今回の中継を大成功させたABEMAには、今後も注目のコンテンツがある。11月から12月にかけて、カタールで開催される「FIFAワールドカップ2022」の全64試合を無料生中継することに決まっている。元博報堂で作家の本間龍氏はこう話す。

「ABEMAはワールドカップに数十億円以上のお金を出しているでしょう。これは先行投資であり、ABEMAにとっては、ワールドカップで試聴がどれくらい伸びるかが、今後の試金石になると思います」

 スポーツとネット放送の結びつきはますます強まりそうだ。6月7日に行われた井上尚弥とノニト・ドネアのWBA・IBF・WBC世界バンタム級王座統一戦は「Amazonプライム」が独占生配信した。

「スポーツコンテンツで、顧客を引きつけようという戦略はABEMAと同じです。ただし、Amazonは多国籍企業ですから、世界各地で、いろいろなコンテンツを買いまくっている。その中でもスポーツは、言葉が通じなくても盛り上がれるし、勝敗がつくのでわかりやすい。今後もネット配信の有力なコンテンツになっていくでしょう。『Apple TV』も今年4月から、MLBと提携し、『フライデーナイトベースボール』をネットで無料配信し、メジャーリーグのファンにアプローチしています。人気スポーツのネット配信での価値ははますます高まるはずです。天心vs武尊の一戦で、いよいよそれが形になって現れたということだと思います」

 今後、天心はボクシングへの転向を表明しているが、武尊との再戦はあるのだろうか。前出の石井氏はこう話す。

「天心がボクシングで世界を獲ったら、ボクシングを引退して総合格闘技にやって来るという展開はあり得ると思います。そして、総合のリングで武尊と天心が、世界タイトルをかけて再戦する。そんな夢の対戦を見てみたいですね」

 その時は、格闘技の「楽しみ方」もさらにカタチを変えているかもしれない。(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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