の約40億円まで伸びると予測。 「ベンチャーだけでなく、大手証券会社や地方銀行も参入して市場が拡大します。20~30歳代からロボアドで投資を始め、30歳代後半になってファンドラップなどで本格的に運用をしていくという、年齢層によるすみ分けができていくのではないでしょうか」(同研究所研究員の山口泰裕さん)  一方、資産運用経験者にもロボアドは人気が高いという。  コンサルティング会社勤務の宮本敬史さん(38)は、20代後半から少しずつ株の売買を開始し、30代に入ると投信で200万円ほど、株式で100万~150万円ほどを運用してきた。最近では仮想通貨投資も始めた。  今年1月、勉強会をきっかけにロボアド「ウェルスナビ」を始めた。ウェルスナビの最低投資金額は30万円から。海外ETF6~7銘柄からなるポートフォリオをプログラムが運用。最初に質問に回答して年齢や年収、資産や投資目的などを入力すると、プログラムが利用者のリスク許容度を診断して、それに応じた運用プランを提示する。 変動が気にならない  宮本さんは最初に100万円を入金し、月に5万円ずつ積み立てているほか、追加で100万円を入金。子どもの教育費や退職後の資産形成が目的だ。 「株式や仮想通貨は運用益が出たら売買するので、価格変動がつい気になる。ウェルスナビはお任せなので、変動を気にしなくてすみます」(宮本さん)  ウェルスナビの利用者は30~40歳代が3分の1を占める。投資経験者が9割以上だ。 「これまでに投信、株式、FXなどをやってみて満足できず、ウェルスナビにたどり着いたという利用者が多い。株式投資などは自分で勉強をする必要があり、時間がある人でないとうまくいかない。忙しく働きながら自分で運用するのではうまくいかないと経験して、ウェルスナビを使っているようです」  と運用会社の金融系ベンチャー、ウェルスナビ(東京都渋谷区)CEOの柴山和久さんは説明する。  いいこと尽くしのロボアドに見えるが、当然リスクはある。 「リスクとリターンは表裏一体です。ウェルスナビでは世界経済に異変があると資産が一時的に大きく減るリスクがあります。そのリスクを取るか取らないか判断するのが投資です」(柴山さん)  そこで、ウェルスナビをはじめとするロボアドのサービス運用会社各社は、運用実績などをウェブサイトで公開している。例えばウェルスナビでは昨年1月から今年8月まで当初100万円で毎月3万円を積み立て投資した場合、もっともリスクが低い運用の設定ではリターンは10%、もっともハイリスクでは24%のリターンだった。 ●考え方が変わった  ただ、評価額が高くリターンがあるタイミングで解約したくなるかもしれないが、柴山さんはこう釘を刺す。 「足元のパフォーマンスを気にして、短期で売買をして失敗してきたのがこれまでの日本の個人投資家です。資産形成をするには、長期運用で積み立て、分散が基本です」  ロボアドの多くは使い勝手のいいスマホのアプリでいつでも資産状況を確認できる。またほかの資産管理アプリとの連携もスムーズ。こうしたロボアドの利用をきっかけに、資産形成やお金に対する考え方が変わった人も少なくない。  前出の宮本さんは、 「ウェルスナビのアプリは見やすく使いやすい。これまでは資産の多くは預金でしたが、ウェルスナビを始めて、預金比率を25%まで下げて投資比率を高めようという意識になりました」  と話す。宮本さんが資産全体を管理するのに使っているのが、家計簿アプリ「マネーフォワード」。アプリを見ながら、投資比率などを考えているという。  千葉県在住の販売員の女性(48)は友人から「デフレの申し子」と言われるほど普段お金を使わず、「気づいたら3800万円ほど貯まっていた」。  独身で老後の不安もある。資産のほとんどは預金と保険だったが、今年4月に参加した金融イベントでロボアドを知り、6月からテオを始めた。お金について勉強や発信をする「きんゆう女子。」のイベントに参加するなど、「資産形成の勉強が楽しくなった」。マネーフォワードでの管理も始めた。 「資産全体を見渡せるようになった。最近になって、どう資産を増やすかという目線になりました」  お金初心者こそ、ロボアドから始めてみては。(編集部・長倉克枝) ※AERA 2017年10月9日号
AERA 2017/10/08 07:00
まかない飯、漫画、ゆるキャラ…人手不足で飲食も自衛隊も悲鳴
まかない飯、漫画、ゆるキャラ…人手不足で飲食も自衛隊も悲鳴
自衛隊が隊員募集のためにつくった漫画冊子 アルバイトの平均時給(週刊朝日 2017年10月13日号より) 有効求人倍率の高い職業・低い職業(週刊朝日 2017年10月13日号より) 「正社員よりも、パートやアルバイトの人手不足が深刻。とりわけ、外食産業の人手不足が顕著です」  こう話すのは、アルバイト求人情報サービス「an」編集長の上土(うえど)達哉氏。「an平均時給レポート」によると、8月の全国平均時給は前年同月より9円高い1001円。職種別にみると、居酒屋店員982円、警備996円、引っ越しスタッフ1340円など。地域差はあるが、近年じわじわと上がる。  バイト確保に時給アップが有効な手段とはいえ、上げ幅は限られる。募集広告を出してもなかなか人が集まらず、採用経費は1人10万円近いともされる。バイトを数多く雇う企業は疲弊し、「採用疲れになっている」と上土氏は指摘する。  そこで、anの運営会社は昨年から、飲食店のまかない飯を味わえるイベント「an まかないフェス」を始めた。従業員の特権とも言えるご飯をPRし、人材募集を支えるねらいだ。  東京・名古屋・大阪の3会場で5月に開催。ワンコイン500円で人気店の味を楽しめるとあって、計18万人も集まった。  東京都の「讃岐のおうどん 花は咲く」は今年、東京会場に初出店し、まかない飯「黒毛和牛 極上の肉うどん」を3200杯売った。バイト応募者が4人やってきて、うち2人の採用にこぎつけたという。  普段は中野区に店を構えており、1時間半待ちの日もある人気。年内に2店を新たに開業予定だ。記者も店を訪れてみたところ、店内は明るい雰囲気。厨房4人、ホール2人の店員が、笑顔で元気に動き回る。  代表取締役の相方(さがた)芳彦氏は「飲食店は長時間勤務できついイメージがある。そこから徐々に変えていき、店で働くことに誇りを持ってもらえるようにしている」と話す。  時給は千円。金銭面だけでなく、楽しい職場づくりをしようと、スタッフと家族を招いた食事会などを月1回開いている。総勢25人で温泉旅行をすることも。来春には全員でグアムに行く計画を立てており、旅費200万円をためようと準備中だ。オーナーはときにバイトを叱ることもあり、人を育てる思いを忘れない。年内には、「うどん学校」も開業する予定だ。  少子化などでバイト募集は年々難しくなった。では、どんな仕事が人気なのか。  求人情報サイト「バイトル」の佐賀野淳氏は、最近の人気の傾向として、独自の魅力があるカフェでの仕事、短期のバイト、新規店舗開業に合わせた募集の「オープニング案件」を挙げる。新店開業時だと入社時期が一緒で、先輩・後輩のわずらわしい関係が生まれにくい。友人と一緒に応募して働ける利点もある。  バイト募集は、年齢も国籍も働く時間や日数も、どんどん多様になってきた。それも人手不足を解消するため。バイトの平均勤続期間は半年ほど。求人情報サイト「マッハバイト(旧ジョブセンス)」の遠藤太一氏は「採用側の企業が示す要件は下がってきている」と話す。  日本商工会議所が中小企業約4千社を対象にした調査によると、回答企業の61%が人員不足だと回答。業種別にみると、宿泊・飲食が最も高く84%、運輸業74%、介護・看護70%と続く。  人材確保の悩みは、国防を支える25万人の巨大組織・自衛隊も直面している。 「第一線で動く部隊に、優秀な人材を数多く集めるのが難しくなってきた」  こう危機感を募らすのは防衛省人材育成課の担当者。「防衛白書」によると、募集対象人口(18~26歳)は、ピーク時の1990年代半ばの1700万人から16年度は1100万人に。好景気で民間企業の採用も引く手あまたなだけに、人材獲得競争が厳しくなった。  定員充足率(17年3月末)は、約9割の「幹部」に対し、若い隊員が属する「士」は約7割。担当者は「離島奪回作戦で上陸するような部隊は、若くて精強な隊員が必要だ」という。  自衛隊は「25万人広報官作戦」と銘打って、組織のPRと人材獲得に動く。昨年暮れの帰省時期、郷土の後輩や親類などを勧誘しやすいように、漫画冊子「自衛官への道」を3部ずつ隊員に配った。  若者に部隊を身近に感じてもらおうと、各地の地方協力本部は、ゆるキャラも設定。自衛官募集CMには、女優で現役女子高生の駒井蓮さんを起用した。担当者は「若い人をどう引きつけられるか。ありとあらゆることをしないと」と人材獲得に必死だ。 「天神祭がいま、存続の危機にあります……」  こう訴えるのは、大阪天満宮(大阪市)の禰宜(ねぎ)・柳野等さん。130万人も集まる日本3大祭の一つだが、懐事情は苦しいという。  理由は人手不足による警備費高騰。厚生労働省「2016年賃金構造基本統計調査」によると、警備業で働く人の給与は5年前から約6%上がった。今年の天神祭の警備費は約3900万円で、5年前から1300万円増えた。収支は近年、赤字傾向だ。  大阪天満宮は、ネット上で寄付を募るクラウドファンディングで、警備費の資金を集めている。今年は目標250万円に対し、270万円を集めた。柳野さんは「今年は何とか黒字になる見込み」と安堵の様子だが、累積赤字が3400万円あるという。「赤字が続けば、今後の開催が厳しくなる」と話す。  人手不足などで、中止となったイベントもある。  三重県伊賀市は毎年8月に花火大会を催してきた。15年まで青年会議所が主体となって実行委員会をつとめてきたが、人手不足から15年を最後に開催を断念。昨年は商工会議所が実行委員会を立ち上げ、何とか復活させた。  しかし、協賛金集めや事務作業の人員を確保できず、今年は中止に。近年は地域活性化の流れの中で様々なイベントが増えていることもあり、担当者は「開催日をずらすなどしているが、厳しい状況」という。  飲食店、宅配、家事サービス、地域のお祭り、国防や災害出動を担う組織の現場……。人手不足の影響は、ありとあらゆる現場に表れている。厚労省が発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.52倍。職業別にみると、建設、保安、サービスなどの人材確保は特に厳しいとわかる。求人数をみると、介護サービス(21万5千人)、飲食物調理(14万8千人)などが特に多くの人材を必要としている。  これまでは考えられなかったような、手軽で、自由で、効率的な働き方が可能になってきた。「働きたいけれど、ハードルが高そう」と二の足を踏んでいるシニアや主婦の人たちには、絶好のチャンスが訪れている。(本誌・大崎百紀、吉崎洋夫) ※週刊朝日 2017年10月13日号
週刊朝日 2017/10/06 11:30
足立佳奈 大好きな藤田ニコルの即興ソング披露! 「スゴい、めっちゃファンじゃん!」にこるん感激
足立佳奈 大好きな藤田ニコルの即興ソング披露! 「スゴい、めっちゃファンじゃん!」にこるん感激
足立佳奈 大好きな藤田ニコルの即興ソング披露! 「スゴい、めっちゃファンじゃん!」にこるん感激  足立佳奈が、全国4か所(東京・大阪・福岡・札幌)1023名限定で学生を招待して行われるイベント【じゃがりこパーティー】の東京会場に、藤田ニコルとともに『「じゃがりこ」のメーンターゲットである女子高生に絶大な人気を誇る二人』として登壇した。足立佳奈 キュートなイベント写真(3枚)  このイベントはカルビー株式会社が、一般社団法人日本記念日協会の認定を受けて、2016年に「じゃがりこ サラダ/チーズ」が発売した10月23日を「じゃがりこの日」として制定したことにちなんだPRイベント。冒頭「じゃがりこの歌」のミュージックビデオが会場スクリーンにて初公開されると、ステージ袖より足立佳奈が登壇、「じゃがりこの日」の大使に選ばれた足立は「とてもうれしいです! これからも皆さんと一緒にじゃがりこを広めていきたいと思っています!」と喜びと意気込みを語る中、なんと10月に18歳の誕生日を迎える足立に主催者側からのバースデーサプライズが。会場は祝福ムードに包まれ、感動のあまり足立が涙ぐむシーンも見られた。  その後、11月22日発売の2ndシングル『フレーフレーわたし』を生歌で披露。この曲は目標に向かって頑張っている人たちに向けた応援歌で、「大好きな藤田ニコルさんと登壇するということでとても緊張していますが、そんな自分への応援歌でもあります」と自分を鼓舞するとともに会場に集まった学生たちに歌を通してエールを贈った。  そしてステージに藤田ニコルが登場すると「じゃがりこの日」にちなんだ1023個の『じゃがりこ』を使用した5mにも及ぶタワーケーキが登場し、圧巻のスケールに会場は大いに盛り上がった。続いて2人で『じゃがりこ』についてのトーク、『じゃがりこ』の新味試食などを行い、足立佳奈による「じゃがりこの歌」も生歌で披露。観客とともに振り付けなどを交えながらのパフォーマンスを行い、イベントを締めくくった。  囲み取材では、ツイッター上で“15秒ソング”を発信している足立が「藤田ニコルの歌」を即興で披露。「15秒だと足りないくらいで、本当に大好きなんです」と思いを伝えると、藤田も「スゴい、めっちゃファンじゃん!」と感激していた。  なお、足立佳奈は10月6日18:30よりLINE LIVE『足立佳奈の歌でみんなで笑顔になろう!』を生配信予定。平均視聴者数35万人にも及ぶ人気番組ということで、今回も見逃せない。 ◎LINE LIVE情報『足立佳奈の歌でみんなで笑顔になろう!』10月6日(金)18:30~https://live.line.me/channels/21/upcoming/5487849 ◎リリース情報シングル『フレーフレーわたし』2017/11/22 RELEASE<初回生産限定盤(CD+BD)> SECL-2146~47 1,500円(tax out.)<通常盤(CD)> SECL-2248 1,300円(tax out.)http://www.sonymusic.co.jp/player/IR518-06S
billboardnews 2017/10/04 00:00
お迎えラッシュは深夜2時 「夜間保育」の真実
永井貴子 永井貴子
お迎えラッシュは深夜2時 「夜間保育」の真実
「エイビイシイ保育園」(東京都新宿区)(c)夜間もやってる製作委員会  夜間保育所に子どもを預ける親は、霞が関の官僚から医師、看護師、マスコミ、水商売と、驚くほど幅広い。皮肉にも、保育所では晩ご飯を食べて、お風呂に入り就寝と、規則正しい生活が実現できる。小さな寝息が聞こえてくるそこに、ニッポンの縮図を垣間見る。記者が現場を歩いた。  東京・新大久保のコリアンタウンには、ハングルの看板を掲げる韓国料理屋に交じって、ネパールやタイ、台湾料理の飲食店が増え、通行人も多国籍だ。  繁華街から一本道を入った場所に、24時間態勢の認可保育所「エイビイシイ保育園」はある。  深夜11時50分。この日、お迎えが深夜から朝7時を回る子どもたちは0歳児から6歳児まで26人。消灯された部屋からは、寝息がかすかに聞こえる。  ピンポーン。インターホンが鳴ると、夜勤の4人の保育士らが、一斉に立ち上がる。一人は、寝ている子どもを布団から抱き上げ、一人は子どものリュックと荷物を素早く取る。 「おかえりなさい」  もう一人は、笑顔で母親を迎えた。「食事のときに、スプーンに興味を持ってつかんでいましたよ」  園で過ごした子どもの様子を丁寧に伝え、母親と子どもを見送る。0時を回ったころ、再びインターホンが鳴った。外国人の母親だった。4歳の女の子は、目をこすりながら、「ママ今日は早いね」と玄関に向かう。いつもは午前3時過ぎだという。保育士の大橋格さん(35)が、「ちゃんと寝るんだよ」と送り出した。  お迎えラッシュは深夜2時ごろまで続く。  歌舞伎町やコリアンタウンに近く、親は外国籍や職業も飲食関係が主かと想像しがちだが、実は、霞が関の官僚から医師、看護師まで、驚くほど幅が広い。  1983年に夫の片野仁志理事長と新宿・職安通りの一室で園を開設し、現在の場所に移転するまで「新宿の肝っ玉母さん」として園を切り盛りしてきた、片野清美園長(67)が話す。 「東京医科大学病院に東京女子医科大学病院、慶応義塾大学病院。新宿区は大病院が集まっているから、医者や看護師の子どもも多い。病院の保育所は深夜は開いていないのよ」  夫婦そろって霞が関の官僚という親もいた。北朝鮮によるミサイル発射で、「お父さんが忙しくなる」とぼやいた子どももいたという。前出の大橋さんも「国会が始まるとお迎えが深夜になることもあります。これから選挙ですから、また忙しくなる人もいるかもしれない」と話す。  マスコミ勤務の親を持つ子どもも不規則になりやすい。「親がクタクタに疲れて、お風呂や夕食を省いて子どもが寝てしまうこともある。でもここに来れば、夕食を食べてお風呂に入って、午後8時半には就寝と、規則正しい生活ができる」  全国には約2万5千の認可保育所があるが、夜間もやっているのはわずか80カ所ほどだ。深夜も働き続ける人たちを支える夜間保育所の存在を知ってほしいと思った片野園長は、ドキュメンタリーを専門とする映画監督・大宮浩一さん(59)に、撮影を依頼した。  そこで実現したのが、9月30日公開の映画「夜間もやってる保育園」だ。  大宮監督が言う。 「夜間の保育所といえば、子どもの死亡事故などで報道される無認可の託児所やベビーホテルの印象が強かった。真摯(しんし)に取り組む認可保育所があることを片野さんの手紙で知り、興味がわいたのです」  大宮監督は昨夏から1年間かけて「エイビイシイ保育園」のほか、沖縄の「玉の子夜間保育園」、北海道の「すいせい保育所」、新潟の「エンジェル保育園」など各地の夜間保育所に密着。どの園も個性豊かだ。  エイビイシイ保育園の片野園長は、「滞在時間が長いから体にいいものを食べてほしい」と、有機栽培や無農薬の食材を使う。 「広島にいい鶏肉があると聞けば、現地に足を運び、自分の目で確かめます。『高いでしょ?』とよく聞かれますが、昼と夕食とおやつで1日700円に収まるんですよ」  子どもたちは風邪を引かなくなり、アトピーの子も減ったと感じるという。  地方の園は地域性や生活の背景も都市部とまた違う。たとえば離婚率が高いと言われる沖縄の保育所について、 「大阪など都市部で子どもを授かり、シングルマザーになって故郷に戻ってきた母親も珍しくない。それでも地域で助け合う中で、子どもを育てられる、昔ながらの人間関係が健在な土地における園のありかたは興味深いものでした」(大宮監督) 「水商売」の母親が少なくない北海道の保育所は、設立の背景が興味深い。当時の市長が認可の夜間保育所の設立を公約に掲げて当選したのがきっかけだという。  夜間の認可保育所からはじかれる親子がいるのも現実だ。 「認可保育所への申し込みには、自治体への書類提出が必要だ。しかし、風俗店やキャバクラで働く親の場合、店が就業証明書を出さず、自分で書類を書くことが面倒だと感じてしまうこともある」(同)  結果、手続きの簡単な無認可の保育所に風俗や水商売の親の子どもが集まりやすい。  映画にも登場する、歌舞伎町の認可外保育所「たいよう保育園」の木村正章副園長(31)がこう話す。 「うちに子どもを預ける親は、風俗嬢やキャバクラ嬢、チャイナクラブに勤める母親がほとんどです。中国やアジア系の子どもも多く、『区役所から紹介された』と言って来日直後の外国人も訪ねてきます」  現在通うのは0歳から小学校5年生まで28人。深夜まで経営する学童保育所は極めて少ない。そのため、放課後から通う卒園児もいる。 「昼の保育園や小学校が終わるとうちに来て朝まで過ごす。まるで園に住んでいるような子もいますよ」(木村副園長)  夜9時半を回ったころ、0歳児と小学生を預ける両親が現れた。木村副園長が記者に耳打ちする。 「迎えに来るのは、2日後ですよ」  園は2泊3日以上預ける親は育児放棄する可能性が高いとして、区に連絡する。放っておけば預けっぱなしの親が出るからだ。この園では、木村副園長や職員が親代わりだ。木村副園長は子どもと一緒に小学校の体育着を買いに行き、学校の担任から電話を受けることもある。  小学5年生の女の子は、「ピアノの発表会や授業参観に、お母さんの代わりに保育園の先生が来てくれた」と無邪気に話す。  すべてボランティアだ。木村副園長がつぶやいた。 「認可外の保育所はひどい場所だと偏見も強い。でもね、自宅にひとりで過ごせば、ご飯も食べられず、危ないこともあるかもしれない。それよりは、ここにいてくれたら、それでいいと思うんですよ」  明かりの消えたカーテンの向こう側から、スースーと小さな寝息が聞こえてきた。(本誌・永井貴子) ※週刊朝日 2017年10月6日号
2017解散総選挙
週刊朝日 2017/10/03 07:00
学校現場の大問題

学校現場の大問題

クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

学校の大問題
働く価値観格差

働く価値観格差

職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

職場の価値観格差
ロシアから見える世界

ロシアから見える世界

プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

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