

中島晶子
AERA編集者
プロフィール
ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職
中島晶子の記事一覧



「つみたてNISA」やるならネット証券と銀行のどっちがお得? 徹底比較してみた!
「つみたてNISA」で買う金融商品は投資信託(以下、投信)がメイン。投信は銀行で買えるので、証券会社以外では通常の銀行、ゆうちょ銀行、一部のネット銀行でもつみたてNISA口座を開ける。どこでつみたてるのが得なのか? 「AERA Money 2021春号」では、つみたてNISAを利用できる金融機関を徹底比較している。 * * * ネット証券、大手証券、銀行という3つの窓口別に「毎日つみたてできるか」「つみたての最低金額」「つみたてNISA対象投信の本数」「クレジットカードつみたてが可能か」「窓口対応があるか」の有無をまとめた。 まず、ネット証券で急速に普及しはじめたクレジットカード決済に注目したい。月々のつみたてでカードのポイント(つみたて金額の0.5~1%)も貯められるのだ。これはおいしい。 たとえばマネックス証券ではこの春、新しいクレジットカードを発行する。提携先の新生銀行傘下のアプラスとの共同事業だ。今後、クレカを通じて投信のつみたてもできるように準備をすすめている。 同社のカードでは100円の買い物で1ポイントが付与され、マネックスでの株式売買手数料に充てたり、マネックスのグループ会社のコインチェックで暗号資産(仮想通貨)に交換したりすることもできる。 先発組では、楽天証券での楽天カードによる投信のつみたてが人気。SBI証券も三井住友カードによる「投信積立サービス」を2021年6月末にはじめる。 次に注目したいのは、取り扱っている投信の本数。150~170本の品ぞろえを誇るネット証券が、投信選びの自由度では群を抜いている。 品ぞろえという点では、大手のSMBC日興証券も147本とがんばっている。また、PayPay銀行も62本ではあるが、格安の投信ばかり取りそろえている。 信託報酬の安さで大人気の「eMAXIS Slim」シリーズや「購入・換金手数料なし」シリーズ、「たわらノーロード」シリーズなどを買いたいと思うなら、ネット証券かSMBC日興証券、PayPay銀行がいい。 なお、ネット証券や大手証券会社では、指定した銀行口座から毎月のつみたて金を手数料無料で引き落としてくれる自動振替サービスがあるので手間もかからない。 一方、老舗の大手証券会社は対面窓口があるので、何か困ったことを直接相談したいときには便利で安心だろう。 銀行は、日頃から預金を通じて付き合いもあり、誰にとってもなじみ深い金融機関。しかし、投信の商品ラインアップが少なめなのが難点。自分が買いたい投信があれば、銀行ではじめるのもいい。 (取材・文/安住拓哉、大場宏明、編集部・中島晶子、伊藤忍) ※アエラ増刊『AERA Money 2021春号』より抜粋


株の売買手数料だけで稼ぐ時代は終焉…専門家が明かすネット証券「次の一手」
営業担当者のいないインターネット証券が誕生して約20年。今では個人の株取引の主流を占める。この間、スマホなどの情報機器が高度化し、さらに「少額取引では売買手数料ゼロ」が当たり前になってきた。発売中の「AERA Money 2021春号」では、印刷機器メーカーから創業まもない頃のネット証券に転職した福島理さんに、金融機関の過去、現在、未来について取材している。 * * * 1998年に株式の売買手数料が自由化され、固定だった料率——100万円の取引なら1.15%=1万1500円――を10分の1に引き下げるオンライン証券がいくつも生まれた。 そう、当時はネット証券ではなくオンライン証券と呼ばれていたのだが、そのうちの1社、オリックス証券に転職した福島さん。以来、証券会社の「中の人」として株式市場を見続けてきた。 オリックス証券は、増えすぎたネット証券が淘汰されつつあった2010年、マネックスグループにより完全子会社化され、マネックス証券となった。 福島さんの前職は印刷機械メーカー。当時の先輩社員に勧められて株取引をはじめた。ITバブル崩壊直前の2000年、20代半ばのことだった。 「初めて買ったのは日立製作所で、130万円分。相場全体が下り坂で40万円負けました。ソニーや三菱重工業など、手を出した銘柄の数は100を超えますが、600万円あった元手が300万円に激減しました。さすがに焦りましたね」 昼休みになると職場近くの大手証券の支店へ直行。営業カウンターの職員と話したり、リポートを読みあさったりして、勝ちパターンを見つける努力をしていたという。 「20代そこそこで証券会社に日参する会社員って、結構珍しかったと思いますよ」と笑う。 「ファンダメンタルズと呼ばれる、企業の業績や国際情勢、景気と株価の関係に加え、テクニカル分析も勉強するようになりました。そうしたら、勝つ確率が上がっていったんです。 2003年に日経平均株価が7000円台まで落ち込みましたが、その後にトレンドが上向いた局面で利益を出せました。株価チャートが読めるようになると強いな、と思いましたね」 株式の魅力に目覚めた福島さんは証券会社に転職した。



作家・林真理子さんがキャッシュレス時代に「現金払い」を心がける理由
4月放映開始の人気ドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」の原作者でもあり、作家の林真理子さん。コロナ禍でどう変わったか、その人生観は? 「AERA Money 2021春号」の巻頭インタビューから抜粋してお届けする。 * * * ■店は現金が一番うれしいはず 「キャッシュレス全盛の時代ですが、小さなお店では、なるべく現金で支払うようにしています」 以前からそうしていたが、新型コロナウイルスの流行以降、林真理子さんがより心がけていることだ。 政府は感染予防の意味でもクレジットカードやスマホでの決済を勧めているが、林さんは意に介さない。 「店に本音を聞けば、100人のうち100人が現金を選ぶのではないでしょうか。カード払いだと売り上げから入金までのタイムラグが長すぎるんです」 実家は山梨県の「町の書店」だった。小さな店の資金繰りの大変さを知る林さんならではの心配りだ。 ここ1年で林さんの生活も変わった。 「みなさんそうだと思いますが、外出が減りました。外食をしても早い時間に解散です。 いいこともありましたよ。去年、月刊誌と週刊誌の連載が同時にはじまりましたが、落ち着いて執筆できました。スケジュール帳がびっしりと埋まっている生活から、一時的に静かな暮らしになり、『ミニ老後』を体験した気がします」 静かな暮らしとはいえ、悲観して引きこもることはなかった。「見たことのない現実が今、ここにある」と観察している自分がいたという。この冷静さは「作家ならでは」かもしれない。 「日本を支えてきたいろいろな文化が崩れ落ちようとしています。もっと、経済を回さなければならないのでは」 林さんは、現状に焦りとも憤りともつかない感情を表し、疑問を投げかけた。 「感染者をゼロにすることは現実的ではありません。命を守ることを第一にしながら、割り切るべきところは割り切るべきでしょう。経済が回らないと、文化がなくなります。宿泊や外食産業が衰退し、おもてなしの文化はすでに危うくなっています。

