これらの研究結果から、私たちの行動は、意識的な思考だけでなく、無意識のうちに受け取った刺激にも大きく影響されることがわかります。プライミング効果は、私たちが情報をどのように処理し、理解し、行動するかに大きな影響を与える力強いツールであり、その存在を理解することは、自己理解と自己改善のための重要な一歩と言えるでしょう。

 では、このプライミング効果が若々しさにどのように関わっているのでしょうか?

 若々しい人々は、「自分はもう年だから」など、年齢を卑下するような言葉を使いません。これは「自分は年寄りである」というプライミング効果を常に与えていることになります。逆に、「自分はまだ若い」というプライミング効果を自分自身に与え続けることで、その人の行動や思考、そして見え方までもが若々しくなっていると感じます。

 また、若々しく見える人たちの交友関係を見てみると、自分よりも年齢がずっと若い友人が多いことに気がつきます。若い友人から受ける刺激が、良いプライミング効果を発揮しているのだと思います。ただし、ここで重要なのが「年下の友人と対等に付き合う」ことです。自分が年上だから、自分は彼女(彼)に比べおばさん(おじさん)だから、という意識をもって付き合っていると、悪い意味でのプライミング効果が働きます。目に映るもの全てが、自分との年齢のギャップを感じさせ、自分がおばさん(おじさん)であるというプライミングが働いてしまいます。せっかく若々しくいられる環境でありながら、ぐっと老け込んでしまうのです。

 このように、プライミング効果は私たちの見た目にも大きな影響を与えます。自分自身をどのようにプライミングするかは、自分自身の手に委ねられています。自分自身を若々しく、健康的に、そして前向きにプライミングすることで、見た目を若々しく変えることができると私は考えています。

 ぜひ、今日から「自分はもう年だから」という言葉は使わずに、若々しい気持ちで生活してほしいと思います。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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