IQ154のギフテッド、小林都央さん(11)
IQ154のギフテッド、小林都央さん(11)

 高い知能や、さまざまな領域で特別な才能を有する「ギフテッド」。近年テレビなどでも見ることが増えてきている。高いIQや、さまざまな分野で突出した能力がある人が多く「天才」のイメージで紹介されることが多いが、すべてのギフテッドが成功しているわけではない。ではギフテッドとは何か。ギフテッドに関する専門書の翻訳を手がけ、発達心理学や教育心理学が専門である上越教育大学の角谷詩織教授にギフテッドについてきいた。<阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋・再編集>

【IQ154、ギフテッドの少年の写真はこちら】

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■彼らが感じる困難

 ギフテッドとはどのような人たちなのか。

 専門家に話を聞きながら、ギフテッドの特性について考えていきたい。

 2021年に発足した文部科学省の有識者会議は、特定の分野に特異な才能のある当事者や保護者、教員、支援団体職員らにアンケート調査を実施。980件の事例が寄せられた。調査結果には、驚くような才能が並ぶ一方、学校での苦悩も列挙されている。その一部を紹介する。

【特異な才能】

・中学に入り、ハングルを読み書きし中国語を聞き取る。スペイン語、フランス語を自学

・英単語は一度聞けば覚えられる

・4歳で進化論を理解、8歳で量子力学や相対性理論を理解

・6歳で初めてピアノを弾いた時に両手で弾けた。聞いた音楽を「耳コピ」できる

・6歳でアフガニスタン紛争やカンボジア内乱、中国文化大革命、国連の意義などを毎日、お風呂の中で考えている

・2歳で歌を作り、4歳で絵本を作った。小5の現在はアプリを作成中

・4歳で九九を暗記、6歳で周期表を暗記

【学校で経験した困難】

・授業が面白くないと我慢の限界がくる。学校脱走を重ね、不登校に

・鉛筆で書く速度と、脳内の処理速度が釣り合わず、プリント学習にストレスを感じた

・同級生の共感が得られず孤独。思ったことを発言すると教師や同級生が驚くので、嫌になる

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定まらない「ギフテッド」の定義