子どもが出合う世の中のさまざまな“ピンチ”をまとめた『大ピンチずかん』(小学館)が話題の絵本作家・鈴木のたけさん。鈴木さんは、中学生から小学校高学年まで3人のお子さんのさまざまな大ピンチを目の当たりにしています。そんな鈴木さんに作品に込めた思いや、ご自身が子育て中にしていた“鈴木さん流”読み聞かせ法を教えてもらいました。「AERA with Kids2024年春号」(朝日新聞出版)から紹介します。
【写真】貴重!鈴木のりたけさんの仕事場の写真はこちら(全7枚)誰にでも経験のある身近なピンチが本に
「ぎゅうにゅうがこぼれた」「トイレのかみがない」――誰にでも経験のある身近なピンチの瞬間を切り取った『大ピンチずかん』が大ヒット中の絵本作家・鈴木のりたけさん。たくさんの絵本に囲まれた自宅兼仕事場にお邪魔して、絵本誕生の秘密について伺うと、「3年前、次男の大ピンチに出くわしたのがはじまりでした」 と『大ピンチずかん』のきっかけを話す鈴木さん。それは絵本の表紙にもなった牛乳を注ぐ場面でした。
「あ、こぼれた!という瞬間に次男はフリーズしてしまい、牛乳はドドドドとこぼれ続けた。そのとき『すぐ拭いて!』ではなく、冷静にその様子を見続けちゃったんです。小2にとって1リットル入りの牛乳パックを扱うのは重労働。大人には普通のことでも子どもにとってはやってみないとわからないピンチの瞬間がたくさんあるなと、改めて気づきました」
自身が体験したピンチも多く盛り込んだ絵本は大人たちも「あるある」と共感。
「大人が先回りして危険を回避させるのではなく、子ども自身がピンチや失敗を経験し自ら乗り越えることで発見や成長があると思うんです」
鈴木のりたけさん家の読み聞かせはどうしていた?
3児の父である鈴木さん。子育て中に出合った絵本にもさまざまな創作のヒントがあったそうです。
「身体的な体験とリンクした絵本は子どもの反応が違います。わが家の一番人気は『かさぶたくん(福音館書店)』。しかも物語がセリフで進むので、読み聞かせに向いているんです」
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