
爆誕! “スーパーパワーファミリー” 大企業共働き世帯で資産1億円 増え続ける要因は「同類婚」
世帯年収3千万円以上だとスーパーパワーファミリーになりやすい(写真映像部 和仁貢介)
定期的に富裕層の実態を調べている野村総合研究所(NRI)が、直近の調査で新たな富裕層の現象を見つけた。その名も「スーパーパワーファミリー」。いかにも強そうなインパクト大のお金持ちとはいったい何者なのか。
2月、NRIが公表した調査によれば、23年時点で純金融資産(金融資産の合計から負債を引いた額)を1億円以上保有する「富裕層」と「超富裕層」は計165万世帯に達し、05年の調査開始以来で最多だった。その中で「新たに見えてきた」と指摘したのが「スーパーパワーファミリー」と呼ばれる層だ。
「パワーファミリー」は世帯年収1500万円以上を目安とする共働き世帯をさすが、「スーパーパワーファミリー」はその上をいく。NRIは「都市部居住で、世帯年収3千万円以上の大企業共働き世帯に代表される層」と定義する。
20~30歳代は子育てや教育の支出、住宅ローン支払いに苦労するが、社内で昇格・昇給を果たして世帯年収が2千万円を超える40歳前後から急速に金融資産が積み上がる。そして、最終的には世帯年収3千万円に達し、50歳前後に純金融資産が1億円以上の富裕層となる可能性があるという。
「地方部においても、生活コストの地域差を考慮すると世帯年収1千万円以上の大企業共働き世帯は、60歳前後に富裕層となる可能性があります」(NRI)
エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんは、スーパーパワーファミリーが増えた要因を次のように見る。
「近年、先進国を中心に、同じような学歴や職種、収入を持つ者同士が結婚する『同類婚』が増えています。つまり、高所得者同士の結婚が増えたことがスーパーパワーファミリーが形成されやすいことを示しています」
背景には、女性の社会進出や起業する人が増えたことが大きい。そして、夫婦ともに身を粉にして働いているだろうとも。
一見するとスーパーパワーファミリーは、バブルの頃流行った夫婦2人の「DINKs」(ダブルインカムノーキッズ)と似ている。だが、DINKsは経済的余裕があっても子どもを持たない選択をしたが、スーパーパワーファミリーは子どももいるのが特徴だ。
「お金があることと子どもを持つことが直結しやすくなっているのが、昨今の日本経済の特徴です。所得が高いからこそ、子どもを持って働ける人がいるということかもしれません」(崔さん)
所得と出生率には関係性があることが知られている。
スーパーパワーファミリーの消費性向は高めだ(写真映像部 和仁貢介)
厚生労働省の国民生活基礎調査(22年調査)によれば、子育て世帯の平均所得は785万円 で、全世帯の平均所得(545.7万円)の1.4倍。内閣府の調査でも、所得400万~499万円の子育て世帯の割合が14年の12.9%から19年に9.4%まで減った。
「また、高額所得者の人が働く会社ほど福利厚生も充実していて、子育てしやすい環境が整っています。さらに、高額所得の人ほど、出産や子育てで仕事を一旦抜けてもまた戻ってこられるスキルがあるから、子どもを持ちやすいと思います」(同)
NRIによると、スーパーパワーファミリーの生活スタイルは「消費性向は高い」。不動産や高級消費財などを積極的に購入すると指摘する。これに対して崔さんは、「スーパーパワーファミリーも堅実な人が多いのではないか」と見る。
「50歳前後はバブル崩壊やリーマン・ショックなどを経験しています。意外と堅実な生活をしているのではないでしょうか」
もっとも、健康に投資をしている人は、肌感覚でも多数の研究からも多いと実感していると崔さん。パーソナルジムに行くと、スーパーパワーファミリーのような人たちが汗を流している姿を多く見かけるという。
そして、スーパーパワーファミリーは投資経験率が高く、金融リテラシーも高いといわれる。若い頃からNISAや従業員持ち株会を使って資産を積み立て、少額ながらも為替取引や仮想通貨を保有している傾向にあるからだ。
スーパーパワーファミリーが注意する点があるとすると、「ハイリスク・ハイリターンを抱えていると知ること」だと崔さんは話す。
「スーパーパワーファミリーは、責任のあるポジションにある人が多く、年功序列の賃金体系が残っている会社で働いている人は少ないと推測されます。そのため、解雇されるリスクが高く、その時に備えた対策は必要です」
これからスーパーパワーファミリーが増えていくかどうかは、株価次第。ただ、女性の社会進出の加速や働き方の多様化に伴う就労機会の増大によって、増えていく可能性は高い。崔さんは「稼ぐ女性が増えることは歓迎すべきこと」だとして、次のように語る。
「一方で同類婚が増えているので、同じ年収の人たちと結婚したいと思ってもなかなかマッチングしないことになります。そのためにも、男性の専業主夫を認め、女性も社会進出しやすい社会をつくることは必須です」