丸山正樹さん(撮影:写真映像部・高橋奈緒)
丸山正樹さん(撮影:写真映像部・高橋奈緒)

丸山:血縁問題については、ずっと意識して書いています。ヤングケアラーを扱った『キッズ・アー・オールライト』でも、親からかなり酷い扱いを受けてきた青年「シバリ」に、こんなセリフを付けました。「血はもうとっくに入れ替わった。今の俺は、細胞から全部俺のもんだ」。血のつながり、親との関係は場合によっては絶ってもいいんだよ、というメッセージを込めました。親子関係で苦しんでいる子どもたちに伝えたいですね。

<子供は、誰かへの「責任」なんて考えなくていい。自分のことだけを、自分が毎日どうやって楽しく過ごせるかだけを考えて生きていればいい。それを許されている生き物を、「子供」と呼ぶのだ。>(『キッズ・アー・オールライト』より)

村上:(大阪市西成区のNPO法人)「こどもの里」代表の荘保共子さんが、こんな話をしていました。性的虐待を受けたある少女が「全部血を取っ替えてほしい」と。それを聞いた荘保さんは「家出を繰り返す子どもたちを家に送り返していたけど、SOSだったんだ」と気づくわけです。子どもの行動には理由がある。子どもを守らないといけない、守る場所が必要だと。子どものニーズに合わせてこどもの里はシェルターやファミリーホームを作るなど、どんどん姿を変えていきます。


 子どもは自分が置かれている困難に気づいていないかもしれない。SOSを出すのが難しい。そういう中で、子どもたちのシグナルをどうやってキャッチすれば良いのか。あるいは、声を出せるような環境をどうやったら作り出せるのか。ここでも、西成のみなさんの活動にヒントがありそうです。

<周囲の大人から放置されて『社会って冷たいな』と感じてきたサクラさんは、こどもの里で荘保さんと出会ったときに「私サイドに立ってくれた大人ってほんまに初めてやった」という経験をする。親身に聴き取られることなく一方的に語ってきた自分の経験が、荘保さんによって初めて「涙流して」聞き届けられ、状況の言語化と対話が成立する。聴き取られることによって初めてSOSとして成立する。>(『「ヤングケアラー」とは誰か』より)

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ヤングケアラーの支援で大切な存在とは?