政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない 田中信一郎著 《ベスト・レコメンド》
週刊朝日モリカケから桜を見る会まで、とにかく安倍政権の腐敗ぶりはひどい。外交もトランプに追従するだけで、何ひとつ成果を上げていない。それでも支持率が高いのは、経済だけはうまくいっているように見えるからだ。 だが、本当にそうか? 田中信一郎『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』は、安倍政権の経済...
モリカケから桜を見る会まで、とにかく安倍政権の腐敗ぶりはひどい。外交もトランプに追従するだけで、何ひとつ成果を上げていない。それでも支持率が高いのは、経済だけはうまくいっているように見えるからだ。 だが、本当にそうか? 田中信一郎『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』は、安倍政権の経済...
昨年の開高健ノンフィクション賞を受賞した濱野ちひろの『聖なるズー』は、動物性愛者(ズー)たちを調査して書かれている。若い頃に性暴力に苦しんだ濱野は、愛とセックスを捉え直すべく、30代の終わりに京都大学の大学院に入学。動物性愛という極限的な事例を通して自分の課題と向きあい、論文とは別にこの作品を著し...
歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、『サピエンス全史』で人類の過去を、『ホモ・デウス』で人類の未来を描いた。それらの著作は世界中で2千万部以上も売れ、多くの読者に衝撃を与えてきた。そして今回、私たち人類が抱えている現下の課題と向きあうため、ハラリは『21 Lessons』を著した。 扱うテーマは、タ...
初版本のコレクターとしても知られる著者が、夏目漱石の直筆を含む貴重な資料等をいかに入手したか、その過程を赤裸々に明かしている。 書簡や反古原稿も含め、すでに全集にあらかた網羅されて開拓の余地がないかに見える漱石だが、ネット古書店の普及をきっかけに、新出資料を発掘しようとする熱意が蘇ったという著者。...
人口減少が進む日本では、これからどんなことが起きるのか──河合雅司は『未来の年表』シリーズで具体的な予測を示した。データに基づくその内容はどれも想像以上に厳しく、私たちが「静かなる有事」に直面している現実を突きつけてきた。 では、そんな未来にどう対応していけばいいのか。河合はこのとんでもない難題と...
今年のノーベル文学賞は、セクハラ問題等で中止になった昨年の分も含めて2人が受賞した。2018年度の受賞者が、ポーランドのオルガ・トカルチュク。『逃亡派』は彼女の代表作で、ポーランドで最も権威あるニケ賞、そしてイギリスのブッカー国際賞も受賞している。『逃亡派』の原著は07年に刊行されたが、小椋彩によ...
孔子とその高弟たちのやりとりを、彼の死後に記録した『論語』。学生時代に習ったからか、そこにあるいくつかの短文なら、多くの日本人が知っている。しかし、『論語』をすべて読んだかと問われれば、ほとんどの者が首を横に振るだろう。 今回の『一億三千万人のための「論語」教室』は、高橋源一郎がほぼ20年をかけて...
政府は65歳までの雇用を義務づけている高年齢者雇用安定法を改正して、70歳まで引き上げようとしている。人生100年時代なんていうけれども、健康寿命の平均は70歳そこそこ。身体が動く限りは働き続けよ、ということなのか。老後が怖い。 柏耕一『交通誘導員ヨレヨレ日記』の表紙には<当年73歳、本日も炎天下...
「納税」というけれども、税金は「納める」より「取られる」感のほうが強い。税金の使い方に納得できない(軍事なんかより防災に使えよ)だけでなく、集め方に不公平感があるからだ。大企業のなかには、ほとんど法人税を払っていない会社もあるというじゃないか。節税と脱税の違いはどこにあるんだろう。 三木義一の『税の...
町田康の、ここ15年来の活躍ぶりには瞠目するしかない。『告白』などの歴史小説で高い評価を得る一方、現代モノでも次々と快作を送り出してきた。それらの多くは長篇なのだが、町田は、「権現の踊り子」で川端康成文学賞を受賞している短篇の名手でもある。その手腕があれこれ発揮された『記憶の盆をどり』は、9編の短...