撮影:石川幸史
撮影:石川幸史

 横田基地の周辺のほか、横浜市も多くの米軍施設があったことが知られるが、「埼玉県谷市にも米軍の基地(U.S. ARMY CAMP WHITTINGTON)があったんです。近くの住宅のガレージでアメリカっぽいものをよく目にしました」。

 一方、在日米軍とは関係なく、「アメリカンな場所」もある。

「特にすごかったのが、東京五輪でサーフィン競技の会場になった千葉県一宮町。もともとサーフィンはアメリカ西海岸の文化だったわけですけど、海際のエリアはサーフィンシティーになっていて、『えっ、ここ、日本なの』という感じでしたね」

撮影:石川幸史
撮影:石川幸史

■なぜ日本の風景にアメリカを感じるのか?

 撮影した写真の多くはドライブ中に見つけた風景。

「ロードトリップや、窓越しに見るロードサイドの風景というのはアメリカ的なイメージと重なるものがあります。車で移動しながら、密閉された空間の内側から外側の風景を見ていく。普段とは違う感覚でものを見るわけで、見つけたものも変わってきたと思うんです」

 人物など、手持ちで「パパっと撮った」写真もあるが、基本的には三脚を立て、カメラを据えて写している。

 作品がアメリカの風景のように見えた理由の一つは、「大判カメラを使ったような撮り方をしていることもあるのでは」と、石川さんは言う。

「被写体と正対して、水平垂直をきちんと出して撮影する。十分な距離と時間がとれるシチュエーションであれば、そういう撮影スタイルをできるだけ徹底しました。それによって、静的なイメージに見える効果が出せたと思います」

 そのせいか、被写体が自然風景であっても、アメリカで写したような雄大なスケール感を覚えた。伊豆大島の裏砂漠、群馬県の鬼押し出し、栃木県の松木渓谷、栃木・群馬・埼玉・茨城の4県にまたがる渡良瀬遊水地のヨシ焼きなど。

 石川さん自身、「こんな景色があったんだ、という驚きがありました」。

■時間や距離の感覚がまひしてくる

 石川さんは4年前、北陸地方に引っ越してからも関東周辺に通い続けた。

「いちばん近い軽井沢で4時間ちょっと。千葉県一宮町までは約7時間。でも、繰り返し行っていると、時間や距離の感覚がまひしてくるようなところがありましたね。毎回毎回いろいろな発見があったので、大変な思いをした、というより、楽しく撮っていた、という気持ちのほうが強いです」

 そんな作品を先入観なしに見ると楽しくダマされる。ここは日本? それともアメリカ?

アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】石川幸史写真展「The changing same」
ニコンプラザ東京 ニコンサロン 2月22日~3月7日