

大川恵実
大川恵実の記事一覧









心は少年、体は老人。──超高齢社会を楽しく生きる方法
テレビ番組「ホンマでっか!?TV」のコメンテーターとしても人気の著者。本書は、「週刊朝日」で連載していたコラムをまとめたものだ。 話題はがん治療の問題から、政治、大好きな昆虫採集に原発と縦横無尽に駆け巡るが、「人を笑わせるためだけに過激なインチキ話をしていると思っている人も中にはいるようだけれども、民主党と違って私はウソはつきません」とあるように、大学教授として、生物学者としての知識に裏打ちされた知性的なエッセイだ。 小気味いいのは、歯に衣着せぬ物言い。「(安倍首相は)福島第一原発の汚染水は完全にコントロールされているとの希代の大ウソをついてオリンピックを引き寄せたが、このツケは大きいと思うよ」とか、「ネット社会になってもまだ匿名で悪口を言っている人は、一万年前の行動様式から進化していない生きている化石みたいな人なのである」など、思わず深くうなずきたくなる。 時折のぞかせる愛妻家の一面にクスリとしながら、自分の頭で考え、自由であることの大切さを池田センセイは教えてくれる。

死ぬまでに決断しておきたいこと20
自分の死に方を、ある程度選択できる時代になってきた。とはいえ、大災害の映像を見ると、「そんなことを考えても……」という気分になる。しかし、著者は言う。「考えたくなかった結果として、例えば大震災で原発に押し寄せた“想定外の高さ”の津波を防ぐ高さの壁は作られ」なかった、と。 本書は、1000人以上の死を看取った緩和医療医が「死ぬときの決断」について綴っている。たとえば、「自分の病気について知るべきか、否か」「かかりたいのは遠くの名医か、近くのヤブ医者か」「最後に傍にいてもらいたいのは誰か」「延命治療を受けるか、否か」。 それらの命題に、著者は断定的に答えることはしない。死を見つめた患者とのやり取りを通して、私たちにどんな選択ができるのか、そのヒントを与えてくれる。かといって深刻な話だけでなく、妻と愛人二人に看取られた60代男性の話などは、病院スタッフのやり取りに、思わず笑ってしまう。 誰もが一回しか経験できない「死」だからこそ、私たちは、想定外の高さも見越した「防波堤」を作る必要がある。