
米国でよもやの「海藻」ブームが到来する? 効果的な食べ方を管理栄養士が解説
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
食に対する健康意識が高まるなか、アメリカで2023年の食のトレンド予測に選ばれたのは、日本人になじみ深い「海藻」。優れた健康効果はもちろん、膨大な量の炭素と窒素を吸収する性質を持つ「リジェネラティブ」な食材であることも選出された理由のひとつだ。身近にありながらも意外と知らない海藻の働きや取り方を管理栄養士に聞いた。
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2022年秋、アメリカの大手自然派スーパーマーケット「ホールフーズマーケット」が、23年の食のトレンド予測「Top 10 Food Trends」を発表した。これは消費者やバイヤー、食の専門家などを含む50人以上のチームによって選出されたもので、サステイナブルな食材であるとして「海藻」がランクインした。
管理栄養士・野菜ソムリエなどの資格を持ち、“昆布大使”としても活動する野口知恵氏は、「コロナ禍で自宅時間が増え、健康やダイエットに対する意識が変わり、ローカロリーな食材が注目されるようになりました。さらに、二酸化炭素や炭素の吸収に優れている海藻類は、地球温暖化対策にもなるということもあって選ばれたのでしょう」と推測する。
管理栄養士・野菜ソムリエなどの資格を持ち、“昆布大使”としても活動する野口知恵氏
アメリカの食トレンドに選ばれたことで、日本人に再認識されることとなった海藻。海藻が持つ栄養素や健康につながる効果・効能、摂取時の注意点などを改めて確認しよう。
■花粉症がマシになる!? 腸内環境を整える海藻特有の「アルギン酸」
「海藻の特徴的な栄養素といえば、カルシウム、マグネシウムといったミネラルと食物繊維です。カルシウムとマグネシウムは、骨をつくる際に必要な栄養素。特に長年カルシウム不足に悩まされてきた日本人にとって、海藻はうってつけの食材です。また、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類がありますが、海藻類はどちらも含んでいます」と野口氏。
不溶性食物繊維には、腸の中で便のかさを増やす働きがある。水溶性食物繊維は善玉菌の餌となり、腸内環境を整えたり、コレステロールや糖の吸収を和らげたりする力があるとされている。
「昆布やもずくなどが持つヌメリは、海藻類特有のアルギン酸という水溶性食物繊維です。メタボの抑制、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防につながるとして注目されつつあります」
そのほかにも、海藻にはうれしい効果・効能が期待できるという。
「例えば、善玉菌が増えて腸内環境が整うと、お通じがよくなりますし、ニキビや吹き出物といった肌トラブルも緩和されます。また、腸には免疫細胞の70%が集中しており、アレルギーと密接に関係しているといわれます。花粉症に悩まされている人は、意識的に海藻を取ることをおすすめします」
また、海藻にはミネラルや食物繊維、鉄も含まれている。鉄は女性に不足しがちとされる栄養素で、貧血防止に必要不可欠だが、「海藻に含まれるのは、ほうれん草や小松菜といった野菜と同じ植物性の鉄です。動物性の鉄と比べて吸収率が低いため、海藻から鉄を摂取する場合は、ビタミンCと一緒に取る工夫が必要です」と野口氏は続ける。
■食べ過ぎると「ヨウ素」の多量摂取に…
様々な栄養素を有し、現代人の健康のために存在しているかのような海藻だが、ヨウ素を含んでいる点には注意が必要とのこと。
「ヨウ素とはミネラルの一種で、体の成長やエネルギー代謝に必要な甲状腺ホルモンの原料となる栄養素です。とても重要な栄養素である半面、食べ過ぎると甲状腺機能が低下する可能性もあります」
ヨウ素の多量摂取は、甲状腺機能低下症を引き起こす要因だ。皮膚の乾燥、体のむくみや便秘、物忘れや倦怠感といった様々な症状が引き起こされる。甲状腺に不安を持つ人は医師の指示を仰ぐことが推奨されるが、大量に摂取しなければ問題はないという。
「海藻は、できれば毎日取りたい食材です。毎食どんぶりいっぱいの海藻を何週間も食べ続けるようなことをしなければ、特に心配することはないでしょう」
もずく、ひじき、わかめの味噌汁のような副菜として食べることが理想的だが、難しい場合は野口氏が考案した「こんぶ漬けオリーブオイル」から摂取するのもいいだろう。
【こんぶ漬けオリーブオイルの作り方】
(1)だしをとり終わった出がらしのこんぶを、キッチンペーパーなどで水分をふき取ってから細かく刻む
(2)(1)をオリーブオイルの瓶に入れ、1日~1週間漬け込むと、昆布のうまみが出てくる
(3)完成したオイルを野菜炒めなどに使用すると、少しの味付けでうまみが増し、減塩効果も期待できる
2023年のトレンド食材で、SDGs的観点からも注目される海藻。上手に食事に取り入れて、毎日の健康に役立てよう。
(文・安倍季実子)